人外魔境な連中を整理整頓。

“城落しの”ガルシャラ・カーマイン

字の通り城を一人で落としたこともある化け物。

種族、年齢一切不明。

二本一対のショートソード、巨大なブレード、規格外の金属鞭を操ることから、“四つ牙”とも呼ばれていたが、今では殆ど“城落し”。

得物や服装はすべて黒一色。別に意味があるわけじゃなく、単に冒険屋と言う家業柄汚れが目立たないようにする為らしい。

常にグラサンを掛けているが、理由はこれまた不明。本人に聞くと、「眩しいから」「バジリスクの血が混じっているから」「目が無いから」と適当な答えが返ってくる。

愛剣である巨大なブレードは“動魔剣・餓躯”と言う銘の業物。ガルシャラの意思一つで、実は30m級の機動鎧である所のその正体を晒す。

行動、思想ともに基本的には穏やかな常識人ではあるが、そう言う人間の常か、怒るとむちゃくちゃ怖い。

実際に彼を怒らせた国が、一つ地図の上から消えている当たり、その怖さのハンパ無さは推し量れる。

“聖剣使い”レニス・スタッカート

魔剣を扱うものを魔剣使いと言うように、聖剣を使うものを聖剣使いと呼ぶ。レニスは複数の聖剣を持ち、それらすべてを使いこなす聖剣使い。

聖剣は普通の魔剣と違い、使用者の力を触媒として力を発動させるものが多い。詰まるところ、強い奴が使えば強く、弱い奴が使えば弱い。 レニスが“不可視の手 インビジブルパワーズ”と呼ばれる、一定範囲内のものに対してサイコキネシスのような不可視の力を加えられる聖剣を要した場合。周囲五キロ圏内のありとあらゆるモノを粉砕することが可能だ。発生源から近いほど力を発揮する為、もし半径一キロ圏内であるならば、移動島クラスのシールドも意味を成さない。

どんなときでも崩さない無表情は、実際に生まれてからこの方ピクリとも動いたことが無い。別にそう言う種族と言うわけではないのだが。

当人が宣言してはばからない通り、思考は基本的に冒険屋だ。「あまり動かないからついに腹に来たのか。脂肪が。メタ・・・メタ・・・メタ何とかになるぞ。」とかほかの国の国王に平気で言っちゃうその胆力は、冒険を生業にしていた頃に付けた物。

“黒の”トレット・レラルム

死して未だに恐れられる男、“ホーリー・クライス”の唯一の弟子。

台風を拳で吹き飛ばし、移動島を宇宙に放り投げる破天荒で常識無視なしな師匠に付いていたせいか、実に温和で常識に満ちた人物。髪が長いのと整った顔立ちから女性に間違えられるが、一応男性。

彼の戦闘スタイルである“魔闘術”は、“拳にありったけの魔力を込めて殴りつける”と言う、シンプル且つダイナミックな技、“魔拳”を基礎にして奥義としており、その破壊力はまさに“一撃必殺”。 ちなみに、トレットが掲げる看板は、“多撃必勝 一撃必殺”である。要するに一撃必殺を乱発して必ず勝つ。と言うこと。

基本的に曲がったことが大嫌いで、困っている人がいたら助けるのが当たり前だと思っている類の天然善人。 普通ならば「青二才が!」などと悪役に一蹴されるような青臭い正義感をかざすものの、本気になれば機動鎧をまとめて十数機吹き飛ばす拳撃を乱発するトレットを一蹴出来る悪役は滅多にいない。

そのルックスと人柄から無闇にモテるが、本人はおんなっけゼロ。 一人前に成る為には、まだまだ色恋に現を抜かしている暇は無い。と、言うのが本人談。

自分の実力を極端に過小評価しているご様子。 まあ、師匠や周りの人間がトレットに輪を掛けて人外だったゆえに、仕方ないか。

ホーリー・クライス

数年前に死んだ人族の男。

どぎつい三白眼と、チンピラ口調から、町のアンチャンにしか見えない風貌であるにもかかわらず、その実力はいまや教科書に乗るほどであった。

拳を振るえば大地が割れ、空気が震えたと言われるほどの豪腕の持ち主。実際に割られた大地が、今では数箇所観光地に成っている。

どこの国にも所属せず、道路工事と喧嘩を生きがいに生涯を過ごした。どういう訳か肉体労働、それも主に“働くお父さんお母さん”を非常に好み、労働者の地位向上に無駄に尽力を腕力で尽くしたりしていた。

その一方、国家間戦争が起こりそうになったと見るや、両方の国に一人で乗り込み、軍隊に壊滅的打撃を与え無理やり交渉の席を設けさせるなど、その行動原理は謎に包まれている。

彼が死んだとき、殆どの者がその死を信じなかったと言う。 彼ほどの魔力の持ち主ならば、不死法もたやすく習得出来ていただろうと考えたからだ。 しかし、クライスは三十台後半と言う若さで亡くなった。 先に逝った彼の妻との間に出来た一人息子は、どう言う訳か“勇者”を名乗り、父と同じように自由気ままに世界を放浪している。

彼の友人の中には、未だに彼が尋ねてくるのを待っているモノもいる。あいつが一回死んだぐらいで落ち着くはずが無い。そのうちあっちに飽きたら、こっちに顔を出しに来るだろう。と、彼らの談。 実際、次元の壁を素手で引き裂いたと言う実績のあるクライスだけに、本当にやってしまいかねないところが怖い。

彼があの世から遠征に来る時が来るのも、遠くないのかもしれない。

マービットとハウザーの過去なのよ。

 今二人の関係は非常に安定している。どちらにも良い影響を及ぼしていると言えるだろう。 事すれば発狂しかねないと思っていたアリシアの精神状態も、守るべき対象が出来たことで目に見えて安定した。

「オレは今がベストだと思うんだよなぁー。 っつーか恋人ってなによ恋人って。ドンだけませてると思ってるのさ。ぼけてんじゃねーのかお上。なに?あれか? じいさんなのか? じーさんなのかお決まり的にお上。」

「あんまり悪口言うとまずいんじゃない?」

「いいんじゃん寝室で愚痴こぼすくらい。 で、はやかったな? マービット。」

 突然掛けられた声に、アービンは寝転がったまま応えた。

 その様子を見て、わざわざ天井に張り付いてまで姿を隠していたマービットは、つまらなそうに舌打ちをしてベッドの上に落ちてきた。背中からドカンとまったく受け身も取らずにベッドに転がると、スックリと立ち上がった。

 アサシンに成るために訓練されている子供たちは、当然のように逃げ出さないように厳重に管理された空間に置かれている。普通は逃げ出すことも、入り込むことも出来ない。

 だが。マービットは普通ではなかった。 アービンがマービットを担当して暫くのことだった。 なんとマービットは夜中にひょっこり、アービンの部屋に現れたのだ。 監視員にも、監視装置にも気が付かれる事無く。

 そして今では、こうして気が向いたときに部屋に出没するようになっていた。

 無論、ほかの者にばれれば厳罰モノではあるが・・・ばれなければそれは何も問題が無いと言うことでもある。

「なにか不穏な話が聞こえたよ。 ボクとねえさんがどうとか。」

 いつもの妙にニヤ付いた笑顔を浮かべながら、マービットは寝転がるアービンに顔を向けた。 ツインサイズのベッドである為か、二人で上に乗っていも手狭に感じないそれの上で寝返りを打つと、アービンは面倒くさそうに顔をしかめた。

「お上の打診だよ。気にするほどのことじゃないっての。 現場監督の俺のほうがまだこのカミッキレより権限があるの。」

「ほんと?」

「ああ。 ぎりっぎりだけどな。」

 なぜか自慢げに言うその様子に、マービットは「なにそれー、なさけないー」と言って、笑った。

「で? お前はどうしたい。」

 アービンの問いかけに、マービットは小首を傾げるようなしぐさを見せた。

「ボクはどっちでも良い。ねえさんのこと好きだし。 色々な意味で。」

「意味深発言だなオイ。幾つだお前。」

「でも、ねえさんは違うと思う。好きの種類がひとつだけなんだよ。」

 珍しく真剣そうなマービットの声に、アービンはその時初めてマービットの顔を見た。

「ボク、弟だから。」

 にっこりと屈託なさそうに笑うこの少年は、一体普段どんなことをしているのか。 それを良く知っている、やらせているアービンにとって、たまにマービットが見せる“本当に”屈託無く笑う今のような顔を見るのは、苦痛だった。

 ただ思えば。こう言う時に“苦痛を感じる”から、アービンは本人の要求通り、第一線を退けられたのかもしれない。

「このシスコンヤロー。 弟歴短けーくせによー。」

 思っていることを億尾にも出さず。アービンはマービットの両頬をぶにゅぅ〜っと捻り上げた。

「ぶえぇぇぇぇぇぇ。」

 なんとも良く判らない声を上げてもがくマービットをひとしきり笑いものにすると、アービンは「それで?」と話を切り出した。

「今日はなんだ? 眠れなくて俺の顔が見たくなったか?」

「何気持ち悪いこと言ってんだよー。このオヤジー。 眠れなかったらねえさんのとこ行くよー。」

「オヤジで悪かったな。」

 ブーたれるマービットに対し、勝ち誇ったように笑うアービン。

「約束したじゃんかよー。 チョコレート〜。」

「ああ。はいはい。覚えてるよ。これな。」

 笑いながら立ち上がると、アービンは本棚の中断ほどの位置においてあった、小さな手提げ袋を取り上げた。

 凝った細工のされたそれは、高級な菓子店の名が書き込まれていた。

「それそれ! ねえさんが言ってた菓子屋の!」

 パーッと表情を明るくするマービット

「プレゼントか? しかしチョコ一個20ってどう言う事よまったく。」

「まぁまぁ。 お礼はそのうちするってばー。」

 嬉しそうに手提げを受け取ると、マービットはそれを大事そうに服の中にしまう。そして壁に手を掛けると、いともたやすく天井に張り付いた。

「それ、どうするんだ。」

「ねえさんにあげるの。決まってるでしょ?」

「お前の口にも入るだろうがなー。 アリシアは絶対に自分一人じゃ食わんぞ。」

 その言葉に、マービットははたと表情を曇らせた。

「ちゃんと全部二つずつ買ってきた? 一つしかないのがあったら、ねえさん絶対ボクに」

「はいはい。 ちゃんと全部一種類に付き二つずつ買ってきたよ。いけいけ。お子様は寝る時間だぞ?」

 アービンの言葉に、マービットはほっとしたような表情を見せた。

「じゃ、ボク帰る。じゃーね。おやすみ。」

 すっ。 っと、溶けるように闇の中に消えていくマービットを眺めながら、アービンは苦笑を浮かべた。

「用が済んだらさっさとねーちゃんのとこか。 現金な奴め。」

 独り言をぼそりと吐くと、アービンは再びベッドの上に寝転がった。

 きっと、あんなものを持っていったらアリシアは卒倒するほど驚くだろう。そしてどうやって手に入れたのか。教官に見つかったら怒られないかと、ネガティブ思考の海に沈む。 必死で宥めるマービットの姿が目に浮かぶが・・・まあ、自業自得だろう。

 それにしても・・・と、アービンは思った。どうもマービットの言っている好きは、アービンの予想の範疇を少し超えているようだった。

「お上もまんざらぼけちゃいねーってことか? まあ、ねーちゃんのほうがあれじゃあなぁ。」

 心配ばかりかける弟を気遣う姉。アリシアのことを思い出すとき最初に浮かぶ、そんなタイトルのつきそうな表情を思い浮かべながら、アービンは楽しそうに思い出し笑いをかみ殺す。

「しっかしお返しねぇ・・・・・・まあ、期待せずに待ちますかぁ?」

 マービットがアービンに「これがチョコレートのお返し」と言ってあるモノを押し付けるのは、まだまだ十数年先の話だ。

ハウザー&マービット マービットの過去なのよ

 アサシンの育成というのは、実は至極専門的な技術と知識を要する作業であった。

 何せ人を殺すことを専門にする人間を育て上げるのだ。 下手に恨みを買えば、訓練途中でうっかり反逆されて殺されてしまいかねない。 かと言って甘やかしてもいけない。 普通の人間よりもよほど強靭で狡猾で人の裏を書くのに長け、尚且つ証拠を残さず人を殺したり、情報を引き出すための拷問術にまで長ける人間を作り上げ無ければ成らない訳だから。

 厳しく、辛く、死ぬような目に遭わせつつも・・・その対象には恨まれない。 そんなスキルが、アサシン育成者には求められるのだ。

 そんな。成るのが非常に困難な“アサシン育成者”の一人が、ベットと机が一脚あるだけの自室で、難しそうな顔をして唸っていた。

 彼は元々組織付きのアサシンであったが、「まとまった睡眠が取れない」と言う理由から引退。後進の育成に性を出すことにしたのだった。 ちなみに彼、“アービン・ファフニール”は、今年26歳の鉱石人である。 生体金属と呼ばれる生きる無機物を共生相手として体内に取り込み生きる鉱物人の平均寿命は普通の人間と同じくらい。 アービンと言う男のやる気の無さがお分かりいただけるだろうか。

 このアービンは、二年ほど前から“マービット・ケンブリッジ”の飼育を担当していた。 彼が今唸っている理由は、そのマービットにかんすることだった。

 二ヶ月ほど前。アービンの判断で、一人の少女をマービットに会わせることにした。“アリシア・ケンブリッジ”。マービットの姉と言うことにする少女である。

 生まれる前からアサシンとして育成されることが決まっていたマービットには、兄弟姉妹は居ない。しかし今だ農耕を営む民が多いこの星に置いて、一人っ子と言うのは実に稀である。 優秀なアサシンはどんな場所にでも溶け込み浸透できなくてはならない。 一人っ子と言う珍しい境遇のものは、すこぶるとまでは言わないまでも不自然。幼い頃の原体験とも言える兄弟との思い出と言うのは、作り上げたり嘘で通せるほど生易しいものではない。 ならば、アサシンとして育成している子供同士を兄弟として育てレば良い。 それはアービンやマービットが所属する組織では当たり前のようにとられているアサシン育成方法の一つであった。

 しかし。後付の兄弟姉妹を引き合わせるタイミングと言うのは、非常に難しいものであった。 幼い内で無ければならない。あまり年齢が上になってからでは、そもそも原体験をさせるためだと言うのに意味が無い。

 マービットとアリシアの場合は、異例も異例だった。 何せ普通兄弟として組み合わせられるのは、“アサシンとして生まれてきたもの”ならそれ同士。が、基本なのだから。 それもそうだ。 何せ普通の世界で暮らしてきた子供たちにとってマービットのような存在は、異質な“化け物”にしか写らないのだから。

 だが。マービットに限っては、アービンの判断は定石を覆すものだった。 当たり前の日常を知るアリシア。マービットと言う個体は、アリシアからその“普通の世界”を、恐らく押し知ることが出来る知能レベルを有しているのではないか。 また、アリシアという個体は、マービットと言う化け物を容認して受け入れることが出来るのではないか。 そう考えたのだ。

 実際。引き合わせてから一週間ほどで、アリシアはアービンの思惑通り、マービットを実の弟のように可愛がり始めた。マービットもそれに甘えるようにすらなっていた。

 子供と言うのは、大人が考える以上に他人の意識に敏感である。 大人のように経験則や余計な知識、保身のための思考がない分、寧ろ子供の方が人をみるめがあるといって良いだろう。 ましてマービットはアサシンになるために育てられている個体。人間の本性やそう言う類の物を見極めるすべには長けている。 アリシアも随分ひどい目に遭っている少女だ。人間不信の塊になっていると見て良いだろう。 そんな二人が、二人とも相手に懐いている。

 兄弟姉妹として、仲が良い。仲が良い兄弟姉妹が居て、よく遊んだ。 それは組織にとって良い原体験と言える。人間社会に溶け込み、違和感無く仕事をこなすための大切な要素の一つであるから。

 だが・・・アービン以外の育成者の一人が、こんなことを言い始めた。

「アレはまるで恋人同士のように仲睦まじい」

 確かに、二人はもう分別が付いている。変な言い方をすれば、“ませている”のだ。 恋人が出来てもおかしくは無い。恋をしてもなんら問題は無い。 組織としても、恋愛は別に構わないと判断をしていた。 どうせどちらもアサシンとして動くことに成るのだモチベーションを上げるにしても、いざとい時の人質としても、そう言う対象が居るのは悪くない。

 まるで恋人の様。が、本当の恋人に。 なんら問題は無い。 だが、“姉と弟が恋人同士”と言うのは問題があるわけだ。 まさか侵入した先でうっかり、「姉と結ばれたことがあります」などと口走った日には、目も当てられない。別の意味で任務に支障が出る訳だ。 うっかり口を付いて出るのが原体験である。それを調整すつた目の行為が意味が無い。

 そう。今アービンが悩んでいるのは簡単なこと。 「マービットとアリシアの関係をどうするか。」 このまま姉弟にするのか。それとも変えるのか・・・。

 

「ていうか上もこんな堅苦しい文章でそんな内容の伝令かかんでもよかろーによ。」

 ぼけーっとした、いかにも眠そうな顔でそう毒付くと、アービンはごろりとベットに転がった。

 実際、アービンにとってマービットがアリシアに懐くだろうと言うのは、予想の範疇だった。 マービットと言う個体は、現在の同時期に生まれた中でも、飛びぬけて優秀だった。ただどう言う訳か、そう言った個体特有の無関心さが微塵も感じられなかった。 優秀で秀でる個体というのは、押しなべて何か達観したような、諦めた様な。どこか世間ズレした所が出るものであった。

 無論マービットもずれていると言えばずれているのだが・・・何と言うのだろうか。 そのずれ方と言うのが、どうにも当たり前の子供。それも無邪気な子供のようなずれ方をしているのだ。

 所謂、天然系という奴だろうか。 物心が付いていないような何にも考えていないような・・・。 かと言って、訓練の成績を見る分には、確かにほかの個体よりも優れた結果を出しているのだ。

「・・・つかみ所の無い奴だよまったくよぉ。」

 誰に言うとも無くつぶやくと、アービンはごろりとベットの上で寝返りを打った。

 アービンの見立てでは、アリシアは純粋にマービットを弟として可愛がっていた。いつもどこかそわそわと落ち着きの無いマービットの言動や態度が、元々弟がいたと言うアリシアの姉としての心を刺激するからだろう。

 では、マービットはどうだろう。 アレが感じているのは、どこか兄弟と言うものとは少し違う。アービンは、そう思っていた。 マービットは、今まで一つも“自分の物”と言い切れる、個人で所有、独占できるものを持ったことが無かった。 訓練のときに使う道具も服も。食器もイスも机も、時には呼称さえ日替わりで変えさせられたこともあった。 それが最近になりようやく、名を“マービット・ケンブリッジ”とされ、“姉”と言う目に見えて、触れることの出来る、自分とだけ特別な繋がりがあるものを手に入れたのだ。

 マービット自身も、気が付いているかは分からない。だが、マービットにとってアリシアは、“姉”であって、“姉”では無い。初めて手に入れた、言わば“マービットだけのモノ”。 “宝物”なのだ。

そういえばエープリルフールって四月バカって意味だけど、“釣りバカ”とかその辺の流れで考えるとやっぱり

「と言うわけで四月馬鹿について語らおうと思うのだがね。」

 無意味に真剣な顔で切り出すDr・フェネクスに、その場に居た全員がそれぞれの得物で突っ込みを入れた。 ちなみに面子は、ハウザー、英児、アルベルトの三名だ。

「うむ・・・。ランスやらブレードやら大鎌やらで殴られたら痛いと思うのだがね。」

「痛くしてんだよこのボケ! 様があるっていうから何かと思えば! 大体もう一日過ぎてんだよ! 一日!」

 カンガンテーブルを蹴りながら喚くアルベルト。 ちなみに四人が集まっているのは、Dr・フェネクスの自宅兼研究室兼事務所であるところの、海岸沿いの廃倉庫である。

「うむ。本来ならば四月一日に過去編あたりで私とジェーンがエイプリルフールをネタに戯れるという心温まるエピソードを掲載予定だったのだがね。如何せん忙しい上に四月一日の存在自体を当日忘れてしまうというタイムリー痴呆症状を起こしてしまってね。まあ、不幸な事故だったと思うのだがね。」

「すげぇ。開き直ってやがる・・・。 流石プロフェッサーFだ・・・!」

「どの辺が流石なんだよ・・・。」

「おお。エイプリルフールっつったら、妹に引っ掛けられたぞ。当日に。今年。」

 何事か思い出したのか、首をひねりながらそう言うハウザー。

「おお。あの妹さんか。おめーら父子に似ないで可愛らしかったの覚えてるが。」

「え? それがエイプリルフールのネタ?」

「うむ。ハウザーの妹さんとなると、そこらの騎士では肉体的にも精神的にも敵わないであろうと言う先入観が有ってしかるべきだと思うのだがね。」

「テメーら二人俺のことなんだと思ってんだゴラ・・・。」

 若干切れかけるハウザーさんでした。

「これだこれ。 俺の妹。ほれ。」

 ばさりとハウザーが机の上に置いたのは、財布から取り出した家族写真だった。 詳細は端折るが、個々最近撮ったものらしいそこに写っていたのは五人。一人は、ハウザーをそのまま数年放置したような、クリソツな父親。もう一人は、ハウザー本人。そして残る三人は・・・柔和な笑顔を湛える、美しいよりも可愛らしいと言う言葉が似合う貴婦人。まるで天使のように微笑む少女。そして、白馬に乗ればまんま“王子様”な美青年。

「・・・・・・え? なにこれ。 質の悪い合成写真?」

「王族とお付の騎士二人と言った風情だと思うのだがね。」

「すまんハウザー。知ってる俺でもそう思った。」

「テメーらマジ殴るぞ?」

 言ったら本当に殴っちゃうのがハウザーさんなのでした。

「うーむ。ぬーん。遺伝子と言うのは時に混ざらず子供を産み落とすものなのだと思うのだがね。」

「いえ、プロフェッサーF。血がつながっていないと言う可能性も。」

「正真正銘実の兄弟にお袋だ馬鹿野郎が。」

 超真顔で真剣に悩むDr・フェネクスと英児に、若干殺意を覚えるハウザーだった。

「実際ハウゼル卿とハウザーの血がつながってるのは間違いないんだがな。ビジュアル的に。」

「誰? ハウゼル卿。」

「ハウザーの親父さんだ。」

「あー。 で、この妹さんに何騙されたんだよ。」

「おお。あれだ。誘拐されたとか言って手紙着てな。すっ飛んで行ったんだが、要するにお袋がたまには実家に帰れとか言いたかったために仕組んだ事だったらしくてな。」

「ふむ。だからこの間血相を変えて走っていったのかね。何事かと思ったのだがね。」

「へぇ〜。 騙されたのに気が付いたハウザーの旦那の顔、拝みたかったねぇ。」

 ケラケラと笑うDr・フェネクスと英児。

「うっせぇ。 しかし実際焦ったのは否めなかったな。なかなか用意周到でな。 バックアップが妙にこずるい奴だったせいもあるんだが・・・。」

「へぇ〜。誰だ? それ。」

「マービットだ。」

「うわー。オチ見えたわ。」

 何か。 巨大ロボットに踏み潰される寸前の戦闘員を見つめる悲哀に満ちた目を窓の外に向け、ため息を吐き出すアルベルトだった。

 

 

 その頃。ハウザーの実家から城にいたるまでの帰り道。ずーっと“アシュラ・8”の高速移動によって引きずり倒された挙句、ハウザーの気孔術によってスタボロに伸されたマービットは・・・。

 城内にある近衛騎士団零番隊詰め所にて、ピクピクと痙攣していた。

 ふと、それまで虫の息だったマービットが、むっくりと起き上がった。そして。

「だんだんとー あまいあじがー してきたっすー。」

 どことも無い虚空を見つめ、半笑いでそうつぶやくと。またばったりと倒れこみ、今度はピクリとも動かなくなった。

 マービットがハウザーの手によって、(打撃で)強制蘇生され、またハードワークに埋没していくのは、この二時間後のことである。