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 アンブレラはテクテクと歩き出すと、壁の一部に手を触れた。すぐに大仰な音が響き、倉庫の壁の一部が動き出した。

 どうやらしきりになっていたらしいそれが上がりきると、今いる倉庫の広さと同じ面積ほどの部屋が現れた。

 そこには、足から頭部まで、15mはあろうかと言う大型の鳥型機動鎧だった。広げられた両翼は、優に20m以上はあるだろうか。 一番に目を引くのは、その背に取り付けられた二門の大砲だった。機体の身の丈ほどもある長い砲身を背負ったその姿は、ある種威圧的ですらあった。

「超高高度からの砲撃と、情報支援を目的に作った機体にゃ。まー、デンノスケの機体にくっ付いてる魔法と同じ様な防御機構が取り付けてあるわけにゃけど、こいつは見た目どおり空を飛ぶ事も可能にゃ。 デカイ面積がある翼には、ビルヅの能力を援護する術式が組み込んであるにゃ。相当遠くにいる相手の思考やらも聞えるはずにゃ。 他にもレーダー系なんかの索敵機器も万全完備してるにゃ。 ハッキングやらもこなせるように作ってあるンにゃけど、自分も無防備になるから、その辺を使うようになるのは馴れてからかにゃー。
兵装は見ての通り、カノンが二門。こいつは実弾と魔法、両方こなせるように特注で作ってあるにゃ。特注過ぎて専用弾頭にゃンだけど、その辺はタダで譲るから安心するにゃー。他の武装は、定番のクローと、“氷の炎”だにゃ。」

 アンブレラの口上を分かっているのか分かっていないのか微妙な顔で聞きながら頷くデンノスケだったが、“氷の炎”と言う単語に眉をひそめた。

「なぁ。氷の炎ってなんだ?」

「にゃー。金のかからないミサイルにゃんだけれども、って、にゃーぁ、ミサイルわからにゃいか! 困ったにゃー。」

 困ったといいつつ、全く困っていないような様子で、アンブレラはシルクハットを脱ぐ。端を両手で持って、ブンブンと振ると・・・。なかからミサイルランチャーが現れ、地面にドカンと落ちた。無論、シルクハットから出てくるのは、ミサイルランチャーのサイズは明らかに大きい。

「・・・四次元シルクハット?」

「そんなようなもんにゃ。」

 もはや言葉も無い様子のデンノスケであった。

「じゃ、ミサイルの説明にゃ。様は鉄の塊に色々細工して爆発物やら相手を追っかける装置つけて、ロケット花火見たく打ち出すものの事何にゃけど〜・・・。」

 ミサイルランチャーを担ぎ上げたアンブレラは、獲物を探すようにあたりをキョロキョロと見回した。と。 ちょうど近くにあった窓の外に、ダルそうに歩く人影を発見した。

「ちょうど良かったにゃ。奴に手伝ってもらうにゃ。」

 そう言うと、アンブレラは窓から顔を出し、人影に声を掛けた。

「久しぶりにゃー。相変わらず血ー吸ってるかにゃ〜?」

「おー。アンブレラー。 つーか、血ー吸うとか言うなよ。俺ぁーパックした加熱処理品しか飲まない現代っ子吸血鬼なのよ?」

 実にだらしない様子で歩いてくる吸血鬼青年に、アンブレラは笑いながら返す。

「にゃっはっはっは! まあ細かい事を気にする奴は長生きできにゃいと言うからにゃ! そうそう。ちょっと頼みがあるにゃ。」

「あによ。」

「ちょっと走ってほしいにゃ。」

「は?」

 と、青年が言ったか言わないかの刹那。ミサイルランチャーが火を噴いた。 発射されてから爆発するまで、実に様々なドラマがあった。 追跡するミサイル。必死で逃げる吸血鬼青年。唖然とするデンノスケ。特にリアクションの無いバル。大爆笑のアンブレラ。

 結局、海に逃げ込んだ吸血鬼青年だったが、すぐ後ろについてきたミサイルが大爆発。派手な水柱を上げたものの、アンブレラたちの位置からでは吸血鬼青年の安否は分からなかった。

「と、まあ、コレがミサイルにゃ。コレと同じ様なことを、空気中の水分を使ってヤルノが氷の炎にゃ。氷で本体を作って、中を水素と酸素の混合物で満たし、炎で派手に推進させる。追跡系統の魔術式も組み込めるから、バッチリミサイルって訳にゃ。 氷の炎の大きさは、バルのさじ加減で調節できるにゃ。翼に魔方陣つけてある関係上、大きさは制限されるけどにゃ。大体、最大10mから、最低50cmってところかにゃー。」

「・・・どこから突っ込もう・・・。」

 頭痛に、思わず頭を抱えるデンノスケだったという。

「にゃっはっは! 細かい事は気にしにゃーい。 さて、バル。気に入ったかにゃ?」

 さっきまでバルの居た場所に顔を向けるアンブレラだったが、いつの間にかバルの姿はそこにはいなかった。 ふと、アンブレラは鳥型機動鎧のほうに顔を向けてみた。するとそこには、何事か頷きながら機体をペシペシと叩いているバルの姿が。

「気に入っては居るみたいだな。」

「よかったにゃー。」

 満足そうに微笑むアンブレラ。もっとも、猫人の表情は、人間には多少分かり辛いのだが。

「じゃ、早速機体に名前をつけてやってほしいにゃ。」

「名前? 俺たちが付けて良いもんなのか?」

「何時もならにゃーがつけるんにゃけど、今回は特別にゃー。 それに、バルのは兎も角、デンノスケの機体には人格もあるからにゃ。名前付けてやら無いと大変にゃ。」

 アンブレラの言葉に、硬直するデンノスケ。

「じ、人格・・・?」

「機動鎧の起動を円滑にするために、添付してある全人工精霊の統合意識があるんだにゃ。 バルのはビルヅが統括するからつけてないんにゃけど、デンノスケのにはバッチリ人格ついてるにゃ。」

「そ、その人格って、性別あるのか・・・?」

「いちおうとっつき易いように、女の子にゃんだけど。」

 アンブレラの、イタズラの成功を確信した様な笑みに、思わず頭を抱えるデンノスケだった。