博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 Drレポート

Q、まずはお名前を。

「私には名前が無いのだがね。 色々な悪魔が混ざっているせいか、コレと言って特徴も無いしね。 元々はフェネクスだから、Dr・フェネクス、プロフェッサー・F、などと呼ばれているよ。」

 

Q、ご職業は?

「冒険者だね。冒険者。 ああ! 実にスリリングでよい仕事だと思うよ! 本当ならば私もガルシャラ達の様に“冒険屋”を名乗りたいのだが、彼等ほど卓越しては居ないからね。 細々と冒険をする者として暮らしているのだよ。 実は冒険者と言うのは、スリルの割りに収入が余り宜しくなくてねぇ。 命がけの仕事の割りに貰いは傭兵ほど良くないのだが、まあ、それでも食い扶持と研究費用、研究対象には困らないからね。私には最適の仕事だと思っているよ。」

 

Q、ご専門は?

「魔法も使うし、腕力にも少々自信があるね。 こんななりなのだがね。はは。 まあ、様々な悪魔の特性を得ているが故に、専門になることは無いと言って良いよ。全てがそれなり・・・。 まあ、いまは趣味として兵器を作っているね。 魔剣や機動鎧。パワードスーツなどなど・・・。 最近作ったもので自信があるモノとしては、“クマ耳型人体リミッター解除装置”だね。 コレは脳がかける人体活動のリミッターを解除する、いわば火事場のクソ力を強制的に引き出すための道具でね。是非、純朴な田舎の少女につけてもらいたいのだよ!」

 

Q、得意技(戦闘系)など一つ。

「私は専用の隔離世を持っていてね。言うなれば私専用の別次元といった所か。そこに相手を引きずりこみ、そこに用意して有る無尽蔵の“私の魔力結晶”を使って戦う・・・といったところかね。 結界世界“紫の結晶原”。それが技の名前であり、その世界の名前だね。」

 

Q、悪魔的には、神様とか怨んじゃったり?

「そうでもないねぇ。私は元天使だったのだが・・・いや、ただのフェネクスの時の話なのだがね? その気になれば私なぞ、一瞬で消す事も出来ただろうに。それをしなかった。神とは慈悲深いね。 いや。もしかしたら、私は堕天する事になっていたのかもしれないね。悪魔になるために。 これは想像なのだが、我等悪魔は必要なものなのかもしれないね。人をたぶらかし、貶め、打ち破られる存在として。つまりヤラレ役だね。ま、私の勝手な想像だよ。忘れてくれたまえ。」

 

Q、魂喰ったりします?

「しないね。 いつも言ってるのだがね。私は別に“悪魔の契約”と言う奴や、取引をしなくても、食料と水があれば生きていけるのでね。まあ、無くても死なないのだがね。不死だけに。 もっとも、契約や取引に関してはすることは有るね。魂や何かを奪うためのものではなく、格好をつけるために。 いやいや! 悪魔で有る私が契約と言う言葉を口にするのは、なかなかにかっこいいとは思わないかね?!」

 

Q、最後に、何か言いたい事があれば・・・。

「ふむ。失せ物、荒事、悩み事。 困った事があったら冒険者協会に足を運ぶと言い。きっと、役に立つ人物を紹介される事だろう! そしてもし、そこで私が紹介されたなら。そのときはこの私。全精力と情熱を持って、その依頼をに取り組もう! もっとも。解決できるかどうかは・・・神のみぞ知る。なのだがね?」

 

ご協力有り難う御座いました。

「大したことでは無いよ。私も実に有意義な時間を過ごさせていただいたね。 さて。では約束どおり、君の名前を聞かせていただけるかね?」

“マービット・ケンブリッジ”。 うちの隊長の命令で、貴方を調べに来ました。 危険は無いようだ、と、報告させてもらいます。

「ほうほう。彼かね。今度は是非、直接お会いしたいと伝えて欲しいのだがね。」

博士の風変わりな研究と飯のタネ(12)

 六発装填のリボルバーでありながら、ジェーンが操るその銃は、まるで機関銃のように弾を吐き出し続けていた。 長袖の袖口に仕込んだ仕掛けによる弾丸装填と、まるで機械のような正確さで動く指が、その速射を可能にしている。

 常人では不可能な指の動きだが、並外れた訓練量と魔法による強化でもって、ジェーンはその人外の技を立て続けに行っていた。

 一方、それを避け続ける英児の能力も、目を見張るモノが有った。 彼のパワードスーツ“アーマー・オブ・ディープレッド”は、複数の魔方陣と添付魔法を詰め込んだ、“着る強化魔法”とも呼ばれる類の代物である。 施された装甲には、対衝撃、対刃、対熱、対寒、対精神魔法、対干渉魔法。その他ありとあらゆる、考えうる限りの防御魔法と。行動補助、反射神経鋭敏化、筋力補正、集中力維持など、同じくありとあらゆる補助魔法が組み込まれていた。 とは言うものの、所詮はただの強化服。使うモノに実力が無ければ宝の持ち腐れである。 その点については、英児の実力はまさしく超一流であった。

 マスター&スレイブ方式と言う、着用者の動きをリアルタイムでトレースしながら、オーガ並のパワフルさを持って再現すると言う“アーマー・オブ・ディープレッド”の特徴をフルに生かし、ビルの壁面や魔力灯を足場にした三次元の動きでジェーンの弾丸全てを避けきっている。着地の瞬間や誘い込み、兆弾すら利用して弾丸を叩き込もうとするジェーン。その技術は化け物並だったが、英児もまた化け物だった。絶対に避けられないたんミングで打ち込まれた弾丸すら、英児は手にした剣で全て叩き落して見せたのだ。 無論。こんな芸当はいくらパワードスーツを着ていたからと言って、出来るものでは無い。

 二人が戦っていたのは、アクアルートの中心街から離れた、建設中のビルが立ち並ぶ区画であった。戦っている理由は簡単。 賞金首を巡って争っているのだ。

 御互い、面倒臭い相手に会った。と、内心毒付いていた。 何しろ御互いこうと決めたら一歩も引かずに突っ走る性格である。 互いにDr・フェネクスを通じでの知人同士、相手の腕が尋常でない事も分かっていた。 正直戦いたくなかったが、そうも行かない。ここで相手を倒しておいた方が、あのちょろちょろ動き回る賞金首を捕まえるのには都合がいいのだ。

 英児が剣で衝撃波を飛ばせば、ジェーンは魔力結晶弾頭の特殊弾で持ってそれを迎撃し、また、それが逆に成る事もあった。高熱量の高速弾として、音速を超える速度で打ち出されるジェーンの魔力結晶弾頭だったが、英児はそれすら剣で叩き落して見せた。 だからと言って、接近戦主体の英児にとって、名うての拳銃使いであるジェーンは消して戦い易い相手ではない。 近づこうとすれば牽制され、隠れようとすれば出し抜かれかねない。 かと言って、ジェーンが有利な訳でもなかった。普通の金属弾頭では傷一つ付けられない英児の“アーマー・オブ・ディープレッド”相手では、自慢の魔力結晶弾頭を使わざるを得ない。しかし、相手はそれを叩き落しすらするのだ。

 近づけば英児の勝ち。 隙ができればジェーンの勝ち。 そんな図式である。

 この戦いは長引く・・・。 そう覚悟した二人は、肝心のターゲットに目を向けた。ターゲットはこの場から何とか逃げようとするものの、二人の戦闘が激しすぎるためか、足が竦んで上手く逃げられない様子だった。タダでさえ激しい爆風や魔法の余波に呷られて、ワタワタとしていた。

「う、うわぁ〜!」そんな情けない声と共に、何も無い所で可愛らしくぺちっと転ぶターゲットこと、アッシュ。 どうやら自分の足に躓いたようだった。

「うう・・・いたいですぅ〜。」

『まじかよコイツ・・・。』

 目を潤ませながらぶつけたらしい鼻の頭を抑えるアッシュに、戦いながらも思わず異口同音に呟くジェーンと英児だった。

レニス王国宰相 アルベルト・ストラルフ(1)

 その日も、アルベルトは自分の上司・・・と言うか。国王の首を締め上げていた。

「だからぁ!! 何度言ったら解るんだこのオオボケ! あれほど! 駄菓子屋には!行くなと! 言っただろうが!! せめて仮装していけ! 王冠を被ったまま行くな!!」

 自分の国の王を王座から引き摺り下ろし、締め上げるアルベルトを止める者は居なかった。勿論王座があるだけに、そこは王の執務室、兼謁見室だったりする。周りには当然のように警備の近衛騎士達が居るのだが、アルベルトの行動を咎めるどころか、どこと無く「もっとやれ」的な空気をかもし出していた。

「出ていない。 今日はずっと、ここに居た。」

 ガクガクと前後に揺すられながら、国王。“レニス・スタッカート”は、完全な無表情で言った。 言葉と表情からは何も察する事は出来無いが、その視線がアルベルトの顔から完全に外れているあたり、言い訳をしている意味も殆どないように見えた。

「お前、口の周りにチョコソース付けて何言ってんだ?! そんなジャンクなもんこの城にあるか?!」

「ある。 私の引き出しに・・・。」

「溜め込んでた菓子なら全部喰っただろう?! 昨日!!」

「な・・・!」

 一言発し、打ちひしがれたように倒れ付すレニス王。ちなみに、顔は無表情だ。

「解ったか! お前の口の周りのチョコソースは、外出して付いてきた以外ありえないんだよ!」

「そ、ソースせんべいが私を呼んだんだ・・・。」

「呼ぶか! ボケ! つか、警備兵に幻術をかけるな! カッワいそうに、ぶっ倒れてたんだぞ! あの二人!」

 アルベルトに指差され、激しく首を縦に振る近衛騎士二人。

「む。 今度何かお菓子を進呈しよう。」

「せんで良い!! 大人しくしてろ!」

「む。」

 アルベルトは「全く・・・。」と呟くと、近衛騎士に絶対に目を放さない様きっつーく厳命し、国王執務室を後にするの。

 宰相。“アルベルト・ストラルフ”十三歳。 八歳にして英雄と呼ばれた男の、現在の日課だった。

 

 

「御公務が終わって早々申し訳有りませんが、ご報告が有ります。」

 国王執務室から出てから数分。トボトボと歩いていたアルベルトを呼び止めたのは、王立近衛騎士団 騎士団長“ハウザー・ブラックマン”だった。

「おう。ハウザー。 ・・・っつか。でテメーが敬語使うなんて珍しいな。 悪いもんでも喰ったのか?頼みごとか?」

 大男であるハウザーを見上げながら、身長120cm弱のアルベルトは、不快そうに溜息を吐いた。

「うっせー。相変わらずクソ生意気なガキだなふったく。」

 まるでチンピラのような口調で毒付くハウザー。 コレが近衛騎士団の団長だと言うのだから驚きだ。

 ハウザーは人族でありながら、身長二mを越える大男だった。顔立ちは整っており、常に鋭く研ぎ澄まされた目と引き締まった口元。均整の取れた鎧の如き肉体が、その実力すらも見せ付けるように存在感を放ってる。まとう雰囲気は、二十八歳と言う年齢相応な若々しさと、団長と呼ばれるもの独特の落ち着きを兼ね備えていた。

 一方アルベルトは、同じく歳相応。いや。それより少し幼くすら見える外見をしていた。顔立ち的にはやんちゃっ子風でつりあがった目が特徴だったが、そのスポーティーな見た目とは不相応に彼は実に優秀な魔術師であり、魔法技師であった。

「クソ生意気でもなけりゃ宰相なんざやってられねーンだよ。 つか、お前変われよ。」

「ふざけろ。んなタルイ仕事してられっかってンだアホ。俺は騎士だぞ。民を守ることだけが仕事なんだよ。」

 大凡その顔からつむぎ出されているとは思えないような言葉遣いで言いながら、ハウザーは「そんなこたーどうでも良いんだよ」と、本題を切り出した。

「アクアルートでひともんちゃく起こってるみてーだ。」

「あそこで騒ぎがあるのは何時もの事だろ。」

「あの悪魔と“ガルシャラ・カーマイン”、“ループ・ループ”。他にももろもろあぶねー連中がたむろしてやがる。 あそこは俺の領地(シマ)でもある。好き勝手さてやるのはかまわねーが、それにしちゃーちーと面子が悪すぎる。」

「・・・。」

 ハウザーが挙げた名前に、思わず頭を抱えるアルベルト。 しばし考え込むと、おもむろに顔を上げ、ハウザーを睨みつける。

「ハウザー。お前、いまの自分の立場わかってるか? 昔の、たった二人しか隊員が居ない超弱小小隊の隊長じゃねぇ。 国王の城を守護する、近衛騎士団の騎士団長だ。 お前の下には、二百数十人の直属部下が居る。 テメーの我が侭で好き勝手出来る立場じゃねぇ。」

 アルベルトの言葉に、それまで殆ど変化が無かったハウザーの顔が、まるで怒りが爆発する寸前のように歪む。

「城も王も関係有るか。寝言は寝て言えボケが。 俺たち騎士は、俺たちに飯を分け与えてくれる民を守る。だからこそ様付けされるほど尊敬してくれる奴も居る。 民が作り、俺達はその恩恵を受けて守る。 それを忘れて・・・」

 ハウザーは拳を振り上げると、それを思い切り横に振りぬく。 グオン と言う轟音と共に、その拳が壁面にめり込む。

「騎士を名乗れるかってんだボケがぁ!! 人は石垣!人は城!! 騎士が守るべきが城だとしても、民を守る事が最優先なのには何の変わりもねぇ!!」

「興奮すんなよ・・・。 確かにその面子じゃこっちも何もせんわけにゃいかん。対応もそこに駐屯してる騎士だけじゃ力不足だろ。行ってやってくれ。」

「いわれねーでも行く。」

「だろうな・・・。 じゃ、何の用があって呼び止めたんだよ?」

「そのアクアルートに行くために俺等の詰め所を出たら、国王を拾った。ついでだったからフンじばって引きずってきた。引き取れ。」

 言いながら、ずっと手に持っていたロープを手繰り寄せるハウザー。その先には、ロープで雁字搦めにされながらも、満足そうに紐引きアメを舐めているレニス国王の姿が。

「・・・。」

 宰相。“アルベルト・ストラルフ”十三歳。上司にも部下にも恵まれない男であった。