博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

 その日。たまたまDr・フェネクスを訪ねてきた彼の古い友人。“悪魔騎士”ラキュードは、実に奇妙な光景を目にしていた。

 「悪魔である前に一人の騎士である。」と公言してはばからない、変わり者の大悪魔であるラキュードは、蝙蝠の様な皮膜の片翼を背に背負った、絶世の美丈夫である。 見たものを魅了し堕落させると言う魔性を持つ外見は、幾数重にも魔法防御を施した兜と鎧で隠しているため、その表情を知るのは非常に困難だった。

 “身の丈程もある大剣を背負った、全身鎧の片翼の悪魔”である所のラキュード。そんな彼が今目にしている光景とは・・・。

 自分の仲間である所の、同じ大悪魔“フェネクス”が、自宅である倉庫の屋上で、真夏にもかかわらず段ボール箱に詰まって高笑いをしていると言う、思わず精神科医を紹介してしまいそうになるような場面だった。

 

「フェネクス・・・貴様何をしている。」

「む。ああ。久しぶりだと思うのだがね。相変わらず暑苦しそうな格好だと思うのだがね。 まあ、歌や目線ではなく外見そのものが効果を及ぼすのが君だからね。仕方がないことだとは思うのだがね。」

「余計なお世話だ。そんなことより人の話を聞け貴様は。質問されている内容には最低限答えるようにしろと何度言えばわかるのだ。 まあ良い。一体何事なんだ本当に。この暑い中屋根の上でダンボールだぞに詰まっているというのは。卵でも産み落としたか?」

「はっはっは。そこに居る私の同居人の提案でね。今日はここで温まることにしたのだよ。」

「あったかい。」

「んなっ・・・! んだ・・・! フェネクス貴様ぁ!! ついに幼女誘拐なぞに手を染めたのか! 昔から良識の欠如したやつとは思っていたがよもやここまでとは! 二度と悪行が行えんように叩き切ってくれようかっ!」

「うむ。悪魔の口から出るとは思えない台詞だと思うのだがね。」

「あー。」

「彼女は街なかで買い物中、私の食料を狙って私の家に侵入し力尽くで食べ物を奪っていく・・・いわば居座り強盗のようなものなのだがね。」

「戯けが! 聞く耳持たんわっ! 我等二人! 私は武芸で!貴様は知能で彼の方を御支えする事を約束したはずであろうが! それをよりにもよって犯罪になぞ手を染めおってからにっ!」

「清く正しい悪魔というのもどうかと思うのだがね。 だから落ち着いて欲しいのだがね。 実際彼女は・・・」

「いすわりごーとー。」

「ふむ。気に入ったかね?」

「ん。 ごはんうばう。」

「どんな会話だ! フェネクス! 一体何をこの少女に吹き込んだのだ!」

「落ち着いてくれると有難いと思うのだがね。私は今ダンボール箱から出られないのだよ。はまってしまってしまったようでね。いやいや。これでなかなか切羽詰っているのだがね。はっはっはっはっは!」

「ん。」

「阿呆か貴様は・・・! んん? 少女よ。どこに行く! ここは屋根の上だぞ!むやみに動いてはいけない!」

「とり、うごけない。」

「なに?」

「ごはんぜんぶうばう。」

「なっ・・・! って、うをぉぉぉぉぉ?! なんだあの少女は?! 屋根から飛び降りて倉庫の中に駆け込んでいったぞ?! ここの屋根は地上10m強あるんじゃないのか?!」

「そうだったと思うのだがね。彼女はマジックも使えるようだからね。この程度なら問題無いのだよ。」

「な、なにものなのだ・・・! あの少女は!」

「同居人で・・・居座り強盗。だのだがね?」