ハウザー&マービット マービットの過去なのよ

マービットが施設に入ってから暫くしてのことだった。 突然。マービットたちが訓練をしている施設に、年上の少年少女達が入れられてきた。

 彼等はマービット達の様に生まれた時から“アサシンになるため”に育てられてきた子供たちではなく、ごく普通に生まれ、売り飛ばされてきた子供たちだった。

 彼等は“通常の訓練施設”で教育されていた子供たちで、その中でも特に優秀な子供たちが送られてきたのだ。

 その頃、元々その施設に居た少年少女の数は、十分の一以下になっていた。残った子供たちは感情が欠落したように無表情だったり、いやにニコニコしていたりと、とても普通の同い年の子供たちと同じ様には見えない有様だった。

 後から送られてきた少年少女たちにとって、そう言った“元々施設にいた子供たち”は、異質で相容れない存在だった。 それもそのはず。自分達よりもずっと辛い訓練を、生まれた時からずーっと受けてきたような、人を殺すことを目的に生きて来た連中である。少し前。自分達には確かに居た親たちが、いけない事だと教えてくれたことをこそ目的に生まれてきた、まさしく悪魔にも等しい連中なのだから。

 

 

 アリシア・ケンブリッジ。 それが今日から私の名前だそうです。 前の名前は・・・お父さんとお母さんが付けてくれた名前は、もう私のものでは有りません。 私の持ち物は全部。お人形も、お洋服も・・・名前も売ってしまいました。 残っているのは、私だけです。

 “アサシン”になるために、私はずっと訓練を受けてきました。私以外の“売られてきた子達”と一緒に、頑張ってきました。 でも、何人かの子達が怪我をして、死んでしまいました。中には仲が良かった子もいて、とても悲しかったです。 大切な友達が死んでしまった日は、ベットの中で泣きました。 ベット以外で泣いていると、教官の人に怒られるので、泣けませんでしたから・・・。

 今日から私達は、子供もの頃からアサシンになるために訓練をしてきた子供たちと一緒に暮らす事になりました。 この中に、私の“弟”になる子が居るそうです。

 顔かたちが似ているから、兄弟と言う事にして、お仕事をしやすくするんだそうです。 どんな子だろう。何となく怖いな、と思いながら、私は一緒に暮らす事になる子供たちとの顔合わせに出席しました。

 生まれた時から、アサシンになるために訓練を受けてきた子達。皆、無表情だったり、人付きの良さそうな笑顔だったり、ボーっとしていたりしていました。 皆思ったより怖い外見はしていませんでした。 でも、何ででしょう。その怖くないところが、逆にとても怖かったです。 本当の気持ちをばれないように、表情を浮かべている感じだったからでしょうか。皆私達よりも凄い訓練をしているはずなのに、私達のようにオドオドした様子も、怖がっている様子も、全くなかったからでしょうか・・・・?

 そんな中で一人だけ。変わった子が居ました。 落ち着き無くキョロキョロとして、立ったり座ったり、私達のほうを見て笑ったり感心したりしている男の子。 キラキラとした綺麗な髪に、驚くくらい整った顔立ちをした、綺麗な・・・男の子なのに綺麗って言うのはおかしいかもしれないけど。本当に綺麗な男の子でした。

 彼の名前が“マービット・ケンブリッジ”で、私の弟になる子だと知ったのは、山の中の施設に移った、一週間くらい後の事でした。