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「この世界の兵器についてか。」

 そうつぶやくと、レニス王は相変わらずの無表情で、器用に唸り声だけでしばしの躊躇を演出すると、手にしていたりんごをしゃりしゃりと齧った。

 その様子に、デンノスケは怪訝そうに眉をしかめた。

「どうかしたの・・・んですか?」

「前に知人にうち(レニス王国)の軍備のことを話したことがあってな。どうもそれが軍事機密だったらしくて、アルベルトにこれでもかと言うほど殴りつけられたんだ。 どうもどこからが公でどこからが機密なのか私には良く分からなくてな。」

 真顔でそう話すレニス王を見ながら、なんとなくあったことも無いアルベルト氏の事が可哀想になるデンノスケだった。

「知るとまずいことなのか?」

 言い淀むレニス王に、バルは若干眉をひそめて聞く。

「さあ。良く分からん。」

「いやいやいや! ダメだろうきっと! 機密とかなんだろう?!」

 国のトップの癖にさらりと適当なことを言うレニス王に、ついついいつもの調子で突っ込みを入れてしまうデンノスケ。普通ならば国王にこのような口を利けば、近くに居る衛兵なり側近なりが止めに入るものなのだが・・・近くに居る近衛兵は「もっと言ってやってください」とばかりにジェスチャーを飛ばすだけだった。 よほど普段振り回されているらしい。

「大丈夫だろう。機密にかかわりそうに一般的な知識をレクチャーすれば良いんだ。」

「いや。今さっき自分で公と機密の線引きが分からないって・・・!」

 これまた反射的に突っ込みを入れるデンノスケに、レニス王はまったくの無表情にもかかわらず、何故か自身あり気と分かる調子で「大丈夫だ。」と胸を張った。

「とりあえず極秘裏に開発中の移動島でも案内し」

「するんじゃねぇ!!」

 さらりと危険な言葉を口にしようとした国王の頭が突然掻き消えた。 それが突然横合いから見舞われたロケットキックのせいだったことにその場の全員が気がついたのは、レニス王がまったく同じ姿勢のまま人形がバランスを崩したように倒れた後だった。

「何千回同じこと言われてんだこのボケ王がぁ?! 鳥か?! 鳥なのかテメーは! 鳥頭なのか?! 三歩歩いたら全部忘れちゃうのかぁ?! ごら!!」

 突然王に蹴りを入れた少年はそのままの勢いで倒れているレニス王にそうまくし立てると、何故か手にしていた金ヤスリでゴリゴリとレニス王の額を削り始めた。

「うむ。私の体積が減っていく。」

「減ってねーよ! テメーが鉄で殺せるんなら誰も苦労しねぇっつんだよ!!」

「な、何やってるんだお前ー!!」

 誰一人リアクションが取れない中、最初に動いたのはデンノスケだった。少年を羽交い絞めにすると、なんとかレニス王から引き剥がした。

「はーなーせー! 今日という今日はがまんならねぇ!! こいつに国の運営が如何なる物か血反吐吐くまで言い聞かせてやるんじゃぁぁああ!!!」

「何分けわかんねーこと言ってんだお前! そこに居るのはこの国の王様なんだぞ?! 反逆罪とかで死にたいのか!!」

「ああん?!」

 デンノスケに押さえつけられていた少年は、反逆という言葉に反応してようやく暴れるのをやめると、自分を押さえつけているデンノスケの方を振り向いた。

「ああ。 君か。最近この世界に来た異世界の旅人は。 ならば知らないのも無理は無い。 俺はこの国の宰相。“アルベルト・ストライフ”だ。 でもって、俺がそこに転がってる王を殴るのは日課みたいなもんだ。寧ろ俺が殴らなきゃまともに仕事をせんのだ。この王は。」

「なっ、お前みたいな子供が宰相?!」

 馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに顔をしかめるデンノスケ。宰相とは、国王に次ぐ最高位の役職だ。通常はよほどの切れ者、ないし、実力の有る権力者が成るものである。 少なくとも、デンノスケの常識では、こんな子供がなれる役職ではない。

「あ。デンノスケ。それ、本当に宰相にゃ。」

「んなっ! え?!」

 アンブレラの言葉に思わず手を緩めるデンノスケ。 その隙に少年はするりとデンノスケの手から抜け出すと、衣服の乱れをてきぱきと整え、デンノスケとバルに向き直った。

「こんななりはしてるが、レニス王国の宰相をしている、“アルベルト・ストラルフ”だ。 うちの王に任せとくとどんな機密話すか分からんから、俺が付き合うことにする。要らん事聞いて、秘密漏洩回避のために殺されました。何つったら、話にもならんだろ?」

 呆れたように肩をすくめるアルベルト。 そんなアルベルトに対しデンノスケは、暫く機能停止状態に陥ったという。

 

 

「で。うちの国の兵器と社会情勢だったか?」

 とりあえず、全員改めてコタツに当たりながら話すことになったのだった。

「ああ。とりあえず起動鎧とやらは実物を見た。街で暴れていたしな。」

「そうか。じゃあ、どう言うもんかはあらかた分かってるだろうな。」

 バルの言葉に、苦笑しながら答えるアルベルト。

「見ての通り、アレは歩兵よりも機動力も戦闘能力も数段上だ。運用目的は多数。それこそ汎用兵器って奴だな。水中戦、砂漠戦、空中戦用なんて局地戦闘目的の物も有る、こっちの世界の花形兵器だ。」

「なるほど。確かに強力そうだったな。俺がアンブレラから貰ったのも、強力そうだった。」

 納得したように頷くバルの言葉に、アルベルトは「この野郎また機動鎧押し付けてやがるのか・・・。」とつぶやきながら頭を抱えるのだった。

「まあ、いい。 兎に角、戦場で一番目立つのはあれだろうな。 ちなみに。機動鎧ってのはレニス王国が使ってる総称語だ。ほかの国にいけば呼び名も違うし、大きさもまちまちだ。作った技術者、企業によっても物はまったく違ってくる。 操縦桿を握って動かすのから、意識をシンクロさせるもの。果ては機体と融合するものまで有る。」

「昔戦った国に、聖女しか乗れん全高400m強の機動鎧があったな。」

「ああ〜。あったな。 でも俺が一番ウザかったのは、玄人っぽいおっさんたちが乗ってた泥臭い5mくらいの小型機集団だったがな。ワイヤーとか出しながらローラーダッシュしてたあれ。乗り手も上手けりゃ戦争も上手かった。」

「三体合体で人型になるのも居た。」

「あれもなんだったんだろうな。 お前一人で始末しちまったから資料ものこってねーっつーの。」

 昔話をしながら頷きあうアルベルトとレニス王。

 そんな二人の話を聞きながら、「面白そうだな。」と、分かっているのか居ないのか今一曖昧な感想をこぼすバル。

「それから・・・。あれだな。移動島。こいつも見たか?」

「ああ。青白く発光する島が空を飛んでいた。」

「おお。見たか。 良く誤解されるが、アレは特別に強力な魔法使いが作ったもんじゃねぇ。 研究者連中やらが自分たちの理論を下にくみ上げた、工業機械みたいなもんだ。そうだな。なんて言えばいいか・・・。 お前さんたちの世界で言うと、“戦車”を大げさにしたようなやつか。馬が引く、例のアレだな。」

 戦車と言われて、バルたちが普通イメージするのは、大砲を積んだ装甲車ではなく、装甲した馬が引く、馬車のようなタイプの方だ。

「ん? あれも何か生物が動かしているのか?」

「物によるがな。機械仕掛けみたいに無機物だけで作ってある島もあれば・・・植物を利用したのも有る。うちにも植物を使ったのがいくつかあるんだがな。 移動島の原動力は魔力でな。その魔力の供給源を植物に頼った奴なんかは、島全体に植物が覆いかぶさってるし、大気中の魔力に頼る奴はむき出しの魔方陣が羅列してあるって寸法だな。」

「なるほど・・・。 強力なのか? 戦力としては。」

「そらーもう。 なにせアレだけでかいんだ。色々出来るってもんだ。たとえば大規模破壊魔法を予め表面に仕込んどいて、周り中から魔力かき集めてマシンガンばりに乱発したり、大規模シールド展開して機動鎧を数十機無傷で敵首都に送り込んだり、数島で連携して隕石召還したりな。 やり方しだいじゃ〜星も壊せる威力だ。 まあ、もちろん普通はやらないし、やれないがな。」

 星を消せる。その言葉に、さしものバルの表情も曇った。確かに隕石が召還出来るのであれば、それも不可能では無いだろう事は容易に予想が付く。

「あとは、小物こまごまだが・・・。 まずは歩兵。人体をマジックアイテムに置き換える奴。パワードスーツを着る奴。兵種、分担によってさまざまだが、ほかの世界以上に軍と一般では歩兵の武装に雲泥の差があるってのは言えるな。うちの世界は割かし防御魔法が進んでるから、きちんとした装備をした兵隊になら普通の鉄砲玉なんざ利かねぇ。だから超振動やら添付魔法やらで強化した剣も普通に普及してるし、魔法で貫通力を格段に上げた強壮弾入りの銃も使われる。 まあ、銃弾は物が小さいせいかかけられる魔法にも限界があってな。うちの近衛騎士団の団長あたりは、やたらどでかいランスなんて使ってやがる。」

「・・・・・・な、なるほど・・・移動島を中心に軍隊を編成する訳か・・・」

 国王が宰相にけり倒されるという、ショッキング映像からようやく立ち直ったのか、ほけーっとコタツに当たっていたデンノスケは、ようやくといった感じで口を開いた。額に浮かぶ嫌な脂汗をごしごしとぬぐうと、何度か深呼吸をして心臓を落ち着かせる。

「そう言うことだな。移動島を小さくしたようなもんで、船なんてのもあってな。こいつもやっぱり空中を進む船なんだが・・・外で飛んでる鯨見ただろ。まあ、あれのことだな。 移動島。船。機動鎧。この三つが、戦争の花形兵器になる。わけだーな。」

「どれもこれも恐ろしいな・・・。」

 眉間に皺を寄せてうなるようにつぶやくデンノスケ。

「まあ、さらに詳しく言えば、機動鎧にも大きく分けて二パターンあってな。 性能が良い機体ってのはどうしても装甲が欲しいし、外からのハッキングなんかを嫌うもんだから、外からの魔法的接触を完全にシャットアウトしちまうんだよ。 なもんだから、普通の機動鎧なら常に大気中から得られる動力源。つまり魔力を補給できねぇ訳だ。 こういう類の機体は一騎当千なエースなんだが、如何せん乗り手から魔力を取らなきゃいけねーってんで、乗れる奴がやたらすくなくなっちまうんだ。 持ってても乗れる人間が居ないんじゃ宝の持ち腐れだし、どうしてもそういう機体はコストがかさむ。 そんな訳で、そう言う特別な機体には、普通はお前見たいな“勇者殿”やら、うちのあほ王みたいな人外魔境しか乗ってないわけだわな。」

「いや。だから俺は勇者ではな・・・ありませんから・・・!」

 普通につっこみをいれようとして、寸前で相手が宰相だと思い出し凍りつくデンノスケ。断っておくが、突っ込みきれないデンノスケがチキンだとかそう言うことは消してない。普通の国ならば、一般人。それも得体に知れない異世界人が宰相閣下と同室に居るというだけで、雪崩のように兵隊が押し寄せてくるのだ。 しかし、今の状態はどうだろう。宰相どころか、国王すら居るにもかかわらず。警備の兵士たちは無表情でコタツに首まで入り、兎型に切ったりんごを咥えている国王をため息混じりに眺めているだけだった。

「さて。ラストだが・・・うちの国王に関係する話だな。 この世界には確かにむちゃくちゃな破壊力の兵器が沢山有る。だが、だ。そう言うモンを一切合切。それこそ素手で移動島を叩き割る輩が、居る。 それが・・・。」

 アルベルトは軽く手を振り上げると、寝転がっているレニス王の眉間にチョップを叩き込んだ。

「こいつら。“魔人” “勇者” “超越者”。 呼び方は色々あるんだが、まあ、兎に角なんにせよ。こいつや、それに近い化け物どもだ。 最後。つまり社会情勢の話だったな。 こいつらの存在が大きくかかわってくるんだが・・・。 さて。国家間の大まかな話。うちの国の中の話。 どっちから聞きたい?  必要ならお国柄なんかも用意するが。」

 その体躯からは想像も出来ないような、包容力のある。威厳すら漂う笑顔をデンノスケとバルに向けるアルベルト。

 デンノスケはその、おそらく年齢にそぐわぬだろう表情に若干圧倒されつつも・・・コタツから首だけ出している自国の王に、まるで親の敵のように執拗にチョップの嵐を見舞っているという事実に、目の前の宰相に底知れぬ恐ろしさを感じたのだった。

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 レニス王国と言う国は、戦闘国家である。

 その戦闘国家っぷりは、先の大戦で活躍した“英雄”を“王”にしてしまうほど徹底している。

 現国王“レニス・スタッカート”は、一中隊を指揮していただけの兵隊であった。 が、その実力は人間と言うか。なんかもう生き物とかの範疇をぶっちぎりで突き破っていた。

 太古龍を拳撃で手なづけ、様々な精霊から授けられた聖剣を十本ほど背負い、命令書を読み違え敵軍に特攻し壊滅させ、“天空の搭”と呼ばれる古代遺跡(ダンジョン)を圧し折り、最終的には単身“魔王”を切り伏せてしまった。

 

 そんな、ある意味人間失格っぽい“王”は今・・・謁見室に無理矢理設置したコタツに当たりながら、聖剣でリンゴを剥いていた。

「あ・・・れが・・・王なのか・・・?」

 鬼気迫るほどの真顔でリンゴを剥いているレニス王を、デンノスケはドアの隙間から覗き込んでいた。レニス王が発する異常なまでの真剣さに呆れてか、デンノスケの額には脂汗が浮かんでいた。

「機動鎧の試乗してもらいたいところにゃんだけど、この街今物騒だから余所でやるにゃ。」 そう言って歩き出したアンブレラについていって、暫く。デンノスケとバルは、何故かレニス王国の首都“アーディガルド”にある、王城にやってきていた。

「で、なんで国王に会いに来たんだ。って言うか何で簡単に通されるんだよ・・・。」

 王制を執る国において、王とは神に与えられた絶対の地位とされることが多い。

「まー。人間社会はコネも実力のうちってことかにゃー。」

 にゃっはっは。と、機嫌良さそうに笑うアンブレラ。

「まーまー。そんなことより速く中に入る事にするのにゃー。」

「ま、まて! まだ心の準備が・・・!」

 謁見室の入り口付近で躊躇ってるデンノスケを無視して、アンブレラは元気良くドアを開けた。

「にゃっほー。レニス。ひさしぶりだにゃ〜。」

 部屋に入るなり、アンブレラは気軽な感じでひらひらと手を振りながらレニス王に声を掛けた。とても一国の王を相手にしている態度には見えない。 が、レニス王は怒る訳でも気分を害した風でもなく、フツーに友人が自分のアパートに尋ねてきたかのようなリアクションで顔を上げた。無論、表情は鉄仮面のようにピクリとも動かない真顔である。

「ん? レインブーツか。遊びに来たのか?」

「いんにゃ〜。ちょっと近衛騎士団の訓練施設借りようかとおもってにゃー。」

「何をするんだ?」

「機動鎧の熟練運転だにゃー。新人さんにテストさせてあげたいんだにゃ。」

「そうか。良いぞ。好きに使え。 今リンゴが剥けたんだが。食べていくか?」

 訓練施設よりもリンゴが大事。そう言わんばかりに、熟練運転と言う言葉に特に反応しないレニス王であった。

「にゃー。つれがいるんにゃけどにゃ。」

「例の異界の勇者殿か。」

 レニス王の言葉に、デンノスケは一瞬身を硬くした。どうしてこの国の連中は悉く自分の事を知っているのか。

「確かこっちの世界の探索に来ているのだったな。」

「そうにゃ。 レニス王国は色々集まる貨物駅みたいなもんにゃ。人も情報も集まり易いからにゃ。そう言う意味では、あの二人にはもってこいの場所にゃ。」

「そうか。 とりあえず、入ってもらわねば話が進まん。」

 レニス王はむっくりと立ち上がると、ドアをガチャリと開け、顔を廊下側に突き出した。

「な?!」

 突然現れた王の顔に硬直するデンノスケ。と、特にリアクションの無いバルを確認すると、レニス王は首だけ突き出した体制のまま口を開いた。

「私は“レニス・スタッカート”。冒険者だったんだが、色々あって兵隊になり、今はレニス王国国王を生業にしている。 君達の事は少し前にフェネクスに色々聞いている。 他の国に行って、自分達が守護するものの脅威に成るか否かを調べるのが仕事だとかなんだとか。大変そうだな。」

 何度か頷くと、レニス王はドアを開け、全く変化しない真顔のまま、だだっ広い部屋の中央に設置されたコタツを指差した。

「立ち話もなんだ。とりあえずコタツに当たって、リンゴでも食べながら話そう。 君達の役目にも興味がある。聞かせてくれれば、この国の事に付いて話そう。どう言う訳か私が尋ねると大体の情報は部下が調べて来てくれるのでな。理由は良く分からんのだが。」

 本気なのか冗談なのか。その全く変化しない鉄面皮からは全く判断が付かなかった。

 それまで特にリアクションの無かったバルだったが、少し眉間に皺を寄せると、デンノスケの耳元で囁いた。

「変わった王なのか?」

「ああ。どこから突っ込んで良いのか分からないレベルだ・・・!」

 何となく、この国の人間については大体分かってきたデンノスケだった。

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 アンブレラはテクテクと歩き出すと、壁の一部に手を触れた。すぐに大仰な音が響き、倉庫の壁の一部が動き出した。

 どうやらしきりになっていたらしいそれが上がりきると、今いる倉庫の広さと同じ面積ほどの部屋が現れた。

 そこには、足から頭部まで、15mはあろうかと言う大型の鳥型機動鎧だった。広げられた両翼は、優に20m以上はあるだろうか。 一番に目を引くのは、その背に取り付けられた二門の大砲だった。機体の身の丈ほどもある長い砲身を背負ったその姿は、ある種威圧的ですらあった。

「超高高度からの砲撃と、情報支援を目的に作った機体にゃ。まー、デンノスケの機体にくっ付いてる魔法と同じ様な防御機構が取り付けてあるわけにゃけど、こいつは見た目どおり空を飛ぶ事も可能にゃ。 デカイ面積がある翼には、ビルヅの能力を援護する術式が組み込んであるにゃ。相当遠くにいる相手の思考やらも聞えるはずにゃ。 他にもレーダー系なんかの索敵機器も万全完備してるにゃ。 ハッキングやらもこなせるように作ってあるンにゃけど、自分も無防備になるから、その辺を使うようになるのは馴れてからかにゃー。
兵装は見ての通り、カノンが二門。こいつは実弾と魔法、両方こなせるように特注で作ってあるにゃ。特注過ぎて専用弾頭にゃンだけど、その辺はタダで譲るから安心するにゃー。他の武装は、定番のクローと、“氷の炎”だにゃ。」

 アンブレラの口上を分かっているのか分かっていないのか微妙な顔で聞きながら頷くデンノスケだったが、“氷の炎”と言う単語に眉をひそめた。

「なぁ。氷の炎ってなんだ?」

「にゃー。金のかからないミサイルにゃんだけれども、って、にゃーぁ、ミサイルわからにゃいか! 困ったにゃー。」

 困ったといいつつ、全く困っていないような様子で、アンブレラはシルクハットを脱ぐ。端を両手で持って、ブンブンと振ると・・・。なかからミサイルランチャーが現れ、地面にドカンと落ちた。無論、シルクハットから出てくるのは、ミサイルランチャーのサイズは明らかに大きい。

「・・・四次元シルクハット?」

「そんなようなもんにゃ。」

 もはや言葉も無い様子のデンノスケであった。

「じゃ、ミサイルの説明にゃ。様は鉄の塊に色々細工して爆発物やら相手を追っかける装置つけて、ロケット花火見たく打ち出すものの事何にゃけど〜・・・。」

 ミサイルランチャーを担ぎ上げたアンブレラは、獲物を探すようにあたりをキョロキョロと見回した。と。 ちょうど近くにあった窓の外に、ダルそうに歩く人影を発見した。

「ちょうど良かったにゃ。奴に手伝ってもらうにゃ。」

 そう言うと、アンブレラは窓から顔を出し、人影に声を掛けた。

「久しぶりにゃー。相変わらず血ー吸ってるかにゃ〜?」

「おー。アンブレラー。 つーか、血ー吸うとか言うなよ。俺ぁーパックした加熱処理品しか飲まない現代っ子吸血鬼なのよ?」

 実にだらしない様子で歩いてくる吸血鬼青年に、アンブレラは笑いながら返す。

「にゃっはっはっは! まあ細かい事を気にする奴は長生きできにゃいと言うからにゃ! そうそう。ちょっと頼みがあるにゃ。」

「あによ。」

「ちょっと走ってほしいにゃ。」

「は?」

 と、青年が言ったか言わないかの刹那。ミサイルランチャーが火を噴いた。 発射されてから爆発するまで、実に様々なドラマがあった。 追跡するミサイル。必死で逃げる吸血鬼青年。唖然とするデンノスケ。特にリアクションの無いバル。大爆笑のアンブレラ。

 結局、海に逃げ込んだ吸血鬼青年だったが、すぐ後ろについてきたミサイルが大爆発。派手な水柱を上げたものの、アンブレラたちの位置からでは吸血鬼青年の安否は分からなかった。

「と、まあ、コレがミサイルにゃ。コレと同じ様なことを、空気中の水分を使ってヤルノが氷の炎にゃ。氷で本体を作って、中を水素と酸素の混合物で満たし、炎で派手に推進させる。追跡系統の魔術式も組み込めるから、バッチリミサイルって訳にゃ。 氷の炎の大きさは、バルのさじ加減で調節できるにゃ。翼に魔方陣つけてある関係上、大きさは制限されるけどにゃ。大体、最大10mから、最低50cmってところかにゃー。」

「・・・どこから突っ込もう・・・。」

 頭痛に、思わず頭を抱えるデンノスケだったという。

「にゃっはっは! 細かい事は気にしにゃーい。 さて、バル。気に入ったかにゃ?」

 さっきまでバルの居た場所に顔を向けるアンブレラだったが、いつの間にかバルの姿はそこにはいなかった。 ふと、アンブレラは鳥型機動鎧のほうに顔を向けてみた。するとそこには、何事か頷きながら機体をペシペシと叩いているバルの姿が。

「気に入っては居るみたいだな。」

「よかったにゃー。」

 満足そうに微笑むアンブレラ。もっとも、猫人の表情は、人間には多少分かり辛いのだが。

「じゃ、早速機体に名前をつけてやってほしいにゃ。」

「名前? 俺たちが付けて良いもんなのか?」

「何時もならにゃーがつけるんにゃけど、今回は特別にゃー。 それに、バルのは兎も角、デンノスケの機体には人格もあるからにゃ。名前付けてやら無いと大変にゃ。」

 アンブレラの言葉に、硬直するデンノスケ。

「じ、人格・・・?」

「機動鎧の起動を円滑にするために、添付してある全人工精霊の統合意識があるんだにゃ。 バルのはビルヅが統括するからつけてないんにゃけど、デンノスケのにはバッチリ人格ついてるにゃ。」

「そ、その人格って、性別あるのか・・・?」

「いちおうとっつき易いように、女の子にゃんだけど。」

 アンブレラの、イタズラの成功を確信した様な笑みに、思わず頭を抱えるデンノスケだった。

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 アンブレラがデンを連れて来たのは、海岸沿いの打ち捨てられた倉庫街だった。 美しく、清潔に作られたアクア・ルートにあって、その一角だけがまるで別世界のように見えた。アルコールや、得体の知れない薬品のにおいが立ち込め、舗装された道路は所々ひび割れ、破壊されている。 立ち並ぶ倉庫や建物は、どれも崩れかけているように見えた。

 てこてこと歩くアンブレラの後にくっ付いて歩きながら、キョロキョロとあたりを見回すデン。 周りの建物から立ち上る、尋常でない気配に警戒しているのだ。

「別にそんなにびびら無くても平気だにゃ。連中、コレでもくつろいでるだけだからにゃ。それより、ついたにゃ。」

 大型の倉庫の前で立ち止まり、アンブレラはくるりとデンのほうに向き直った。

 アンブレラが地面を傘で二度叩くと、重苦しい音を立てながら倉庫のシャッターが開いていった。 壁の四分の一ほどのそれが上がりきった時、中に見えたのは、一体の機動鎧だった。

「き、き、機動鎧?! それも、獣型か!」

 緊張していたデンノスケの顔が、一気に明るくなった。

「機動鎧の中でも、“ゴーレム”タイプと呼ばれる類の機体にゃ。 乗り手の感情を喰らい魔力に変え、機体を制御し、自立稼動も可能にする人工精霊を植えつけてあるのにゃ。大気中の魔力を吸収する従来の機動鎧の能力とは別に、外部からの魔力を完全に遮断する事で、魔道機器へのハッキングや、魔力攻撃を完全にシャットアウトする機能も備え付けてあるにゃ。」

 言いながら、アンブレラは機体の近くにとことこと歩み寄っていく。 狼を鋼鉄にしたような外見の機体は、全面を黒に統一されており、アクセントで引かれる血の様に鮮やかな赤が、浮かび上がるように冴えている。

「この機体の装甲には、飛行用の術式が組み込まれた無いにゃ。全て、軽量化と対魔道、対物防御に回して有るのにゃ。だから飛行はできないんにゃけれど、並のブレードやランサー、マジックなら蚊が止まったほどにも感じないほどにゃ。 そして、この武装にゃ。」

 今度は機体の横に周り、背から脇にかけての出っ張ったパーツに取り付けられたガトリング砲を叩いた。

「大仰に見えるかもしれにゃいけど、こいつは30mm対機動鎧ガトリング砲にゃ。大抵はこいつで潰せるンにゃけど、こいつが効く様な鎧は二流三流にゃ。本命、本当の武装は、この爪。高周波振動クローにゃ。こいつの表面にはアンチ・マジック・シールドって呼ばれる類の、シールド無効化魔術式が書き込んであるにゃ。勿論、牙にもかいてあるんにゃけどにゃ。 ガトリング砲で牽制しつつ、クローとファングで止めを刺す。コレが基本戦術になるかにゃー。」

「お、おお・・・!」

 嬉しいのか悲しいのか。イマイチ汲み取れない表情で震えているデンのほうに身体をむけ、アンブレラはニヤリと口の端を持ち上げた。

「勿論、コレは君の機体だからにゃ。 他にも欲しい機能があれば、可能な限り追加するのにゃ。 では、質問はあるかにゃ?」

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「にゃ、にゃんてことだにゃー・・・まさかコイツとコンにゃ所であおうとは・・・!」

 硝煙と血。あと、なんか近くにあった全壊した自販機から漂うトロピカルな香りに包まれながら。アンブレラ・レインブーツは、己が強敵と認めるものと対峙していた。

 いつも常に余裕の有る、不敵な表情を崩さない彼だったが、今は眉間に皺が寄り、額からは汗が噴出していた。

「お前と最後に会ったのは・・・ちょうどこんな天気のいい日だったにゃー・・・。暖かく気持ちのいい昼下がり・・・傍らにはお気に入りのミルク・・・まさに最高だったにゃー・・・それを・・・お前が・・・お前のせいで・・・みんな無茶苦茶になったにゃー!!」

 まるで武器のように、手にした傘を突き出すアンブレラ。無論、この傘はただの雨傘ではない。武器職人であるアンブレラが、自身の持てるありとあらゆる暗器、防具知識を詰め込んで作り上げた、渾身の武具。“ナンバーズ”の一つ。“KARAKASA・10 唐傘・転(カラカサ・テン)”。

 そんな凶器を向けられながらも、対するものはあくまで静かにその場に佇んでいた。いや。動けなかった。

「ぐぬぬぬ・・・! 何空かしてるにゃーこの毛玉野郎!!」

 我慢で金といった様子で、その“物”に向かって食って掛かるアンブレラ。しかし、その言い草はあまりに酷いものだった。なにせ相手は毛玉などではなく、立派な“毛糸玉”だったのだから。

「お前を見てると、こう、思わず野生が刺激されると言うか、人としての尊厳をかなぐり捨ててじゃれまくりたくなるのにゃーぁぁぁ!!」

 なにか悔しいのか、滝のように涙を流しながら叫ぶアンブレラ。

「ん? まつにゃ? なんで理性を捨てちゃいけないのにゃ? にゃーは可愛いにゃんこにゃー。人としての尊厳なんてきにしにゃーい 余計な事など気にしにゃーい おお 愛してるんだ誰よりも強く お〜お〜♪」

 かなりの錯乱状態に陥りながら、フラフラとした足取りで毛糸玉に近づいていくアンブレラ。もう少しで指先が届く位置まで近づき、荒い息を立てながら震える手を伸ばした。しかし、今まさに手が触れようとしたその瞬間。

「あっぶにゃーい!!」

 まるで突然飛来した弾丸を避けるかのような綺麗なジャンピング回避で、毛糸玉から飛び退いた。

「あぶにぇー・・・。まじあぶにゃいっつの。焦ったのにゃー・・・。毛玉の魔力恐るべしにゃー・・・。」

 額を拭いながら、高鳴る心臓を叩くアンブレラ。何とかして興奮を抑えようとしているのだろう。

「まったく。にゃーはこんにゃことしている暇わないのにゃ! そこ!そこの青年!ちょっとこっちくるのにゃー!」

「お、俺か?」

 アンブレラに声を掛けられた青年は、驚いたように自分を指した。先ほどまでアンブレラの奇行にドン引きして硬直していた所を引き戻されただけに、反応は鈍かった。

「そうにゃー。にゃーは、君に会いに来たにゃ! デンノスケ! 本名“デン・ゼンネン”!! 自分達の故郷である追放魔獣たちの安息の地を守るため生きる戦士族の勇者にして、他の地を探索してその国が自分達の土地にとって危険で有るか無いかを調べる、放浪の旅人よ!!」

「なんだその説明的ななが台詞はっ! つか、なんでそんなこと知ってるんだ?!」

 古典的な平手突込みを入れる青年。ダメージは殆ど与えずに、パンッ、と言う小気味いい音だけを立てる当たり、相当なてだれであると言えよう。

 青年の名は、デン。大まかな説明は、アンブレラの言っている通りなので端折ろう。ぶっちゃけた事を言ってしまえば、作者がちょくちょく訪れるオリジナル系イラスト小説サイト様の看板息子さんだったりするのだが、話が生々しくなるのでその辺はあえて突っ込みを入れない方向で、後日リンクとか張ってみる方向でいってみようと思うのであった。

「にゃーっはっはっは! 君はこのレニスに来た時、異世界旅客者として入国管理局を通ったにゃ! そう言う面白い情報をにゃーが見逃すはずが無いのにゃー! ビバ情報か時代なのにゃー!!」

 断っておくが、レニス王国の情報管理体制は万全である。数多くいるプログラマやハッカーのなかでも、“人類の至宝”とか呼ばれるレベルの者が、Dr・フェネクスレベルの暇と手で書いたら二つ三つゼロを書き忘れちゃうような金を掛けてようやく侵入できるレベルなのだ。

「小真面目な性格が災いしたにゃー。お陰で今君は私やフェネクスみたいにゃ物好きに、徹底マークされてるのにゃー。」

「ぐっ・・・。」

 この世界の住人ではないデンの頭の中では。“情報化社会ってなんだろう。”とか、“二足歩行の猫って、ケット・シーじゃねーの?”とか色々な疑問が飛び交っていた。が、そんなことが同でもよくなるほど、“こんな連中にマークされてるのか。真面目に入国手続きなんてするんじゃなかったかも知れん。”と言う考えも首をもたげてきていたりしたのだった。

「ま、まぁ・・・今はそんなことはどうでも良い・・・。  俺もアンタに会いに来たんだ。機動鎧がどうとか。ッて言うんだろ?」

 デン自信も、アンブレラと接触を謀ろうとしていたのである。

「色々と聞き込みしようにも、人っ子一人いやしねぇ。 いるのは物騒な連中ばっかりだ。そこにアンタが近づいてきたみたいだったって言うからさ。」

 情報を持ち帰る事を優先にするデンにとって、聞き込みは大切な仕事である。しかし、いまのアクア・ルートは、“一般人は”歩いていない状態であった。 数年前まで戦渦にあったこの国の一般住民の退避能力は実に高いのである。

「にゃっはっはっは! そらー今は戦闘だらけで祭り見たいにゃ有様にゃ。誰も出てこやしないのにゃ〜。 誰だって、自分の頭の上に山を盆地にするような“移動島”がいたら、逃げ出したくもなるのにゃー。」

 頭上に浮かぶ移動島“イージス”を傘で刺し、高笑いを飛ばすアンブレラ。

「山を盆地・・・って、そんなに危険なのかアレ・・・!」

「そりゃそうにゃ。アレだけデカイのにゃ。バリアー、移動鎧、主砲に機関砲座。何でもおき放題にゃ。そうでにゃきゃー態々あんなでかいもん運用しないのにゃー。」

 目をむいて上を見上げるデン。自分達の土地を守る。それが至上命題であり、脅威になりそうな土地の情報を集めるデンにとってみれば、こう言う類ものもは危険物意外には見えないだろう。

「にゃ。 そんなことよりも、今日君に会いに来たのは、装備をプレゼントしようと思ってるからにゃ。」

「装備?」

「そうにゃ。言ってみれば君は威力偵察しに来ている様なもんだにゃ? 戦いながら敵の規模や装備を肌で感じるのが威力偵察にゃ。その君が装備が整わない状態でこの国をうろつくのは、非常に危ないにゃー。」

「それは・・・俺も思ってるけど・・・。 この世界はビックリ人間が多すぎる・・・。」

 額に汗とか浮かべながら唸るデン。実際はそんなにビックリ人間は多くないのだが、今この街の惨状を見ればそう思わずには居られないだろう。

「にゃっはっは! まぁともかくにゃ。僕は武器職人でにゃ。君に色々と装備を託す事にしたのにゃ。」

「本当か? しかし・・・金は無いぞ?」

「にゃ? そんなもんいらにゃいのにゃ。決まってるにゃ。」

「決まってるのか?!」

 ビックリしたような顔をして言うアンブレラに、たじろぐデン。

「にゃーは金じゃー動かないのにゃー。動く目的はただ一つ!」

 ピシリと指を立てて、背筋を伸ばすアンブレラ。

「にゃーの武器を使いこなせる人物にそれを渡す事のみ。にゃ。」

 突然真剣な顔つきで言うアンブレラ。それまでのふざけた様な雰囲気はまるで掻き消え、周りさえも凍てつかせるような意思を持ったその声は、聞いていたデンも思わず息を呑むほどであった。

「ま、とにかくだにゃ。ここじゃ話しづらいから、あそこにいくのにゃ。」

「あそこ?」

 訝しげに尋ねるデンに、アンブレラは背中を向けて歩き出しながら答えた。

「そう、あそこだにゃ。 スラムよりも薄汚くて危険。テメーの腕だけが物を言い、合法違法、様々な物が売り買いされるモノホンの“スラム”。 “冒険者横丁”だにゃー。」

「ぼ、“冒険者横丁”ぅ?」

 さっぱり分からないという顔をするデンを横目に、ニヤリと笑いズンズンと進んでいくアンブレラ。 彼が見かう先は、港の倉庫街。Dr・フェネクス等冒険者たちが住まう一区画。アンブレラの言葉通り、腕っ節が物を言い、冒険者たちが集めてきた古今東西の物品が流通する場所。“冒険者横丁”なのであった。

「なるほど・・・そこのほうが俺には合いそうだ。」

 ボソリと呟くデン。 ニヤリと口端を吊り上げると、「分かった。付いてくよ。」と、アンブレラの後ろに付いていくのだった。

リンク品

 猫人と言う種族が居る。 一言で言えば直立した猫。二言で言えば、やたら賢い直立した猫だ。

 基本的に孤独を好みながらも、人付き合いは好きと言う良く分からない矛盾しているようなしていない様な非常に微妙な彼等種族の多くは、発明家や研究者であった。 数が少ない種族である事と、その類稀なる探究心と頭脳から、非常に珍重される種族であった。

 そんな猫人の一人。“アンブレラ・レインブーツ”は、爆音と怒号が飛び交う“アクア・ルート”を。まるでステッキのように傘を突いて歩いていた。 ノリの効いた下ろしたてのように綺麗なペンギンを着こなし、シルクハットを被ったその姿は、なかなか様になっていた。

「都会は相変わらず騒がしいにゃー。にゃーの町にゃんかじゃー、こんなドンパチもおきにゃいにゃー。 フェネクスがうらやましいにゃー。」

 ルンルンと鼻歌を歌いながら、とことこと歩くアンブレラ。ちなみに、猫人の名誉のために言って置くが、全ての猫人の語尾が「〜にゃー」な訳ではない。寧ろそんな奴は居ないと言って良いだろう。 そう。アンブレラはわざとにゃーにゃー言っているのだ。

「でも、にゃー見たいな非力な頭脳労働タイプには、この街は危なすぎるにゃー。たまーに新人発掘に来るくらいがちょうど良いにゃー。おのぼりさんになるって言うのも、良いもんだしにゃー!」

 にゃーっはっはっはっはっは。 笑いながらも、歩みをやめないアンブレラ。その足取りは軽く、まるで遊園地に行く子供のように楽しさに浮ついている様子だった。

「にゃんたって今回来た異世界からの客人は、“勇者様”にゃー!! 英児はフェネクスに、陽二はスートに取られたにゃーけど、今回はにゃーが一番乗りして装備をプレゼントフェーユーするのにゃー!! そのために、わざわざ機動鎧まで引っ張って来たのにゃー!」

 興奮しているのか、ブンブンと傘を振り回すアンブレラ。ついでに尻尾も千切れんばかりに振り回している。 普通猫は感情表現に尻尾をあまり使わないものだが、アンブレラはそう言う常識に縛られない男なのだった。

「あ。でも、異世界からの客人にゃー。どうコッチの世界の道具の説明したもんかにゃー? 専門用語出して説明したッて分かるはずにゃいだろーし。そんな意味ナッシングな分かり難い説明しても、混乱させるだけにゃー。真に頭の良い説明は、幼稚園児でも納得できるもんだって、にゃーが言ってたにゃー・・・。」

 しばし黙考。

「ま!! にゃんとかにゃるにゃる!!! にゃーっはっはっはっは!! さー!機動鎧渡すのにゃー!!」

 高らかに笑いながら、尻尾と傘を振り回すアンブレラ。

 この、身長120cm弱。猫人の平均身長である160cmを若干下回った小柄な彼は、これでもかと言うほどご機嫌に街を歩いていた。

 勿論。彼の頭の上では弾丸が飛び交い、近衛騎士団の面々が機動鎧やら特殊装備で冒険者やら賞金稼ぎ、何故か紛れていたアサシンギルド員なんかを蹂躙していていたりしていたが・・・。 浮かれているアンブレラにとっては、“そんな些細な事”など、どうでも良かったりしたのだった。