博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

「ふむ・・・君は魔法の才能が有るようだね。と言うか、既に魔法を使っているのだろうと思うわけなのだがね。」

「まほうってなんだ。」

「うむ。君が普段している発火や、物質透明化。衝撃添付などだね。」

「あ〜。」

「意味がわからないかね? 要するに、その辺のチンピラをボコすのに使っている力の事だと思うのだがね。」

「あぁ〜〜。」

「無意識で使っているようだね。あれは、普通の連中にはなかなか仕えない力なのだよ。特別とまでは言わないが、珍しい力ではあると思うのだがね。」

「ちから。」

「うむ。力だね。」

「そうか。」

「ただ、やり方次第でもっと君の力は強くなると思うのだがね。」

「おまえもつかえるのか。」

「うむ。それなりには使えると自負しているのだがね。 その辺の魔術師には負けないと思うのだがね。教えて欲しいかね?」

「おしえるな。」

「盗むかね?」

「あ〜。」

「はは・・・。では、盗まれないように気をつけようと思うのだがね・・・。」

「ぬすむ。」

ハウザー&マービット ハウザーの過去なのよ

 ハウザーにも、人並みに幼少期と言うものがあったりした。まだ幼かったハウザー少年は、同じくらいの歳の貴族や騎士の子供たちとはウマが合わない・・・と言うか、価値観が全く違う上に。「お高く留まった態度が気に入らない」と言う理由から、ハウザーが子供たちをボッコボコにしてしまうため、あまり遊ばなかった。 ハウザーの玩具・・・もとい、遊び相手は、大抵の場合彼の父が持つ領地にすむ、農民の子供たちだった。

 ハウザー。六歳の。

 当時。既に年上のガキ大将やらを拳でねじ伏せ屈服させ、複数のグループの頂点に君臨していたハウザーは、昆虫採集に熱中していた。

 カブト虫、トンボ、蝶、ジャイアントブル、かまきり、グリズリー、ゴブリン。様々な昆虫を採取しては、他の子供たちの取った無視と戦わせたり、サイズを競ったりして楽しんでいた。 ちなみに、ジャイアントブルとはハウザーが暮らしていた地域に生息する、野生の牛の一種である。非常に巨大、かつ獰猛で、体当りで木をへし折る事もあった。グリズリーとは、これまた大きなクマの事である。ゴブリンは、凶暴な亜人の一種で、ハウザーの暮らしている地域のものは、特に知能レベルが低く、凶暴な猿といった感じだった。 勿論、ジャイアントブルもグリズリーもゴブリンも、昆虫ではない。 だが。ハウザーは気にしなかった。当時のハウザーにとって、人間以外の動くもの全てが、採集の対象になりえたのである。

 農民の子供たちはそんなハウザーに恐れを通り越し、ある種尊敬の眼差しを向けていたのだった。 そんな、ある日の事である。

 

 

「・・・考えてみたら、俺一度もカブト虫ってとったことねーぞ・・・?」

 仲間達と薪を囲みながら、ハウザーはまるで心理にたどり着いたような顔でそう呟いた。 そう。ハウザーはジャイアントブルやグリズリーは取れても、まともに“昆虫”を採集したことが、一度も無かったのだ。

「そうだよ。俺カブト虫とったことねーよ。 ゴブリンとってる場合じゃねーよなぁ。カブト虫の方がカッコイイしよぉ。」

 ぐったりと動かなくなっているゴブリンが小山のように積まれている様を眺めながら、ハウザーはうんうんと頷く。ちなみに、ゴブリンたちはちゃんと生きていたりした。父親からの言いつけで、昆虫は捕まえた後、逃がす事にしているからだ。キャッチ&リリースである。

「な、なにいってるんですかハウザーさん。ゴブリンの方がつよいじゃありません!」

 一人の少年が、引き攣った笑顔でハウザーに言った。体格も身長も、どうみてもハウザーより年上・・・8歳といった所だろうか。しかし、さん付けであった。この場には少年少女が20ほど居たが、ハウザーを呼び捨てにするものは誰ひとり居なかった。別に強制しているわけではないのだが、何故かみんなハウザーの昆虫採集の姿をみると、さん付けになるのだった。

「強い弱いはかんけーねーんだよボケ!! かっこいいかカッコよくないかの話だろうが!!」

「ひ、ひぃぃ!! す、すいません!!」

 ビビって腰砕けになる少年を無視して、ハウザーは特性の虫取り網を握りしめた。金属製の物干し竿に、ドラム缶を輪切りにした物を取り付け、工場からかっぱらってきた金属ワイヤーで作った網を取り付けたものである。

「決めた!! 俺は今からカブト虫だけを取りに山に入る!! カブト虫が取れるまで、水も飲まねーし飯も喰わねー!! 山からも下りねーぞコラ!!」

 威嚇するように山を睨みつけるハウザーに、周りの子供たちもそれぞれの得物を手に立ち上がった。だが・・・。

「お前たちは残れ。」

 後ろも見ずに言ったハウザーの一言に、少年たちは凍りついた。

「は、ハウザーさん? 何言ってるんですか!」

「そうですよ! 山に行くなら、人数は多いほうが良いですって!」

「大勢の方が早く見つかりますし!」

「俺たち、足手まといにはなりませんぜ!」

 ハウザーを気遣う声に、しかしハウザーは首を横に振る。

「カブト虫は強敵だ・・・。考えてみたら、俺は今まで何度となく見かけはしたものの、追ってる最中で逃がしちまってる。 恐らく、ゴブリンより狡猾で、ジャイアントブルよりも早く、グリズリーより力強い昆虫なのだろう・・・。」

 いねーよそんな昆虫。つか、カブト虫じゃねーよ。 と、誰もが心の中で思った。しかし、誰もそれを口にしなかった。ハウザーがアホなのは、全員百も承知だったのだ。

「敵は強力・・・だからこそ、俺は一人で行く。 それを取った時、騎士にまた一歩近づける気がするからだ。 兜って言うくらいだしな!」

 やばい・・・。 妙に気合いの入ったハウザーの姿に、少年たちは冷や汗を流した。別にハウザーを心配しているわけではなかった。いや、勿論心配はしているのだが、こうなったときのハウザーは機動鎧でも持ってこないと倒せないことを良く知っているから、特に気にする必要は無いことを良く知っていたのだ。 この場合心配なのは・・・ハウザーが入っていく山の方なのであった。

 硬直する少年たち。その目の前に、唐突に一匹のカブト虫が飛び出してきた。 餌を求めて飛んできたのか、フラフラと森の木々を縫い、少し広くなったハウザーたちの居る場所に寄ってきたのだ。

 突然の敵手の出現に、ハウザーは表情を険しくした。まるで親の敵でも見るかのような表情を作ると、裂帛の気合いと共に網を振るう。

「くらぇぇぇえ!!!」

 ブオン!!! と、まるで大木でも振るうかの様な音を上げて、網が旋回する。が、すんでの所でフラフラと舞い上がったカブト虫は、するりと網を避けてしまった。 勢い余った網は近くの木にめり込むと、メシメシと音を立てて幹の半分ほどにまで食い込んでしまった。

「ち・・・!まだまだぁ!!」

 力任せに網を木から引き離すと、ハウザーは再度、渾身の力を込めて網を振るう。が、今度は地面すれすれに急降下したカブト虫を追いきれず、ざっくりと地面を抉る結果に終る。

「う、動きが追いきれねぇ・・・!」

 愕然とするハウザーを余所に、カブト虫はハウザーに背を向け、ぶ〜んと森の中に逃げて行ってしまった。 網を地面から引き抜いていたハウザーは、その隙に自分から少し離れてしまったカブト虫を見失っていたりした。 ちなみに、距離はまだ4mも離れていない。

「ど、どこ行きやがったあのカブト虫!! くっそ! ゼッテー見つけてやる!!」

 悔しそうに唸るハウザー。 そして、きょろきょろとあたりを見回すと、カブト虫とは正反対の方に向かって、全力疾走で走り始めた。

 そんなハウザーを、全くリアクションが取れないまま見送った少年たちは、がっくりと肩を落とし、溜息を付いた。

「でたよ・・・ハウザーさんの悪い癖・・・。」

「ああ・・・。あの人は、逃げるものには絶対に追いつけないんだよなぁ・・・。」

 そう。ハウザーには妙な所があった。 自分に向かってくるものに対しては、超絶的な力を発揮するのにも拘らず・・・自分から逃れようとするものを追う事に関してはからっきしなのである。 少し前、ハウザーは寝室で寝ていた自分を刺した蚊を叩こうとして、三十分近く格闘。結局、蚊を潰せぬまま、自分のベットをぺしゃんこに叩き潰したりしてた。 他にも、蝶を追ってクマを。クワガタを追ってゴブリンの群れを。バッタを追ってロック鳥をボコボコニしたりしていた。 昆虫を追っている途中で襲ってくるモンスターは悉く撃退するものの、肝心の昆虫、つまり、“自分から逃げようとするもの”には、どうしても手が届かないのであった。

「ま・・・つっても、ハウザーさんのことだ・・・きっと捕まえて、すぐに戻ってくるさ。」

「そうだよなぁ。 今までが異常だっただけだよなぁ。あの人、無茶苦茶運動神経良いんだし。」

「町に戻って、食い物の用意でもしときますか。」

 少年たちはそう決めると、火の始末をして町に戻る事にした。何だかんだ言って、少年たちはハウザーの事を信じたのである。だが・・・。

 ハウザーは一週間後。空腹と乾きで地面に転がっている所を、父の“ハウロス・ブラックマン”によって発見されるのであった。 そのときハウザーの周りには、まるで小山のようにモンスターたちが積み上げられていたという。そして、救出された時ハウザーは一言。

「か。カブト虫・・・カブト虫はどこだ・・・。」

 と、呟いたという。 そう。このとき、彼はまだ、カブト虫を捕まえていなかったのである・・・。

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 Drの人物紹介。

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ハウザー・ブラックマン(白銀の重戦車)

種族:人間(と、思われるがその規範からは逸脱)

性別:男(寧ろ雄と言った方が良いような気がするのだがね)

生年月日:コークコクロ暦46年 十月十日(暦は彼の出身国のものだね 共用ではないのであれなのだが、年齢は28歳だね)

出身地:バルキレート帝国ブラックマン領

髪:角刈り。茶色に近い金髪。(寧ろ、黒髪を金髪に染めたといった方が説得力のある色だね)

目:三白眼。目つきは、過去に相手が店員かどうか悩んで見つめていただけで、強盗だと思われるほど悪い。

身長体重 身体的特徴:身長二m二十cm 体重百二十キロ。(巨漢 ガタイもいい。左腕に甲冑を、右腕に機動鎧を呼び出すための召喚陣を書き込んでいる 白彫りであるため、普段は見えない)

職業:騎士

趣味趣向:騎士 過去ど田舎の一部隊を指揮していた時代、暇に飽かしてゲームをやりまくっていたため、今でも得意。特にトレーディング戦略カードゲーム“戦士たちの挽歌”は、プロライセンスを持ちトーナメントに出場するほどの腕を持つ。

 

 

 様々な異名を持つ、レニス王国王立騎士団騎士団長殿なわけだがね! 彼の指揮する騎士団は、人数こそ約3000と小規模だが、その錬度や一人一人の能力たるや、他の国の30000の軍勢に匹敵すると言っていいと思うのだがね!

 彼個人について語らせてもらうとするならば、特出すべきは彼の行動理念だね! 彼独自の騎士道。“騎士たる者、己にパンを与えてくれる領民と領地を命に代えても守らなくてはならない”を徹底的に貫き、そのためには手段をあればず戦い、時には国王をも蹴倒すと言う徹底振り! まさに騎士の鏡だと思うのだがね! 忘れてならないのはその戦闘力!伝説の勇者と言う例えが有るが、彼はまさにそれだと言って良いと思うのだがね! もっとも、彼本人も、そして回りも。彼をそうは評さないだろう。彼はあくまで、ただの“騎士”。領民を守る、絶対防御盾なのだからね・・・!

博士の風変わりな研究と飯のタネ(19)

 土煙のなか大見得を切ったハウザーに反されたのは、残りの機動鎧全機によるマシンガンの一斉掃射だった。

「はぁ!! 豆鉄砲幾ら撃ったって効きゃしねぇ!!」

 ちなみに。直径一センチ以上の弾丸を豆鉄砲とは言わないので、あしからず。 しかし、ハウザーにとって“直径一センチ。音速を超えて迫る弾丸”は、確かに“豆鉄砲”にも等しかった。

 両手に持った一対二本の槍をくるりと指先で回すと、体を後ろにそらし・・・まるで削岩機にような刺突を繰り出した。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララララララァァァァァァ!!!」

 あまりの突きの激しさに、腕が霞んで見える嵐のような突き。 だがその一突き一突きが、まるで吸い込まれるように正確に飛来する弾丸を貫き落とす。 片手で1.8mにもなる鉄の塊を振り回すその腕力もさることながら、一発一発の弾丸を見切るその動体視力は、もはや人間の域を越えていると言っていいだろう。

 完全に人間の規範を逸脱したその動きは、何も彼が身にまとう甲冑によるものだけではない。ハウザー自身が、既に人間の限界域を超越しているのだ。

 そんなハウザーの様子眺めながら、パチパチと手を叩く少年が居た。 眼鏡を掛け、頭に猫耳のカチューシャをセットした少年。Dr・フェネクスである。

「ふむ。まさに“超越者”だと思うのだがね! 人にして人の規範を超えた男を前に、人類の業がどこまで通用するのか! ああ、心が踊るのだがね!」

 ハウザーがそんな人外な力を発揮している様子を、Dr・フェネクスはモニター越しに実に楽しそうな笑顔で眺めていた。 機動鎧のカメラが、ライブの映像をDr・フェネクスに届けてくれているのだ。

「だが、これでは埒が明かないと思うのだがね! ここは捨て駒覚悟で、接近戦に持ち込もむべきだと思うわけなのだがね・・・。 勝率が・・・否!!」

 Dr・フェネクスはまるで自分を鼓舞するように声をあげると、力強くコントローラーを叩いた。 その表情は実に楽しげで、まるで新しいイタズラを思いついた子供のように輝いている。

「男と男の勝負に駆け引きなど不要! 真正面からぶつかって行く事こそ冒険者の誉れ! 見事玉砕して見せようと思うのだがね!!」

 無論、実際にぶつかって行くのは、操縦しているDr・フェネクスではなく、“操縦されている機動鎧の中に入っている人たち”である。 勿論、中の人たちは必死になって止めてくれるようDr・フェネクスに御願いしているのだったが・・・マイクを切られているため、情けない映像がモニターに映し出されるだけであった。哀れとしか言い様が無い。

 Dr・フェネクスの入力が終ると同時に、機動鎧が動き出す。 左右に半数ずつ分かれると、それぞれ背中にマウントしていた戦斧を構えた。 一連の流れるような動きで行われたその動作は、そのまま攻撃にも繋がっていた。 前のめりに倒れるような挙動で斧を引き抜き振り上げた一機が、一直線にハウザーに斧を振り下ろす。20m以上離れたその間合いをたったの一歩で詰めるその動きは、まるで円熟した戦士の業だった。実際それは戦闘技術の一つで、重たい得物をを扱うための技術の一つだったが、並みの機動鎧乗りでは出来ない動きだ。Dr・フェネクスが無理矢理コマンドを入力して取らせた動きである。

 戦斧の質量と、機動鎧自体の突進力。 その二つが合わさり、機動鎧の加速は凄まじい物になる。一瞬にしてつく加速は、実に三百キロを超えていた。。 しかし・・・。

「シャラクセェ!!!」

 せせら笑うように口の端を持ち上げると、ハウザーは頭上で槍をクロスさせた。直後、その真上に機動鎧の戦斧が叩き込まれる。

ゴォォン!!!

 まるで鉄槐を棍棒で殴りつけたかのような鈍音が響き、再び土煙が上がる。機動鎧の総重量+戦闘斧の重量+加速度の一撃である。 まともに喰らえば、例えば高層ビルとてへし折れる破壊力が篭った一撃だ。 まともな人間が喰らえば、肉片一つ残らないであろう攻撃である。

「そんななマクラじゃあ、木も切れねぇぞゴラァ!!」

 土煙の中から、腹に響くような声が上がる。 それと同時に、ギィィィィィン!!! と言う、とてつもなく激しい振動音が響き渡った。 そして、その音源を中心に円心状に蜘蛛が晴れる。 そこに見えたのは。交差させた槍でガッチリと戦斧を受け止めたハウザーの姿だった。

 足元の地面はひび割れ、くぼみ、まるでクレーターのようになっていながらも、ハウザー自信の鎧には傷一つ付いていなかった。 それどころか、窪み、悲鳴を上げているのは、機動鎧の戦斧の方であった。

 己の丈と質量を軽く上回る巨大な斧を受け止めた槍は、細かく振動し、キィィィンと言う甲高い音を上げていた。戦斧に打ち据えられて震えているのではない。超振動粉砕の機能が発揮されたのだ。それが証拠に、戦斧にはビシビシと亀裂が入り始め、ギギギィィィと言う、嫌な金属音を立て始めていた。

「うおぉぉぉらぁ!!!」

 怒号とも気合いとも取れる声を上げ、ハウザーは両手に込める力を増した。 槍をまるで鋏のように使い、戦斧を締め上げる。それに呼応するように、槍がさらに激しく振動を始め、まるで超音波のような高音が鳴り響く。すると・・・。

 ジャァァァァァアアア!!!

 金属製の斧が、まるでアメ細工のようにぐにゃぐにゃとゆがみ、一気に引きちぎれタではないか! 普通の剣や鉄パイプならいざ知らず、鋼鉄の塊である戦斧を引きちぎるその破壊力。それはまさに、“人一人には余りある破壊力”と言えるだろう。

 斧を破壊したのと同時に、ハウザーは機動鎧の懐に踏み込んだ。文字通り懐、腹部のまん前に飛び上がると、そのまま槍を横一閃に凪ぐ。すると、機動鎧の装甲は、まるで豆腐のように粉砕される。 通常機動鎧の装甲は、複数の魔法と、多重装甲版で守られている。それをまるで当たり前のように、破壊したのだ。 その様子に、他の機動鎧達はすぐさま迅速な対応を見せる。 引き抜いた斧を振り上げると、味方の機動鎧ごと切り裂こうと、ハウザーに殺到したのだ。味方に取り付いてい居る間に、諸とも叩き潰そうと言う魂胆である。 無論、通常の兵士は絶対に取らない行動である。 ゲーム感覚で操縦しているDr・フェネクスだからこその、コマンドといえるだろう。

 が、そう易々と捕まるハウザーではなかった。 背中のブースターを上空に向かって吹かすと、突っ込むように着地。地面にめり込むような加速のせいか、足元の道路面を吹き飛ばしながらも、さも当然といった様子で立ち上がる。 近くに居た機動鎧の足元に踏み込むと、斧を振り上げがら空きになった機動鎧の脚部を、これまた槍の一閃で破壊。あっという間に、二機を破壊してしまう。

 脚を破壊されよろめく味方機動鎧を避けようと、他の機動鎧の動きが止まる。密集した状態では、全ての機体を巻き込んで倒れてしまいかねないからだ。通常の生物とは異なり金属や粘土製である機動鎧にとって、仲間を巻き込んでの将棋倒しの転倒は、起動不全のげいいんにもなりかねない、避けるべき事態なのである。 そんな機動鎧の回避運動に、ハウザーはすぐさま反応した。背中と脚のブースターを吹かすと、一気に上昇。動きの鈍っていた一体の機動鎧の顔面を貫くと、そのまま後ろに回り込む。背中のバックパックに槍を突きたて急制動をかけ体を空中にとどめると、叩き落とすように機動鎧の両肩を吹き飛ばした。強力な、槍の一撃である。

「よえぇ!! 手応えがねぇ!! こんなもんで俺がどうにかなると思ってんのかボケが!!」

 地面に降り立ちながら、ハウザーは鎧越しにもわかる不満気な声をあげた。 自分より遥かに巨大な相手を、一瞬にして叩き伏せながら、ハウザーは全く疲れた様子を見せていなかった。 それどころか恐れすら見せずに、寧ろ、それが当たり前だとでも言うように機動鎧を破壊していた。

 機動鎧は、本来それ一機で数十人の歩兵に相当する戦力があるとされている。それはハウザーのように、“パワードスーツを着た、完全装備の歩兵数十人分”と言う意味でだ。

「その機動鎧がまるで玩具のように破壊されていく・・・! この私の操縦技術を持ってしても、まるで児戯に等しいね! 素晴らしい! 素晴らしすぎると思うのだがね! コレが“白銀の重戦車”ハウザー・ブラックマンが、化け物と呼ばれる所以だね!!」

 はぁはぁと、軽く頬を上気させ息を荒くするDr・フェネクス。 ちなみに、機動鎧の仲の人たちは既に全員気絶していた。ご愁傷様です。

「さぁ! ハウザー! ここからがさらなるお楽しみになると思うのだがね!!」

「Dr。」

 Dr・フェネクスがリモコンを握る手に力を込めたその瞬間。突然、画面上に執事の姿が現れる。 Dr・フェネクスの持つメインコンピュータ。“執事”である。

「なにかね?」

 楽しみを邪魔されたのにも拘らず、Dr・フェネクスは特に不満そうな顔もせずに尋ねる。執事が意味も無く自分の楽しみを邪魔しない事を、良くわかっていたからだ。

「ガルシャラ・カーマイン様。テト・ウルフ様。 ハウザー・ブラックマン様との接触まで、およそ後一分です。」

「おおお!!! ガルシャラVSハウザー!!! 好カードだと思うのだがね!!」

 ニヤリ。そんな音がしそうなほどのニヤリとした表情を見せると、Dr・フェネクスは機動鎧たちに退避命令を下した。

 一方。モニター越しに自分を見つめる人物がそんな事を話していることを全く知らないハウザーは、撤退していく機動鎧の様子に表情を曇らせていた。

「逃げるか・・・? 根性無しが。」

 来る物は叩きのめして、去るものは追わない。 その主義通り、不満気では有るものの、ハウザーは構えを解き、槍を下ろした。 若干暴れたりなさそうに見えるのは、気のせいでは無いだろう。そのときだった。

「前座は終わりってことだな〜。 しかしDrの野郎、派手にやりやがって・・・。」

 ハウザーが背中を向けていたビルの影から、若い男の声が聞えてきた。聞き覚えのある声に振り返るハウザーの目に飛び込んできたのは、黒髪サングラスに黒Tシャツと言う黒尽くめの男と・・・。

「なんだあの機動鎧。つか、俺もあれと戦いたかったってか戦わせろ!! 鳥! テメー見てんなら俺襲え!!」

 やたらと口と目付きの悪い、白髪白コートの青年であった。

「ガルシャラ・カーマインに、テト・ウルフ・・・? テメーらここで何してやがる!!」

「町全体の雰囲気見たら解るだろ? 賞金首追ってんだよ。ま、今回は柄にも無く共同戦線張っててな。俺達は邪魔者排除役。 で、Drに言われてここに着てみれば? Drの玩具と遣り合ってるアンタにかち合ったってわけだ・・・。」

 大げさに溜息を吐きながら、芝居がかった仕草で肩を竦めるガルシャラ。そんな姿に、ハウザーはフン、と、鼻を鳴らす。

「やけに喋るじゃネーかこのボケが。」

「理由を知らないで戦うのは気持ち悪いだろうと思ってね。 俺もあんまし難しいの、苦手なんだわ。コレで解決するのが一番! なにせ、そうしたくて冒険屋になったようなもんですから?」

 おどけるように笑いながら、ガルシャラは背中の大剣を引き抜いた。 刃渡り1.6mを越え、50cmを越える柄と言う、変わった形の剣を片手で扱いながら、ガルシャラはチャキリとサングラスを上げた。

 その様子に、ハウザーはニヤリと口元を歪める。

「OK〜OK〜。 シンプルで良いじゃねーか。 俺がテメーラボコにしたら、その“共同戦線”張ってる連中の居場所を吐く。」

「俺が勝ったら、アンタは帰る。 ・・・って、随分フェアじゃ無いなぁ。考えてみると。」

「ちょっとまて!! なんでガルシャラが戦う事になってんだよ!! 俺だろ?! 俺がやる!!」

 ボキボキと拳を鳴らしながらズンズンをハウザーに向かっていくテト。が、慌てたようすのガルシャラに、簡単に首根っこを掴み上げられる。 二人の身長差は、優に50cm以上あったりした。

「なんだよ!! 掴み上げるな!!」

「はいはいはいはい。 お前はあっちだ、テト。 あのボヘラッとした副団長殿。探し出して潰しといてくれ。後々面倒だしな。」

「・・・わぁったよ。アイツでもそこそこは楽しめんだろ・・・。」

 渋々頷くテトを開放するガルシャラ。 離すと同時に、テトの体一気に“燃え上がる”。揶揄ではなく、本当に燃え上がったのだ。そして、体に纏った炎が脚に収束すると、まるでロケット噴射で進むような勢いでビル郡の中に消えていった。 炎を使った魔術の一つである。

 すっ飛んでいく相棒に手を振りながら、ガルシャラはポケットをまさぐった。 そして、ビールの王冠を取り出すと、ハウザーにかざして見せた。

「コイツが地面に付いたら合図。ってんでどうよ?」

「こう言うときはコインってのが相場じゃねーのか?」

「ぶっぶ〜。 今文無しでな。だから賞金首追ってるんだよ。」

「共同戦線なんて分け前の減ることしてると思ったら・・・ジャリ銭でもいいから欲しいってわけだ。 生活かかってんじゃねーか。」

「そ。だから、マジで行くぜ?」

「こっちもな。」

 ガルシャラとハウザーは、互いにニヤリと笑った。 そして・・・。

 ガルシャラの指が王冠を、下に向かって弾いた。

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 Drの人物紹介。

さてさて。今日は人物紹介でもしてみようかと思うのだがね。

必要事項は全て私が書き込んでいるので、本人たちが見れば激怒するかもしれないが、世界の外に住まう悪魔として客観的な立場で見ることが出来る私の評価と言うのは、実に信憑性があると思うのだがね!

 

 

ファイル ?

無名の悪魔(Dr・フェネクス プロフェッサー・F etc・・・)

種族:悪魔(不死鳥類)

性別:両性具有(主に男)

生年月日:不明(少なくとも、数億うん万歳以上)

出身地:天界(元は天使だったので)

髪:短髪。銀髪(オールバック)

目:大きめ。瞳の色は紫。 

身長体重 身体的特徴:120cm〜100m 0キロ〜21キロ(悪魔として姿になると、アストラル体となり重さがなくなる)

職業:冒険者兼兵器開発者

趣味趣向:他者にケモノ耳を付けさせたりバニースーツなどの服飾を施し、兵器だと言い張る。信じてはもらえないが、性能はピカイチ。

 

コメント:自分の事を語るのは気恥ずかしいのだがね。まあ、色々あってアクアルートと言う町で冒険者をしている、しがない兵器開発者なのだがね。 金よりも、私自身の兵器を試すためと、冒険者として様々な物事に巻き込まれる事を目的にこの仕事をしている物好きなのだね。だからといったらあれなのだが、あまり金には縁の無い生活をしているね! 歳の割りに達観しているわけでもなく、寧ろ歳をおうごとに落ち着きやら威厳やらを置いてきてしまってね。今では日に日に膨れ上がっていく好奇心を押さえ込むのに苦労するほどだよ。良くジェーンに「ガキ」と言われるのだが、これがなかなかどうして。人間長生きをしすぎると逆にエネルギッシュになっていくものなのだよ!

博士の風変わりな研究と飯のタネ(18)

「ふむ。手も無く一機落とされてしまったね。まあ、相手はボスクラスなわけだから、早々簡単に攻略できたら意味が無いとも思うわけなのだがね。」

 はっはっはっは、と、高笑いしながら、Dr・フェネクスは“遊び場Z”のコントローラーをガシガシと叩きまくっていた。

 ちなみに、“遊び場Z”とは。家庭用ゲーム機の一つのことで、コアなゲーマーしか客層にはしねぇ。と言う態度丸出しな、いっそパソゲーで出せよ的なマニアックなゲームをもさもさ出しまくる超マイナーゲームハードである。

 Dr・フェネクスが今見ている画面には、へこんだ地面にめり込み仁王立ちするハウザーが映っていた。

「適当にうろついていたゴーレムタイプをハッキングして徘徊していたのだがね。 まさか王立近衛騎士団 団長、“超越騎士”“破壊王”“戦場壊滅者”“一人一個師団”“オーガナイト”“壊し屋”・・・“白銀の重戦車”!!“ハウザー・ブラックマン”とかち合うとわね! いや、運が良い! もっとも、彼が移動は全て自分の足でする主義なのは知っていたからね! 移動要塞のした辺りにいるだろうと当たりをつけてきたわけではあったのだが、ここまで早く見つけられるとは!!」

 そう。ハウザーに今群がっている機動鎧は、Dr・フェネクスが魔道頭脳にハッキングし、街中を徘徊していたのだ。 普通ならば街中で兵器運用などもってのほかなのだが・・・今は普通とよ別状態ではなかった。

 賞金首、“アッシュ”を巡る攻防が開始されてから数時間。 状況は徐々に悪化して行っていた。 国内でも有数の治安を誇る“アクアルート”。 だが今は、多数の冒険者やら戦士団やら、挙句、暗殺者やら賞金稼ぎまでがアッシュを追って、激戦をくり広げている。

「それぞれがそれぞれの理由で賞金首を追っているようだね。 それも御互いがつぶしあってどんどん大事になって行っているね。 止め処も何もあったものではないね。うむ。何と言うのかねあの少年。そう言う星の元にうまれ付いているのかもしれないね。」

「かっこつけてんじゃねー!! コントロールかーえーせー!!!」

 考え深げにかっこつけるDr・フェネクスに、複数の画面の一つに映った人物が罵声を浴びせかける。 彼は今Dr・フェネクスがハッキングしている機動鎧の操縦者だったりする。

「はっはっは! まぁまぁ。ハウザーにやられて散ると言うのもなかなか清々しい思い出になると思うのだがね。私としてはモニター越しとは言え、ハウザーの戦闘風景を見逃すつもりもないわけなのだがね。」

「行き成りハッキングかけてなに言ってんだこの変態野郎! 鬼! 悪魔!!」

「はっはっは! まあ、確かに私は悪魔なのだがね! さぁ、行こうと思うのだがねハウザー! 私のコントローラー捌きをとくとご覧に入れようと思うのだがね!」

「いやだぁ〜!!!」

 泣き叫ぶ操縦者を無視して、コントローラーを握り締めるDr・フェネクス。すこぶる無邪気っぽく笑うその笑顔は、ある意味正に悪魔なのだった。

博士の風変わりな研究と飯のタネ(17)

 王立近衛騎士団。 レニス王国においてそう呼ばれる騎士団は、団長である“白銀の重戦車 ハウザー・ブラックマン”を頂点に据えた、超好戦的な組織として存在していた。

 “近衛”とは名ばかりに、実際には国王と宰相の命令の元、様々な軍事行動に携わる王立近衛騎士団は、総員3000名以上。各地に散らばる諜報員を含めれば延べ4000名以上にもなる巨大な組織である。

 騎士団は、一番隊から五番隊。そして、団長が直々に指揮する零番隊の六つの隊に分類されていた。 それぞれ、移動要塞や空中艇を擁し、中には宇宙港を持つ隊まであった。故にその機動力は強豪列国の有する様々な軍事組織の中でも、最高。他を全く寄せ付けなかった。

 

「そう。うちの機動力は最高峰ッス。つか、ほかが付いてこれんレベルなんすよ。そりゃあんたあんだけ金と優秀な人材つっこみゃそうなるってもんで・・・。 そうっすよねぇ。そのはずっすよねぇ。 でも・・・。」

 王立近衛騎士団 副団長。“マービット・ケンブリッジ”は、隣でがっしゃんがっしゃんとロボっぽい音を立てて歩く直属の上司に、渾身の力を込めた突込みを放たんと、全身全霊、全ての勇気と根性を練り上げた。

「なんで歩きなんすか?! 乗りましょうよ移動要塞?! 大体なんで俺たち二人で歩いてるんすか?!」

 二十六歳とは思えない駄々っ子っぽい挙動で、全身を使って抗議するマービット。そんな自分の副官に、ハウザーはフルフェイス越しにも解る溜息を吐き出した。

「鉄の塊は空とばねーンだよ。航空力学無視しやがってあの移動要塞ってのはよぉ〜。大体移動なら歩きゃいーんだよ! 歩きゃよぉ!! 大体何のために俺の鎧にブースター付いてると思ってんだよ!」

「そのブースターも航空力学無視してますよ! つか、なんで騎士団長の直属部隊が俺だけしかいないんすか!! 意味わかんないっすよ!!」

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーうっせーなぁーコノタコ! どうせ俺ら雑用と書類仕事しかしねーンだから、二人もいりゃ十分なんだよ!! 組織の上の方ってのは人数少ないもんだろうが!!」

「じゃぁなんで俺ら今現場にいるんすかぁ〜!」

「俺が現場に出たいから。」

「むちゃくちゃっすー!!」

 ぎゃーすとか良くわからないダメージ音を発しながら泣き崩れるマービット。 ちなみに、彼等の頭上には、王立近衛騎士団二番隊所属 移動要塞“イージス”が浮かんでいた。本来は零番隊に所属するはずのこの要塞は、「二人じゃ無理。」と言う至極最もな理由から二番隊に寄与されたのであった。

「うっるせーなーテメーはよぉ〜!! 頭潰してやろうかゴラ! ああ?!」

 ぐずるマービットにハウザーが痺れを切らせ、手にしたランスを思いっきり振りかぶった。そのときだった。

 横合いから突然、バァァァァァ!!と言う、まるで滝のような音とともに、無数の弾丸が押し寄せてきた。

「ぎゃー!なんすかこれぇ〜!!」

 転がって喚いていたにも拘らず、一瞬にしてハウザーの背中に隠れたマービットは、叫びならが弾丸の飛んで来る方に目を向けた。 そこに居たのは、全長5メートル。市街戦用の灰色掛かった迷彩を施された、中型機動鎧だった。 それも一機や二機ではない。少なくとも六機以上が、此方に銃口を向けて打ってきているではないか。

 そんな状況にも拘らず、ハウザーは両手に一振りずつ持ったランスを、まるでバトンのように高速旋回させ、弾丸をことごとく叩き落とす。

「都市迷彩にマシンガン・・・?! 傭兵とかが使う、ゴーレムタイプっすよ! それ自体にも意識があるゴーレムに人が乗れるようにしたもので、知能が有る分機動鎧が操縦の誤差修正や射角修正をしてくれたり、自動操縦も通常とは比べ物にならないレベルだっていう・・・!」

「なんで説明口調なんだよお前。」

「隊長知らないじゃないっっすか。教えといた方が良いと思いまして。」

「殴るぞこのやろー。俺だってそのくらい知ってらぁ! 知らないけどな!」

「どっちっすか! つか、何で俺ら撃たれてんすか?」

「連中が賞金稼ぎで、俺らがその仕事邪魔しようとしてるからだ。」

「あぁ〜・・・。納得っす。 でも、街中で発砲ってのはいただけないっすねぇ〜。」

「あたぼうよ。 全部スクラップにしてやらぁ!!」

 一声吼えると、ハウザーは自分の鎧を起動させた。 戦車をあしらったフルフェイスに、太股部分と背中に取り付けられた噴射装置が印象的な全身鎧である。マジックアームのように太股から生えたそれは、全方向に自由に向くことが出来る魔道式ロケットブースターだった。脚部分に施された浮遊呪式によって体を浮かし、そのブースターの推進力を持って進む事が出来るようになっているのだ。 さらに背中に取り付けられた二対の大型ブースターを併用すれば、最大戦闘速度は音速にも至る。 もっとも、直進しか出来ないため、普通の人間はあまり使わないので有るが。

 しかし。ハウザーは普通の人間ではなかった。

「喰らえボケガァ!!」

 気合い一括。計四つのブースターをフルスロットにいれ、両手に持ったランスを脇でしっかりと挟み込み、機動鎧に突撃をかけた。 無論、二本一対のランスもただの鉄の塊ではない。 様々な魔法を幾重にも施し、対魔法、対物衝撃緩和能力と言う防御方面に加え、超振動による粉砕まで可能にした、現代魔法学の粋を集めた大魔槍なのだ。

 全身鎧。そして槍。これらはハウザーが使うことを前提に、ハウザーだけのために作られた、言わばオートクチュールである。とある魔剣職人が彼の戦闘能力に惚れ込み作り上げたこれらは、全てあわせて一つの名前が付けられていた。

 “アンブレラ・レインブーツ”作 “アシュラ・8(阿修羅重威斗)”

 例え相手が巨大な筐体に複数の防御魔法を込めた機動鎧だろうとも、このアシュラ・8を装備したハウザーの直撃を受け、無事に済むものではない。

 ギャァァァン!!  金属が引きちぎれるやな音を立てて、一機の機動鎧が地面に倒れ付す。 その両手両足は無惨に引きちぎられている。無論、それをやったのはハウザーである。

「はぁっ!! 大したことねぇなぁ!! おい!!」

 倒れこむ機動鎧の後方、抉れた地面から上がる土煙とともに、ハウザーは立ち上がった。

「俺のシマ(領地)でチャカ振り回したらどうなるか! その体に刻み付けてやるからなこのボケどもが!!」

「程ほどにして欲しいっす・・・。」

 戦闘に巻き込まれないように近くのビルの陰に隠れながら、ぼそりと呟くマービット。 届かない願いだとは知りつつも、嬉々として機動鎧に飛び掛かっていく直属の上に祈らずには居られないマービットなのだった。