博士の風変わりな研究と飯のタネ(1)

 人と言う生き物は、自分が良しと思うことを貫く生き物だ。

 自分の良しと思うことについて詳しく理解しようとする行為の事を研究と言うのであれば、私はその“研究”を生業にしているといえるだろう。

 始めは食べ物のためと研究費稼ぎが目的だったのだが、なかなかどうして。やり始めてみれば、これほど興味をそそられる事も無いのではないかと思い始める自分を発見してしまったのだよ。

 元々魔法。取り分け強化魔法や能力添付魔法の研究をしていた私だが、勤め先の大学から追い出されてしまってね。 どうやら大学の経営陣は私の“ウサ耳状の魔動力ブースターを頭部に直接埋め込み機能させるための研究と使用例”と言う論文が気に入らなかったらしいのだよ。 アレが成功していれば、現行のパワードスーツなぞお払い箱になるほど素晴らしい性能を誇る事になったというのに。

 話しが逸れてしまったね。 私が当時勤めていたのは、国が管理する所謂軍事学校でね。兵器や戦闘用魔法の研究に携わっていたのだよ。 だからそこを追い出されては、研究の続きは出来なかった。 考えてみたまえ。一個人が兵器を作って良いと思うかね? 答えは勿論NOだ。私が国務を担当する人間だったとしたら、そんな危険人物はすぐに排除するだろうしね。

 しかし、研究はしたい。 なにせ諸君、ウサ耳だよ? 可愛いではないかね! いま流行の言葉を使えば、萌えと言う奴だよ!

 研究がしたい! 今したい! すぐしたい!

 お預けを喰らった犬状態になった私は、国外逃亡を決行した。 勿論、ビザも出国手続きも無い、自主出国だよ。 それなりに追っても来たが、騎士やら魔法使いやらでこの私がどうにかなると思ってもらっては困るよ。

 見事出国を果たした私は、目的地を一路大陸東方。“英雄王国 レニス”へと向かった。 なにせあの国は自由国家と名高い超強国だ。“蟲人”や“エルフ”、“鳥人”“バードマン”“ドワーフ”は愚か、“兎人”や“猫人”まで共存する人種の坩堝! その国では魔法の研究も自由に行われ、何よりも物流や情報の流れが我が祖国のそれが子供の遊びにしか見えぬほどに発展しているのだよ!

 期待に胸を膨らませて入国した私を襲ったのは、後悔と悔恨だった。

 ああ・・・何と言うことだと思ったとも・・・!

 何故私は今までこの国に来なかったのか!! 空も、海も、街も人も!!全てが魔道の恩恵を受け美しく輝いているではないかね! 見るもの聞くもの全てが新鮮とは正にこのことだったね! あまりの興奮に、私は思わず足として使っていた軍事用飛行機で街中にダイブしつつエクスタシーを満喫してしまったよ! 無論、私を捉えようと追いかけてきた治安組織からも逃げ切った。安心したまえよ?

 さてさて。ここからが本題だよ。

 見知らぬ土地に降り立った私には、同然ツテなど無い。今日食べるパンにも困る始末だ。

 早速仕事を探そうと歩き出した私の目に、あるモノが飛び込んできた。そう。それこそがこれ。“冒険者”組合の掲示板だったのだよ。

 大学で教鞭を振るっていた私なぞが今更実戦など・・・と、思っていた。が! これがどうして。 依頼一つ一つに、実に様々な裏話があり、私の指摘欲求を指摘するではないかね!! こんなにも興味をそそられるものを前にして、ジッとなどしていられると思うかね?! 今まで机に向かうばかりだった私にとっては、どれも輝いて見えとも! ああ、申し訳ない。輝くという言葉を多用しているが、どうも私は語彙が少なくてね。それくらいしか思いつかないのだが、私の感動を言い表すには正に“輝いて見えた”と言う言葉はぴったりと当てはまるのだよ!

 不謹慎かもしれないが、依頼人たちが困難に立ち向かうために私達を雇い、私達は力の限りその手助けをする。 その過程で起こる出来事や解決した瞬間の喜びを共有するこの充実感と言ったらないね!

 ましてだよ諸君! それら楽しいと感じる事をして、金が稼げるのだよ!私は兵器研究を趣味としていてね? 儲けた金は殆ど、その研究につぎ込んでいるのだが・・・。依頼に私が作った兵器を持って行けば・・・。 正に一石二鳥!! 仕事と趣味の両立だよ!!

 いやいや。 本当に素晴らしい国だよこの国は! 私にチャンスも楽しみも与えてくれたのだからね! いつの日かこの礼に、今開発中の“猫耳型超音波粉砕機”と、“マッタリアザラシ魔道戦車”を進呈しようと思っているくらいさ!

 

ん? 私が誰か・・・?

おお! 申し訳ない! 自己紹介が遅れたね。 私は“悪魔”。 愛称でもなんでもなく、悪魔族だから悪魔なのだがね。

 はは! 失敬失敬! 実は私には名前が無くてね! 愛称はあるから、それで呼んでくれたまえよ!

“Dr・フェネクス”。 フェニックスの亜種だと覚えておいてくれたまえ。

書き進める

科学のように魔法技術が進み、まるで未来の世界のように文明が進んだ。そんな世界。

人々は会社に勤め、学校に通い、整備された道を魔力で走る車に乗って走り、空輸や船で運ばれた商品を量販店で買い求め生活していた。

 

が、しかし・・・。

時代に逆行するように。 冒険を。戦いを。探検を追い求めるもの達が居た。

冒険者。探検家。傭兵。発掘人。名乗る名こそ違えど、彼等が求めるものは大抵この三つに限られた。

即ち。“金”。 “名誉”。 そして。飛び切りの “スリル”。

進んだ魔法文明がもたらしたのは、平和な家財道具だけではない。様々な戦闘用の道具が生み出された。

金と名誉とスリルを愛する彼等が、そんな魔法の武具の数々を見逃すなどと考えられるだろうか?

あるモノは空飛ぶ船で世界を飛び回り。あるモノは10mを越える巨大な操り人形でドラゴンを狩り。 またあるモノは己の体全身に魔法の言葉を刺青し、自らの強さを高みを目指した。

 

これは、そんな世間一般からはみ出し、自分達の好き勝手に暴れまわり、やりたいことをやって生きている無法者たちの物語。

まあ。連中のすることが物語と言うほど高尚なものになるかどうかは・・・。保障しないが。