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 レニス王国と言う国は、戦闘国家である。

 その戦闘国家っぷりは、先の大戦で活躍した“英雄”を“王”にしてしまうほど徹底している。

 現国王“レニス・スタッカート”は、一中隊を指揮していただけの兵隊であった。 が、その実力は人間と言うか。なんかもう生き物とかの範疇をぶっちぎりで突き破っていた。

 太古龍を拳撃で手なづけ、様々な精霊から授けられた聖剣を十本ほど背負い、命令書を読み違え敵軍に特攻し壊滅させ、“天空の搭”と呼ばれる古代遺跡(ダンジョン)を圧し折り、最終的には単身“魔王”を切り伏せてしまった。

 

 そんな、ある意味人間失格っぽい“王”は今・・・謁見室に無理矢理設置したコタツに当たりながら、聖剣でリンゴを剥いていた。

「あ・・・れが・・・王なのか・・・?」

 鬼気迫るほどの真顔でリンゴを剥いているレニス王を、デンノスケはドアの隙間から覗き込んでいた。レニス王が発する異常なまでの真剣さに呆れてか、デンノスケの額には脂汗が浮かんでいた。

「機動鎧の試乗してもらいたいところにゃんだけど、この街今物騒だから余所でやるにゃ。」 そう言って歩き出したアンブレラについていって、暫く。デンノスケとバルは、何故かレニス王国の首都“アーディガルド”にある、王城にやってきていた。

「で、なんで国王に会いに来たんだ。って言うか何で簡単に通されるんだよ・・・。」

 王制を執る国において、王とは神に与えられた絶対の地位とされることが多い。

「まー。人間社会はコネも実力のうちってことかにゃー。」

 にゃっはっは。と、機嫌良さそうに笑うアンブレラ。

「まーまー。そんなことより速く中に入る事にするのにゃー。」

「ま、まて! まだ心の準備が・・・!」

 謁見室の入り口付近で躊躇ってるデンノスケを無視して、アンブレラは元気良くドアを開けた。

「にゃっほー。レニス。ひさしぶりだにゃ〜。」

 部屋に入るなり、アンブレラは気軽な感じでひらひらと手を振りながらレニス王に声を掛けた。とても一国の王を相手にしている態度には見えない。 が、レニス王は怒る訳でも気分を害した風でもなく、フツーに友人が自分のアパートに尋ねてきたかのようなリアクションで顔を上げた。無論、表情は鉄仮面のようにピクリとも動かない真顔である。

「ん? レインブーツか。遊びに来たのか?」

「いんにゃ〜。ちょっと近衛騎士団の訓練施設借りようかとおもってにゃー。」

「何をするんだ?」

「機動鎧の熟練運転だにゃー。新人さんにテストさせてあげたいんだにゃ。」

「そうか。良いぞ。好きに使え。 今リンゴが剥けたんだが。食べていくか?」

 訓練施設よりもリンゴが大事。そう言わんばかりに、熟練運転と言う言葉に特に反応しないレニス王であった。

「にゃー。つれがいるんにゃけどにゃ。」

「例の異界の勇者殿か。」

 レニス王の言葉に、デンノスケは一瞬身を硬くした。どうしてこの国の連中は悉く自分の事を知っているのか。

「確かこっちの世界の探索に来ているのだったな。」

「そうにゃ。 レニス王国は色々集まる貨物駅みたいなもんにゃ。人も情報も集まり易いからにゃ。そう言う意味では、あの二人にはもってこいの場所にゃ。」

「そうか。 とりあえず、入ってもらわねば話が進まん。」

 レニス王はむっくりと立ち上がると、ドアをガチャリと開け、顔を廊下側に突き出した。

「な?!」

 突然現れた王の顔に硬直するデンノスケ。と、特にリアクションの無いバルを確認すると、レニス王は首だけ突き出した体制のまま口を開いた。

「私は“レニス・スタッカート”。冒険者だったんだが、色々あって兵隊になり、今はレニス王国国王を生業にしている。 君達の事は少し前にフェネクスに色々聞いている。 他の国に行って、自分達が守護するものの脅威に成るか否かを調べるのが仕事だとかなんだとか。大変そうだな。」

 何度か頷くと、レニス王はドアを開け、全く変化しない真顔のまま、だだっ広い部屋の中央に設置されたコタツを指差した。

「立ち話もなんだ。とりあえずコタツに当たって、リンゴでも食べながら話そう。 君達の役目にも興味がある。聞かせてくれれば、この国の事に付いて話そう。どう言う訳か私が尋ねると大体の情報は部下が調べて来てくれるのでな。理由は良く分からんのだが。」

 本気なのか冗談なのか。その全く変化しない鉄面皮からは全く判断が付かなかった。

 それまで特にリアクションの無かったバルだったが、少し眉間に皺を寄せると、デンノスケの耳元で囁いた。

「変わった王なのか?」

「ああ。どこから突っ込んで良いのか分からないレベルだ・・・!」

 何となく、この国の人間については大体分かってきたデンノスケだった。