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 アンブレラがデンを連れて来たのは、海岸沿いの打ち捨てられた倉庫街だった。 美しく、清潔に作られたアクア・ルートにあって、その一角だけがまるで別世界のように見えた。アルコールや、得体の知れない薬品のにおいが立ち込め、舗装された道路は所々ひび割れ、破壊されている。 立ち並ぶ倉庫や建物は、どれも崩れかけているように見えた。

 てこてこと歩くアンブレラの後にくっ付いて歩きながら、キョロキョロとあたりを見回すデン。 周りの建物から立ち上る、尋常でない気配に警戒しているのだ。

「別にそんなにびびら無くても平気だにゃ。連中、コレでもくつろいでるだけだからにゃ。それより、ついたにゃ。」

 大型の倉庫の前で立ち止まり、アンブレラはくるりとデンのほうに向き直った。

 アンブレラが地面を傘で二度叩くと、重苦しい音を立てながら倉庫のシャッターが開いていった。 壁の四分の一ほどのそれが上がりきった時、中に見えたのは、一体の機動鎧だった。

「き、き、機動鎧?! それも、獣型か!」

 緊張していたデンノスケの顔が、一気に明るくなった。

「機動鎧の中でも、“ゴーレム”タイプと呼ばれる類の機体にゃ。 乗り手の感情を喰らい魔力に変え、機体を制御し、自立稼動も可能にする人工精霊を植えつけてあるのにゃ。大気中の魔力を吸収する従来の機動鎧の能力とは別に、外部からの魔力を完全に遮断する事で、魔道機器へのハッキングや、魔力攻撃を完全にシャットアウトする機能も備え付けてあるにゃ。」

 言いながら、アンブレラは機体の近くにとことこと歩み寄っていく。 狼を鋼鉄にしたような外見の機体は、全面を黒に統一されており、アクセントで引かれる血の様に鮮やかな赤が、浮かび上がるように冴えている。

「この機体の装甲には、飛行用の術式が組み込まれた無いにゃ。全て、軽量化と対魔道、対物防御に回して有るのにゃ。だから飛行はできないんにゃけれど、並のブレードやランサー、マジックなら蚊が止まったほどにも感じないほどにゃ。 そして、この武装にゃ。」

 今度は機体の横に周り、背から脇にかけての出っ張ったパーツに取り付けられたガトリング砲を叩いた。

「大仰に見えるかもしれにゃいけど、こいつは30mm対機動鎧ガトリング砲にゃ。大抵はこいつで潰せるンにゃけど、こいつが効く様な鎧は二流三流にゃ。本命、本当の武装は、この爪。高周波振動クローにゃ。こいつの表面にはアンチ・マジック・シールドって呼ばれる類の、シールド無効化魔術式が書き込んであるにゃ。勿論、牙にもかいてあるんにゃけどにゃ。 ガトリング砲で牽制しつつ、クローとファングで止めを刺す。コレが基本戦術になるかにゃー。」

「お、おお・・・!」

 嬉しいのか悲しいのか。イマイチ汲み取れない表情で震えているデンのほうに身体をむけ、アンブレラはニヤリと口の端を持ち上げた。

「勿論、コレは君の機体だからにゃ。 他にも欲しい機能があれば、可能な限り追加するのにゃ。 では、質問はあるかにゃ?」