博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 教育番組「楽しいアクアルート探訪」

「あ!! てんめっ! なに放送機材使ってやがるんだ?! ゴラ!」

「む。いかんね。放送局をジャックして居るのがばれてしまったと思うのだがね。」

「そのようです。私とした事が実際の放送内容と放送が予定されていた番組を入れ替えていた事に気が付かれたのでしょうか。」

「はっはっは。執事くんのハッキング技術は完璧だからね。そうそうばれるものではないと思うのだがね。」

「なにテメーでやったことばらしてんだよ?!」

「ディレクター!! 放送予定だった「お昼の生討論」と謎の番組が入れ替わって放送されてますよ!!」

「犯人は奴等だ!! フンじばってアクアルート港に沈めろ!!」

「まずいね。ここはダッシュで逃げるべきだと思うのだがね。はっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」

「まっちゃーがれこのボキャァァァァァアアアア!!!」

 

(誰も居なくなった画面に、ぬっと現れる長身の男。表情は一切無い。)

「・・・・・・おお。テレビカメラだ・・・。 ・・・・・・ピース。 ん?」

(落ちていた台本を拾い上げ、パラ読み。 数秒で満足したのか、元の位置に戻す。 そして、近くにあった機材を引っ張ってくると、何事も無かったかのように画面に向かう)

 

「やぁ。 今週も始まりました。“楽しいアクアルート探訪”。司会のレニス・スタッカートです。 ・・・・・・ピース。

 この番組は、レニス王国の交通の要。アクアルートを歩いて歩いて歩きつくして、時々はみ出したり飛んで行ったりぶらり途中下車してみたりする。そんな皆さんの楽しい探訪ライフをサポートしていく。そんな番組です。

 では早速、今日のテーマから。“困ったらこの人に聞こう。&この人には関わるなっ☆”です。」(終始完璧な無表情。真剣さすら漂う。)

 

「どんな街にでも、困ったらこいつを頼れと言う人はいるものです。そう言った連中の多くは、頼られないと逆切れをしたり、襲い掛かってきたりする事が有るのは皆さんご承知の通り。なかには頼りにされないと頭が割れるように痛くなり、“は、早く頼れよ! 頼ってくれよ! 頭が・・・頭が割れそうなんだよぉォォ!!”と喚きながら首を絞めてくる、頼られジャンキーなる人種も存在しているそうです。 みなさんもこう言う人を見かけたらボランティアのつもりで、何か頼ってあげましょう。道を聞くとか。

 こう言う困ったさんにかち合わないためにも、キチンと頼れる人物を紹介しよう。
まずは、この男だ。

“考察の魔術師” エルフ。男性だ。 ルクリアド・ハウンバルク。 一見どこにでも居る私服警官だが、その実、高等思考透視魔術や遠方知覚魔術、精神体実体化魔術式の集合体である“魔眼”を使う化け物だ。先の大戦では私も随分世話に成った。常に飄々として笑顔の耐えない物腰の穏やかな男で、体力的にも攻撃、防御魔法的にも一般人レベルでは有るが、その洞察力と推理能力は、サイコメトラーとあだ名されるほどだ。 こう言うと得体の知れない生物に聞えるかもしれんが、基本的には人好きのする良い奴だ。触れてほしくないであろう過去には絶対に触れんし、口も出さん。ただ、頼めば出来る限り力を貸してくれる事だろう。 もっとも。それはルクのメガネに敵えば。の、話だが。

“ミケキャット”ミケ・ラフロール。 性別不明。女らしいが。 高度に発展し、様々なモノが魔法制御になったこの時代。ウェブと呼ばれる魔子情報社会を渡り、魔法仕掛けの機械を操り、情報を盗み出す者達が居る。連中にとってみれば、工事用の機械を暴走させるのも、情報上の金銭を動かすのも朝飯前だ。 そんな連中の中でも、脳を直接端末と接続させたその道のプロフェッショナルの事を、ハッカーと呼ぶ。 そんな連中の中で伝説となっているのが、ミケと名乗り常に猫のアイコンを使っている人物。通称を“ミケキャット”。 どう言う訳か非常に耳が早く顔が広いこの人物は、駆け出し中の冒険者に“ウェブでは出来ない仕事”を振ってくることが多々有る。最近ではそれを専門にしているらしく、依頼人と冒険者の橋渡しを生業にし出したらしい。 もし冒険者で、仕事を欲しているのであれば、端末を持ってみる事をお勧めする。仕事に炙れて暇をしているとき、突然猫の形をしたアイコンから、コールを受けるかもしれない。 勿論。伝説のハッカーが目をつけるだけの実力があれば、だ。

“雨傘の”アンブレラ・レインブーツ。 男だ。 長靴にこうもり傘。服装はぴっちりと着込まれたペンギンと言う出で立ちで現れる、二足歩行の黒猫。それがアンブレラだ。猫族と言う、思考力に優れた種族である彼は、“魔剣”と呼ばれる特殊な武具を作る事にかけては右に出るモノが居ないと言われる名工だ。Dr・フェネクスの盟友でも有る彼は、彼と同じくお節介焼きで快楽主義だ。 ただ、彼の傾向はDrのそれとは多少異なる。 一歩引いた位置から必要だと思ったときにだけ助言をし、頼られれば必要最低限の助力のみをする。成長していく人間を見るのが何よりも楽しい。と、いった具合だろうか。 そして、もしも彼に気に入られれば、名前に数字の付いた武具を与えられるだろう。 彼の作った武具で有名なものと言えば、近衛騎士団長ハウザーの“アシュラ・8(阿修羅重威斗)”だろう。これらの武具は、名に数字を冠されている事から“ナンバーズ”と呼ばれている。ちなみにDrの作ったものには全て色が入り、“カラーズ”と呼ばれている。

 

 ん。口調が戻ってしまった。・・・まあいいか。 次は、こいつ等には関わるな。だな。 どんな街にも、札付きの悪と言うのは居るものだ。肩だ当たっただけで骨折するような軟い体の癖に、喧嘩を売ってくる類の連中だ。 当たっただけで肩が外れたり骨折する相手に喧嘩を売ると言うのは、殺してくれと言うようなものがするんだが。どうなんだろうなその辺。 話がそれたな。 兎に角、世の中には関わっただけで物事を全て悪いほうにさそう者と言うのが居るものだ。関わらないに越した事は無いといえるだろう。次はその代表例を何人か上げるとしよう。

“Dr・フェネクス”無名の悪魔。 見た目の性別は男だ。 論外だ。腕に自信が有って、余程スリルを求めているか動物耳を付けた“萌え”キャラを目指すのでなければ、近づくな。・・・・・・“萌え”キャラ? ハウザーの仲間か?(それは燃えキャラです)

“魔弾の”ジェーン。 きっと女だ。 女性だな。 迂闊に近づくと噛み付かれるぞ。以上。

近衛騎士団一番隊隊長“イフリート・ザ・ダークナイト”ミレイ・クロセッカ。 近衛騎士団の一番隊隊長だ。 女性なのだが、これぞと言わんばかりの騎士だ。戒律に厳しく、己に厳しく、他人にも実に厳しい。 仕事熱心なのは良いし、ハウザーより真面目な騎士なのは言うまでも無いが、如何せん融通が効かない上に冗談も効かない。 この間城を抜け出そうとしたら、とうとうと王制に置ける王のあり方を説かれた。 途中で寝たら殴られた。王を殴るのはどうなんだろうな全く。

“白炎狼”テト・ウルフ。 男だ。 凶暴だ。狂犬と言って良いだろう。腹外空いていると人間にも関わらず言葉を前に拳か歯で答えてくる。 気が短いなんてレベルではないぞ。相手が強いと判断したら殴りかかるその習性は、どこの戦闘生物かと問いただしたくなるほどだ。ちなみに、近くに相棒であるガルシャラ・カーマインがいる場合は、安全だと言っていいだろう。飛び掛る前に止めてくれるからな。 しかし、彼が量産品の大量投入レベルの機動鎧ならば素手で粉砕する使い手であることにはなんら変化は無い。気を付けて。

 

 と、まあ、こんなところだろうか。まだまだこのアクアルートには、こういった“顔役”と呼ばれるその筋の案内人のような連中がわんさと居る。そう言う連中と関わるのは出来れば避けたいところでは有るだろうが、そう言う連中が居なければ、または関わらなければ、この街の、ひいてはこの国の本当の姿は見えて来ないだろう。 なにせアルベルトは優秀だからな。そう簡単に手の内は見せてはくれんだろう。奴が王になれば良いのに。 こういった連中とかかわり、表も裏も、アクアルート、レニス王国。しいては世界の造詣を深めていく。それはどんなに楽しい事だろう。

 それでは、今日はこの辺で失礼することにしよう。 また来週もお楽しみに。 司会は私。レニス王国国王。レニス・スタッカート。でお送りした。 ・・・・・・・・・ピース」(超真顔でピースサイン)

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 教育番組「社会科☆バンバン♪」

「やぁ! 画面の前のお友達、お元気かね! 私はDr・フェネクスこと、無名の悪魔おにいさんだよ! まあ、外見的にはお子様に見えると思うのだがね! その辺は勘弁して欲しいのだがね! 広い心で!

 では、早速番組をスタートしようと思うのだがね。 今日は、この世界がどのような仕組みで成り立ち・・・ぶっちゃけ世界設定の話をしようと思うのだがね!

 

 まずは国家と種族について話して行こうと思うのだがね。 元々、この世界では種族間争いや種族差別と言ったものは、極々希薄なのだね。 ハイエルフとドワーフが仲が悪いとか、ゴブリンは見下されるとか。ドラゴンだから無条件で強いなどと言った、他世界の常識はこの世界では一切通用しないのだね。 都会のマンションに引篭もっているハイエルフも居れば、土木工事で汗を流すドラゴン、それを顎で使う官僚がゴブリンだったりもするわけだね。 故に! この世界において、単一種族国家と言うのは、実に希少で有ると言える訳だね。 優秀であればスライムでも出世出来る。それがこの世界の国々の特長とも言えると思うのだがね。

まあ、もちろん。例外は有るわけだがね。

 話を続けよう。 もう一つ、この世界の国家について語る上で忘れてはいけないのは、時は既に、宇宙時代だと言うことだね。 そう。月はテラフォーミングされ、宇宙服無しで暮らせる衛星になり、隣の惑星、その隣の惑星。その隣の隣〜・・・と、言った具合に、生き物が暮らせるように改造された惑星は、両手では数え切れない数に及んでいる訳だね。それらには、母星でありアクアルートやレニス王国がある惑星“テラ”と同じ様に、無数の国家が存在する訳だね。 既に宇宙に飛び出していながら、星を統一する国家が存在しない。と言うわけだね。

 故に、どの国にとっても今一番の命題に成っているのは、国土の拡大。星統一。な訳だね。 国家にとって、広い土地とはそのまま力に繋がるわけだしね。人口、食物、資源。これらが無くては、お話に成らない訳だね。 特に今は、冷戦と呼ばれるほど、表面上は穏やかでも一触即発!のような国際情勢だからね。 国力を上げるためにも、何かしら理由を付けては他国を飲み込もうと、目をぎらつかせている訳だね。もっとも正面切って新緑戦争なんぞ仕掛けようものなら、あっという間にレニス王国を代表とする強国に潰される。故に、どこも身動きが取れない。と。そんな感じなわけだね。

 もっとも、それは高度に政治的な話のうえだけの話だね。基本的にはどの国も友好関係は良好で、世界中どこにでも旅行が出来るし、国民同士の感情も実に良好な訳だね。

 

 

 さてさて。次は、魔法について見て行こうと思うのだがね!

 魔法。コレには、様々な体系が存在するのだがね。 体内の魔力を使うモノ、体力を使うモノ精神力を使うモノ、それらに関係なく、別のエネルギーとして体力と同じ様に存在する魔力を使うモノ、自然界に存在する魔力を使うモノ、精霊から力を借り受けるもの。
その中でもさらに、呪文を唱えるのか魔方陣を書くのか突然力を振るえるのか。道具は使うのか使わないのか媒体は必要か書物による知識が必要か感覚だけで行使出来るのか。 形式を上げるだけでも限がないほど存在している訳だね。

 大量に有るこれらの魔法は、今はほぼ全てが解析され、学術として体系付けられている訳だね。古代の遺跡から発掘された古代魔法や封印魔法も、今や本当にポンコツとしか見られないほど、魔法技術は進歩している訳だよ。 先に話した、テラフォーミングにも、様々な魔法が用いられている訳だね。

 魔法の話が出たついでに、魔法によって動く道具の話もしよう。 皆は、テレビやインターネット、電話をご存知だね。使えなければこの番組は見れないわけだが。はっはっは。 これらは、実は私達の世界にも存在するのだね。魔法動力のものとして。 それどころか、魔法と言う技術はさらに進んでいるのだがね。

 一例を紹介して行こうと思うのだがね。 例えば。水に浮く船に、魔法を添付したらどうなるだろう。スクリューよりより効率的に水上を進めるわけだね。さらに、空を飛ばせる事も簡単だね。“フライト”系の魔法を行使できるように、仕掛けをつけてやれば良い訳だね。コレを応用した、現代魔法工学における最高の技術の結晶とも言えるのが、“移動島”だね。 文字通り、移動する島な訳だね。 大量の兵器を積み、島クラスの魔方陣を搭載した移動島は、まさに最高の戦力と言って良いと思うわけだがね。

 次の例は、皆大好き、機動鎧だね。 機動鎧。ナイトゴーレム。MD。様々な呼ばれ方をするこれらは、ゴーレムと呼ばれる魔法人形を、人が操縦するように改造したものな訳だね。 考えてみて欲しいと思うのだがね。 魔法で組まれたロジックと、人間。どちらが優秀な判断を下し、巨大なゴーレムを動かせるのか。そして、動かす人間は魔術師が良いのか。それとも歴戦の戦士が良いのか。 答えは言うまでもない訳だね。

 ロジックなんぞよりも人間。それも、戦い慣れた戦士のほうが数十段強い。

 その理論の元製作されだしたのが、今の機動鎧の走りになる訳だね。想像してみて欲しいと思うのだがね。強靭な体躯に、大量の添付魔法を施され、歴戦の戦士の頭脳を持つ、巨大な兵士を! これらは添付魔法により空をかけ、信じられないほどの神速で動くわけだよ! 兵器開発者として、これほど作っていて胸躍る兵器はない訳だね!

 さて。このように、宇宙戦艦どころか、ロボットのようなものまで存在するこの世界。 実に恐ろしい世界だね。 私としては古代魔法文明とか他の世界で言われているのは、今この文明のことなのではないかと思うレベルな訳だがね。

 

 

 では。今日のまとめと行って見よう!

 1種族差別ってなんですか?

 2魔法があれば宇宙にだっていけますよ。

 3魔法ならガン○ムだって作れます。

 と、今日はこんなところだね!

 次回は、個人兵装について、話して行こうと思うのだがね!

 では、最後に挨拶をしようと思うのだがね! 社会科〜・・・(タメ)

 バンバーン! 次回も見てくれると嬉しいと思うのだがね〜。はっはっはっはっはっはっはっは。」

博士の風変わりな研究と飯のタネ(26)

 “七海殺戮海賊団”旗船。 “ジェノサイド・ホエール”。

 大型の空中船で有るこの船は、船と耳にして一般の人間が思い浮かべる形を完全に逸脱してた。 見た目と言う点だけで言えば、その様相はまさに“鯨”。 鯨に鎧を着せたらまさにこうなるであろうと言う外見をした、鉄の塊であった。 装甲にはびっしりと様々な機能の魔術式が書き込まれ、仄かに蒼く輝いている。

 その名に恥じぬ戦闘力を有するこの船は、単体で宙に浮いているだけにも拘らず、まるでこの大空の主は自分で有ると言わんばかりに、その存在感と威厳を放っていた。

 そんな船が、今はアクアルートの上空を悠々と漂っていた。 その姿はさながら、獲物を探して回遊しているかのようだった。

 

「しっかしあれなのだ〜。世の中キチンとよい子は報われるように出来てるもんなのだ! たんまたまネットでフリーゲーム探してる時に、ボロモーケな賞金首の情報をゲットしてしまうとは!! コレはもはアタシとダーリンの愛の力としか言い様が無いのだ〜!」

 なぁ〜っはっはっは! と、イマイチ本気なのかわざとなのか分らない笑いを高らかに響かせて、“七海殺戮海賊団”団長にして、“ジェノサイド・ホエール”船長。“ガトリング”ミリー は、ガコンガコンと右腕のガトリング砲で壁を殴りつけた。

 “天使”とも、“悪魔”とも評されるミリーの外見は、黙ってさえいれば実に美しい少女に見えた。 黒髪に、キメ細やかな肌。そして、美しさのあまり、逆に見るものに恐怖を植えつけるほどに綺麗な翡翠色の瞳。 中性的な顔立ちは、見るものの心に様々な影響を及ぼし、魅了し・・・堕落させるほど艶かしいものであった。 “例えば悪魔が天使の顔をして現れるのは、珍しい事ではない” そんな言葉が有る。もしその悪魔がお手本にするとするならば、それはまさにミリーの外見であろう。そう言い切れるほど、彼女は確かに美しかった。外見だけならば。

 グラスランナー。草原を駆け巡り旅と冒険を故郷とする種族。 そのグラスランナーの特徴に外れず、ミリーの外見はまるで幼い子供のようであった。 身長は120cm前後で、顔立ち体付きは、そのまま人間の少女のようである。 が、彼女には大きな外見的特徴が一つあった。右腕の肘から先をガトリング砲に改造しているのである。そしてそれこそが、彼女が“ガトリング”と言う二つ名で呼ばれる由縁であった。

 美しいのかゴツイのか、いまいち分らないミリーの外見であったが、その性格性質。と言うか、ノリは・・・Dr・フェネクスに近いモノであった。

「いやぁ〜。もう、なんて言うか。チャンスってゆーのは意外とその辺に転がっているものなのだ〜! それを拾え上げられるのも人徳?! こーゆーのも船長としての資質の一つなのだ〜!!」

 独り言のような内容を大声を張り上げて言いながら、小さな体をくねくねとくねらせるミリー。その後満悦の表情を見る限り、周りの事は一切気にしていないだろう。

 ミリーが今居るのは、“ジェノサイド・ホエール”のブリッジ。一番後方で全体を見渡せる、艦長席だった。 むろん彼女の他にも、その場には沢山の乗組員が居る。 周りに沢山人が居るのが分っているのか居ないのか、ひたすら自画自賛しまくミリーだった。

 無論。乗組員たちは一人でギャーギャー騒いでいるミリーに迷惑顔だった。

「船長〜! ちょっと静かにしてくださいよ!」

 堪りかねたように言った一人の声がきっかけになり、他の乗組員たちも不満の声を上げ始めた。

「そうだそうだー! 今、近衛騎士団の移動島に睨まれてんだぞー! 真面目にやれー!」

「壁叩かないで下さいよ! 壁! 傷が残るんだから!」

「船長この間ウチがとっといたアイス勝手に喰ったでしょう?!」

「タダでさえ身長低いのにそんな重そうな帽子被ってたらますます縮みますよー!」

「うるせーのだぁ〜!!」

 子分の罵詈雑言に、一瞬も躊躇うことなくガトリング砲のトリガーを引きぶん回すミリー。その短気っぷりたるや、流石海賊といったところだろうか。 勿論、部下たちの取ってはたまった物ではない。 ぎゃー、とか、わぁー、とか叫びながら、ブリッジの中を逃げ惑う。

「何考えてんですか船長?! 俺たち殺す気ですか?!」

「計器やらなんやら壊れたら墜落だぞー!」

「副長! なんとか言ってやってくださいよ!」

 子分の一人が、ミリーの隣に立っている青年、副長に泣きながら訴える。 副長。つまり副船長で有るその青年は、どこと無くミリーに似た顔立ちをしていた。違いが有るとすれば、その身長と性別、そして、雰囲気だろうか。 青年の身長は、約180cmほどであった。グラスランナーのミリーとはかけ離れた身長である。表情は、ころころと変わるミリーのそれとは違い、冷たい無表情だった。 そのせいか、ミリーからは感じられない、神秘性のような、得体の知れなさが漂っていた。

 副長、こと、“シャムリース・クワイゼン”は、未だにガトリング砲を乱射するミリーに目を向けると、しばらく凝視。何事か確認するように頷くと、また元のように視線を前に戻した。

「空砲だ。」

「当たり前なのだ。大切な船の中で誰が好き好んでチャカぶっ放すかってーのだ。」

 しれッとした顔でのたまうミリーだった。

 まるでどこかの喜劇集団張りのヘッドスライディングを決めてずっこける部下たちだった。

「なーに考えてんだよこのアホ船長!!」

「アホ!! アホ船長!!」

「空砲でも十分ビビるは!! そもそも銃口を人に向けちゃいけませんって学校で習わなかったのか!!」

「やかましーのだ! そんなこと言ってる暇が有るならさっさと戦闘準備なのだー!」

 勇ましく腰に手をあてガトリング砲を掲げる船長。不敵な笑顔を浮かべ、その姿には半ば余裕すら窺えた。 が、子分たちは対照的に意気消沈した様子だった。

「無茶苦茶だぁ〜。 相手はレニス王国の近衛騎士団すよ? かないっこねぇ〜。」

「生きたまま臓器屋に解体されるよりも三百倍おぞましいめにあわされるんだぁ〜!」

「自生の句って季語入れるっけ?」

「なに諦めムード漂わせてるのだ?! あの“アッシュ”とか言う賞金首捕まえたら、一千万なのだ!! 一攫千金なのだ! ダーリンと一緒に温泉旅行なのだー!!」

「一千万で温泉旅行って、どんな豪遊するつもりだ?!」

「幾らジェノサイド・ホエールがド級戦艦だって言っても、相手は全長一キロの戦闘移動島よ?! 敵う訳無いじゃない!!」

 ぎゃーぎゃーと喚きあう子分と船長を眺めながら、シャムリースはボソリと呟いた。

「戦闘にはならん。この町の上空に居る限りは。ね。」

 その動きに、全員の動きがピタリと止まった。 一瞬考えるような顔になり、ぱーっと表情を輝かせる。

「そ・・・そうか・・・。考えてみれば連中、俺たちには攻撃できないんだ。」

「街を守るためなら何でもやる奴等だけど、だからこそ“その上に浮いてる戦艦が墜落するような事”は出来ない・・・?」

「ましてやて対艦クラスの砲撃をかますなんてことはもってのほかってか?」

 子分たちの言葉に、シャムリースはコクリと頷く。

「近衛騎士団に入電しろ。我々はあくまで賞金稼ぎだ。って。 レニス王国は“自分達に危害を加えないものならば拒まず”が国風だ。そして我々は、“レニス国籍の船は襲わない”。だから我々の船の補給や修理もこの国で行ってこれたのだろう?」

「今回の仕事は“海賊仕事”じゃなくて、“賞金稼ぎ”だしな・・・。」

「そらとぼけてる間に首ゲットしてトンヅラって寸法か!」

「もっとも我々が堂々と表に晒して置けるようなものでもないのも事実だ。はいそうですかとほうって置いてはくれんだろう。 それにレニスの宰相は何を考えているか分らん。そこそこ名の売れている我々を捕まえて、他の国との外交の材料にしかねんから、安心はできん。だが、行き成り落とされることが無いのはまず間違いない。」

 おお〜・・・。 と、子分たちの間でざわめきが起こる。ちなみに、戦闘も感心しているのかなんなのか。ぽかーんとした分っているのか分っていないのかイマイチ分らない顔をしていた。

「ちなみに。皆には黙っていたが、我々が船の倉庫にはあと二食分の食料しか残っていない。勿論金も無い。ここで賞金首を逃すと、次のカモを見つけるまでしばらく飯抜きだ。」

「・・・!」

 子分たちと船長の表情が、筆舌に尽くしがたい驚愕を浮かべた。 恐らく、コブラに噛み付かれてもここまでの表情は出来ないだろう。

「や・・・野郎ドモ!! こうなったら一歩もひけねぇのだ!! サクッと賞金首捕まえてコキャッと逃げて、とっとと美味しいご飯をモッサリいただくのだぁぁ!!!」

『おおぉぉぉ!!!!』

 ミリーの言葉に、地響きのような大声で答える子分たち。 食の力とは恐ろしく偉大である。

「ぜってー肉買って帰るのだ! 肉!! 明日への活力なのだ!!」

「にーく! にーく!!」

「ウチ、ベジタリアンなんですけどー!!」

 思い思いに叫びながら、自分の持ち場にダッシュで戻っていく子分たち。

 そんな彼等を眺めつつ、実際は砲撃や機動鎧での攻撃はしないまでも、何かしらのアクションはすぐにでも起こすであろう移動島を睨むシャムリース。 が、「まあ、なんと無かるだろう・・・。」と呟き、視線を逸らす。彼にとってもご飯が無いのは一大事なのであった。

「じゃあ、早速行って見るのだ!! 捕まえに行く連中! へましたらおしりぺんぺんなのだー!!」

 元気良く叫ぶミリーの後に続き、シャムリースの指示が飛ぶ。

「機動鎧、水中戦用以外を全機出撃。 散開して首を捜せ。 首以外との戦闘は厳禁。何があっても街と一般人だけは傷つけるな。騎士団に袋叩きに会いたくなかったらな。 船は微速前進。 街上空を旋回しつつ、いつでも全速で逃げられるようにエンジンを暖めておく。」

『イエス・サー!』

 子分たちの返事に、満足気ににやけるミリー。が、子分たちの返事がシャムリースに対するものなのは言うまでも無い。

 ちなみに、海賊団の名前の由来は・・・“艦長がカッコイイと思う単語をくっ付けた”であった。

博士の風変わりな研究と飯のタネ(25)

「Dr。面白い情報を弟たちが拾ってまいりました。」

「む。聞かせてもらおうと思うのだがね。」

 モニタを楽しそうに眺めながら、Dr・フェネクスは執事に言葉を促した。

 Dr・フェネクスが見ているモニタに映っているのは、アクアルートで今行われている戦闘の数々だった。 この町には、軽犯罪防止用に、様々な所に監視カメラが設置してあった。 その開発や設計には、様々な技術者が参加していた。その中の一人がDr・フェネクスであることは言うまでも無い。 無論、そんな面白そうなものに細工をしないDr・フェネクスではない。

「アクアルートの中で起こる戦闘は、子供の喧嘩からストリートファイト! 機動鎧戦から超越者戦まで全て私のコレクションとなるのだよ!! はっはっはっは!」

「宜しいでしょうか?」

「うむ。興奮してしまったようだね。報告して欲しいと思うのだがね。」

「はい。 私達が追っている賞金首“アッシュ”に、個人的に賞金をかけた方がいらっしゃるようです。 個人賞金首会社のHPで、“生かして、一切傷つけず”を条件に一千万。 依頼人はシークレットとなっていますが、信頼度は五つ星となっています。」

 それまで、じっ、とモニターを見入っていたDr・フェネクスだったが、執事の報告にユックリと顔を動かした。視線を天井に向け顎に手を当てると、表情を真剣なものに変える。

「ほう。なるべく名を出さずに捕まえたい。と言うことだね。その額を出していると言うことは、自分の手ごまを動かすだけでは我慢が出来ないと言うことなのだろうと思うのだがね・・・。」

 額が額だけに、人一人が賞金をかけて居ると言うより、ドコゾの大企業か何かが“目的”があって金を出している可能性が強い。と、Dr・フェネクスは判断した。 確かに世の中には珍しい種族をコレクションしていたり、奴隷目的で人を捕まえようとする輩も居る。しかし、それにしては事をおおっぴらにし過ぎている。そう言う手合いは、往々にして自分の子飼いのものに始末を付けさせたがるものだ。 生かして捉えろと言うお題目もある以上、うらみ辛みの類でもないだろう。 となると。“アッシュには一千万の価値がある”と判断している、手勢が追うのだけでは待ちきれないほど逼迫した“何らかの組織”が居ると言う事にならないだろうか。

「国ではなく、匿名性の高い個人賞金首会社に掲示を依頼・・・。 彼を追っている理由が知りたい所だね。追う相手を知りもしないで捕まえるというのは、私としては実に気持ちの悪い事だと思うのだがね。」

「わたくしもそう思いまして少し調べてみたのですが、彼に特別な所は今のところ見つけられませんでした。 試しに監視用に路上に設置されている装置を使って体をスキャンしてみたり、出生・生い立ちを追って見たりもしたのですが、特別変わったところは見当たりませんでした。強いて言えば・・・一つだけ。」

「ほう。なにかね?」

「と・・・言っても、コレは彼の種の方には、珍しい事ではないのですが。 “黒の”。“黒の”トレット・レラルム様と接触されたことが有るようです。」

 トレット・レラルム。その名前を聴いた瞬間、Dr・フェネクスは眉間に深く皺を寄せた。

「トレット・・・。あの童顔で事あるごとにその笑顔で世の女性陣を虜にして、それはもう恐ろしい勢いで追い掛け回されている。彼かね?」

「はい。本人にその気が無いのに何故かモテてモテてモテまくり、挙句男性にすら好意を寄せられて引きつった顔で逃げ惑う、おおよそ超一流の冒険屋にして魔術と格闘術の権威には見えない外見で、もう“青年”と呼んで差し支えない年頃なのにもかかわらず性別不詳年齢不詳、ある人物曰く、“天使が居たらまさにこんな姿だろう”と言わしめた、彼の方でございます。」

「むう。破壊的で一撃必殺の打突を基礎であり奥義とする“魔闘士”で有りながら、ベイビーフェイスで天然の女垂らしとまで呼ばれた彼と。」

「あまり関係は無いだろうとは思うのではありますが・・・。」

「私もそう思うのだがね。兎に角気にはなるね。もう少し掘り下げて調査して欲しいと思うのだがね。コレは感なのだけれども、彼がこの街に付くまでの間に通ったルートを特に重点的に調べてみて欲しいと思うのだがね。」

「了解いたしました。仰せの通りに。」

 画面の中で、執事は恭しく頭を下げる。

「む。そうそう・・・。」

 画面から消えようとする執事だったが、Dr・フェネクスは片手を上げて呼び止めた。カタカタとキーボードを叩くと、ウィンドを二つほど開く。

「上空に居る“七海殺戮海賊団”が気になるのだがね。カメラが無くて戦闘が見れないのだよ。出来れば監視用のカメラアイをばら撒いておいて欲しいと思うのだがね。」

「は。了解いたしました。例の“ウサ耳回転式監視カメラ”のテストをする事と致しましょう。 しかし、件の方々は近衛騎士団の移動島に狙われているのでは? カメラが巻き込まれる恐れもあるのではないかと・・・。」

「むう。確かに美味くは無いのだがね。他に良い方法も思いつかないからね。 新作カメラを失うよりも、あの二つの空中戦を見逃す方が私には衝撃が大きいと思うのだがね。 それに、近衛騎士団のことだからね。海賊船と町の上でドンパチする事は無いだろうと思うからね。何らかの方法で海上に引っ張っていくだろうから、町の中のカメラでは見れないと思うのだがね。」

 難しそうな顔で唸るDr・フェネクスに、執事は人差し指を立てて提案をする。

「如何でしょう。ここは一つ、Drも機動鎧で出て見るというのは。」

「ほう?」

 Dr・フェネクスは興味を示し、顔を執事のほうに向ける。

「機動鎧“パーフェクト・パープル”でしたら、無音不可視運行が可能ですし、モニタリングの方もこの研究所を介してリアルタイムに可能です。なにより、大迫力の戦艦戦、機動鎧戦が目の前で見ることが出来るかと。」

「ふっふっふっふっふ・・・はっはっはっはっは!!」

 執事の言葉に暫くキョトンとした顔をしていたDr・フェネクスだったが、突然堰を切ったように笑い出した。 笑いながら椅子から立ち上がると、芝居がかった仕草で上に向かって大きく両手を広げ、胸を反らせてさらに大きな声で笑い声を上げた。

「そうだね! その通りだね! ここまで派手になった以上私もモニタ越しで見ているだけでは我慢できないと思っていたところだよ! 我が愛機“パーフェクト・パープル”!! 今使わずして何時起動するというのかと言ったところだと思うのだがね!!」

 顔をにやけ笑いを浮かべると、Dr・フェネクスはチャキリと眼鏡を押し上げ、モニタに背を向けて歩き出した。

「早速出撃準備を整えておいて欲しいと思うのだがね。」

「了解いたしました。 では、ジェーン様と英児様、“二十日鼠”の方々に、ガルシャラ様、テト様へのご連絡はいかが致しますか?」

「ふむ。そういえば私は連絡役だったね。なに、“パーフェクト・パープル”の機能があれば幾らでも通信も援護も可能だと思うのだがね。 ・・・・・・ん? そう言えば、ジェーンと英児の通信機は、壊れていたと思うのだがね?」

「は。そのせいで今、二十日鼠の方々と戦闘を開始しようとしているようです。どうやら利害が一致して。ジェーン様英児様 対 “二十日鼠”の方々と言う構図に成っているようです。」

「うむ。それはそれで面白そうな展開だね。ある意味良くぞ壊れた通信機と言った所だと思うのだがね。 む。そこには報告は入れなくても良いと思うのだがね。特別私の位置が変わったからといってどうなるものではない訳だしね。」

「は。では、ガルシャラ様、テト様にはいかが致しますか?」

「彼は今ハウザーと交戦中だったね。此方には知らせておいて欲しいのだがね。 テトには知らせは不要だね。気にも留めないだろうからね。」

「了解いたしました。 全てDrの思いのままに。」

 深く頭をたれる執事に背中を向けたまま、Drは歩を進め始めた。楽しげなにやけ笑いを顔に貼り付けながら、Drは考えをまとめるように一人ごちっていた。

「たった一人の少年にかけられた莫大な賞金。それを追うはずにもかかわらず、いつの間にか矛先を互いに向け合う賞金稼ぎ達。ついには指折りの都市であるこのアクアルートを蹂躙するほどの騒ぎに発展した戦闘の数々・・・。 戦うは。小銭、意地、プライド、およそ一般人が命を張るようなモノでも無いもののために、命がけで戦う“冒険屋”、“傭兵”、“戦士団”、“海賊”、“近衛騎士団”。 果たして最後に笑うのは? そして、賞金がかけられた理由とは? いよいよ舞台は・・・。」

 Dr・フェネクスは手を上に突き上げて、パチリ、と、指を鳴らす。 そして、実に実に楽しそうに、口の端を吊り上げた。

「クライマックスだと思うのだがね。」

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 多くなってきたから整理整頓。

 “Dr・フェネクス” 無名の悪魔 ・ 冒険者にして動物耳大好き武器職人。高笑いしながら裏で現状を悪化させるべく蠢く類のバカ。

 

 “魔弾の”ジェーン ・ Drの弟子にして冒険屋。自分の利益と生き方(スタイル)を貫くためなら平気で機動鎧を持ち出すバカ。

 

 新田 英児 ・ 何の変哲も無い世界からトリップしちゃった主人公境遇の癖に、全く主人公っぽい事しないで暴れまくる一直線バカ。

 

 アッシュ ・ ある冒険屋に憧れて都会に出てきたら何故か賞金首になってた可哀相な子。誰が何の目的で賞金をかけたか良くわかんない。“車を買える賞金首”から、“豪邸の立つ賞金首”にランクアップした。オメデトウアリガトウ。

 

 “城落しの”ガルシャラ・カーマイン ・ 基本常識人。だけど強い。でたらめに強い。普段は相棒(テト・ウルフ)が先に暴れるから理知的に動くけど、暴れだすと手に負えないこまったちゃん。

 

 “白炎狼”テト・ウルフ ・ ガルシャラ・カーマインの相棒。戦闘本能むき出しで常に腹を空かせてる凶悪生命体。でも、超至近距離攻撃魔法の研究で五歳で博士号とかとってる天才。 紙一重の真ん中くらいのこまったちゃん。

 

 “白銀の重戦車”ハウザー・ブラックマン ・ 近衛騎士団長なのに王様殴るこまったちゃん。自分の騎士道“のみ”に忠実で、後はどうでも良い類のバカ。

 

 “インビジブル”マービット・ケンブリッジ ・ 近衛騎士団副団長。作戦から指揮、組織管理から登用まで幅広くこなし、どこからとも無く状況を聞きつけて手を付ける黒幕さん。殆どの物事を手の内で転がしてるけど、団長がかかわると全てをブレイクスルーされる可哀相な子。団長ラブ。ラブじゃなくてライクの方ね。勘違いはだめよっ☆