リンク品

「にゃ、にゃんてことだにゃー・・・まさかコイツとコンにゃ所であおうとは・・・!」

 硝煙と血。あと、なんか近くにあった全壊した自販機から漂うトロピカルな香りに包まれながら。アンブレラ・レインブーツは、己が強敵と認めるものと対峙していた。

 いつも常に余裕の有る、不敵な表情を崩さない彼だったが、今は眉間に皺が寄り、額からは汗が噴出していた。

「お前と最後に会ったのは・・・ちょうどこんな天気のいい日だったにゃー・・・。暖かく気持ちのいい昼下がり・・・傍らにはお気に入りのミルク・・・まさに最高だったにゃー・・・それを・・・お前が・・・お前のせいで・・・みんな無茶苦茶になったにゃー!!」

 まるで武器のように、手にした傘を突き出すアンブレラ。無論、この傘はただの雨傘ではない。武器職人であるアンブレラが、自身の持てるありとあらゆる暗器、防具知識を詰め込んで作り上げた、渾身の武具。“ナンバーズ”の一つ。“KARAKASA・10 唐傘・転(カラカサ・テン)”。

 そんな凶器を向けられながらも、対するものはあくまで静かにその場に佇んでいた。いや。動けなかった。

「ぐぬぬぬ・・・! 何空かしてるにゃーこの毛玉野郎!!」

 我慢で金といった様子で、その“物”に向かって食って掛かるアンブレラ。しかし、その言い草はあまりに酷いものだった。なにせ相手は毛玉などではなく、立派な“毛糸玉”だったのだから。

「お前を見てると、こう、思わず野生が刺激されると言うか、人としての尊厳をかなぐり捨ててじゃれまくりたくなるのにゃーぁぁぁ!!」

 なにか悔しいのか、滝のように涙を流しながら叫ぶアンブレラ。

「ん? まつにゃ? なんで理性を捨てちゃいけないのにゃ? にゃーは可愛いにゃんこにゃー。人としての尊厳なんてきにしにゃーい 余計な事など気にしにゃーい おお 愛してるんだ誰よりも強く お〜お〜♪」

 かなりの錯乱状態に陥りながら、フラフラとした足取りで毛糸玉に近づいていくアンブレラ。もう少しで指先が届く位置まで近づき、荒い息を立てながら震える手を伸ばした。しかし、今まさに手が触れようとしたその瞬間。

「あっぶにゃーい!!」

 まるで突然飛来した弾丸を避けるかのような綺麗なジャンピング回避で、毛糸玉から飛び退いた。

「あぶにぇー・・・。まじあぶにゃいっつの。焦ったのにゃー・・・。毛玉の魔力恐るべしにゃー・・・。」

 額を拭いながら、高鳴る心臓を叩くアンブレラ。何とかして興奮を抑えようとしているのだろう。

「まったく。にゃーはこんにゃことしている暇わないのにゃ! そこ!そこの青年!ちょっとこっちくるのにゃー!」

「お、俺か?」

 アンブレラに声を掛けられた青年は、驚いたように自分を指した。先ほどまでアンブレラの奇行にドン引きして硬直していた所を引き戻されただけに、反応は鈍かった。

「そうにゃー。にゃーは、君に会いに来たにゃ! デンノスケ! 本名“デン・ゼンネン”!! 自分達の故郷である追放魔獣たちの安息の地を守るため生きる戦士族の勇者にして、他の地を探索してその国が自分達の土地にとって危険で有るか無いかを調べる、放浪の旅人よ!!」

「なんだその説明的ななが台詞はっ! つか、なんでそんなこと知ってるんだ?!」

 古典的な平手突込みを入れる青年。ダメージは殆ど与えずに、パンッ、と言う小気味いい音だけを立てる当たり、相当なてだれであると言えよう。

 青年の名は、デン。大まかな説明は、アンブレラの言っている通りなので端折ろう。ぶっちゃけた事を言ってしまえば、作者がちょくちょく訪れるオリジナル系イラスト小説サイト様の看板息子さんだったりするのだが、話が生々しくなるのでその辺はあえて突っ込みを入れない方向で、後日リンクとか張ってみる方向でいってみようと思うのであった。

「にゃーっはっはっは! 君はこのレニスに来た時、異世界旅客者として入国管理局を通ったにゃ! そう言う面白い情報をにゃーが見逃すはずが無いのにゃー! ビバ情報か時代なのにゃー!!」

 断っておくが、レニス王国の情報管理体制は万全である。数多くいるプログラマやハッカーのなかでも、“人類の至宝”とか呼ばれるレベルの者が、Dr・フェネクスレベルの暇と手で書いたら二つ三つゼロを書き忘れちゃうような金を掛けてようやく侵入できるレベルなのだ。

「小真面目な性格が災いしたにゃー。お陰で今君は私やフェネクスみたいにゃ物好きに、徹底マークされてるのにゃー。」

「ぐっ・・・。」

 この世界の住人ではないデンの頭の中では。“情報化社会ってなんだろう。”とか、“二足歩行の猫って、ケット・シーじゃねーの?”とか色々な疑問が飛び交っていた。が、そんなことが同でもよくなるほど、“こんな連中にマークされてるのか。真面目に入国手続きなんてするんじゃなかったかも知れん。”と言う考えも首をもたげてきていたりしたのだった。

「ま、まぁ・・・今はそんなことはどうでも良い・・・。  俺もアンタに会いに来たんだ。機動鎧がどうとか。ッて言うんだろ?」

 デン自信も、アンブレラと接触を謀ろうとしていたのである。

「色々と聞き込みしようにも、人っ子一人いやしねぇ。 いるのは物騒な連中ばっかりだ。そこにアンタが近づいてきたみたいだったって言うからさ。」

 情報を持ち帰る事を優先にするデンにとって、聞き込みは大切な仕事である。しかし、いまのアクア・ルートは、“一般人は”歩いていない状態であった。 数年前まで戦渦にあったこの国の一般住民の退避能力は実に高いのである。

「にゃっはっはっは! そらー今は戦闘だらけで祭り見たいにゃ有様にゃ。誰も出てこやしないのにゃ〜。 誰だって、自分の頭の上に山を盆地にするような“移動島”がいたら、逃げ出したくもなるのにゃー。」

 頭上に浮かぶ移動島“イージス”を傘で刺し、高笑いを飛ばすアンブレラ。

「山を盆地・・・って、そんなに危険なのかアレ・・・!」

「そりゃそうにゃ。アレだけデカイのにゃ。バリアー、移動鎧、主砲に機関砲座。何でもおき放題にゃ。そうでにゃきゃー態々あんなでかいもん運用しないのにゃー。」

 目をむいて上を見上げるデン。自分達の土地を守る。それが至上命題であり、脅威になりそうな土地の情報を集めるデンにとってみれば、こう言う類ものもは危険物意外には見えないだろう。

「にゃ。 そんなことよりも、今日君に会いに来たのは、装備をプレゼントしようと思ってるからにゃ。」

「装備?」

「そうにゃ。言ってみれば君は威力偵察しに来ている様なもんだにゃ? 戦いながら敵の規模や装備を肌で感じるのが威力偵察にゃ。その君が装備が整わない状態でこの国をうろつくのは、非常に危ないにゃー。」

「それは・・・俺も思ってるけど・・・。 この世界はビックリ人間が多すぎる・・・。」

 額に汗とか浮かべながら唸るデン。実際はそんなにビックリ人間は多くないのだが、今この街の惨状を見ればそう思わずには居られないだろう。

「にゃっはっは! まぁともかくにゃ。僕は武器職人でにゃ。君に色々と装備を託す事にしたのにゃ。」

「本当か? しかし・・・金は無いぞ?」

「にゃ? そんなもんいらにゃいのにゃ。決まってるにゃ。」

「決まってるのか?!」

 ビックリしたような顔をして言うアンブレラに、たじろぐデン。

「にゃーは金じゃー動かないのにゃー。動く目的はただ一つ!」

 ピシリと指を立てて、背筋を伸ばすアンブレラ。

「にゃーの武器を使いこなせる人物にそれを渡す事のみ。にゃ。」

 突然真剣な顔つきで言うアンブレラ。それまでのふざけた様な雰囲気はまるで掻き消え、周りさえも凍てつかせるような意思を持ったその声は、聞いていたデンも思わず息を呑むほどであった。

「ま、とにかくだにゃ。ここじゃ話しづらいから、あそこにいくのにゃ。」

「あそこ?」

 訝しげに尋ねるデンに、アンブレラは背中を向けて歩き出しながら答えた。

「そう、あそこだにゃ。 スラムよりも薄汚くて危険。テメーの腕だけが物を言い、合法違法、様々な物が売り買いされるモノホンの“スラム”。 “冒険者横丁”だにゃー。」

「ぼ、“冒険者横丁”ぅ?」

 さっぱり分からないという顔をするデンを横目に、ニヤリと笑いズンズンと進んでいくアンブレラ。 彼が見かう先は、港の倉庫街。Dr・フェネクス等冒険者たちが住まう一区画。アンブレラの言葉通り、腕っ節が物を言い、冒険者たちが集めてきた古今東西の物品が流通する場所。“冒険者横丁”なのであった。

「なるほど・・・そこのほうが俺には合いそうだ。」

 ボソリと呟くデン。 ニヤリと口端を吊り上げると、「分かった。付いてくよ。」と、アンブレラの後ろに付いていくのだった。