博士の風変わりな研究と飯のタネ(16)

「とりあえず、周りの状況を把握したいと思うのだがね。 王国騎士団のレーダーにアクセスするのは無理だとして、民間企業にでもアタックをかけよう。」

 大型画面を眺めながら、Dr・フェネクスはさし当たっての必要な情報をそろえる作業に入った。 誰が敵で、どこに居るのか。それを調べるのは、こういった仕事の場合はナニよりも重要に成ってくるのだ。

「民間企業、“ミカド・セキュリティー”のメインコンピュータににアクセス。 回線つなげました。」

「ふむ。 冗談のような速さだと思うのだがね・・・?」

「元々あの企業のサーバーはDrが開発提供した物ですから。 私にとってみれば可愛い下の兄弟のようなものです。」

 画面上でうっすらと微笑み御辞儀する執事を横目に、Dr・フェネクスは苦笑いのような表情を浮かべる。

 “ミカド・セキュリティー”は、業界でもシェア1、2と言う、大手のセキュリティー企業だ。 倉庫やビル、一般家庭。様々なロックシステムや警備システムを取り扱い、モンスターや盗賊からの護衛なども行う、言わば警備のプロ集団だ。 その警備のプロのメインコンピュータに、これほど容易く侵入出来るのは、執事の言葉通り、それがDr・フェネクスが作ったものだからに他ならない。

「他のものならいざ知らず、Drが製作なさった兵器以外のコンピュータならば。この私に侵入できないものは御座いません。なにせ私は彼等の“兄”であるわけですから。」

「なんとも心強いね。 さて。レーダーにの様子どうだね?」

「お待ちを・・・。出ます。」

 執事の言葉に続き、画面上に地図が現れた。 アクアルートの地図の上に、様々なアイコンがのり、それらがリアルタイムで移動しているというものだった。

「やれやれ。 コレはまずいね・・・。 というか、騎士団表示が一つしかないようなのだがね?」

 近衛騎士団の紋章は、盾にランス、麦の穂があしらわれたものである。それがでかでかと一つだけ、ゆっくりと移動しているのを眺めながら、Dr・フェネクスは不審気に眉を寄せた。

「お待ちを・・・。 どうやらこの表示、一つと言うより、一隻といった方が正しいようです。」

「む?」

「“移動要塞 イージス” 近衛騎士団団長、ハウザー・ブラックマン様の艦で御座います。」

「ふぅ〜む・・・。」

 執事の言葉に、Dr・フェネクスはつかれたような溜息を吐いた。

 移動要塞。 それは、魔道力推進と浮遊技術により宙に浮いた、言わば空の攻撃空母である。 バリアーなどの防壁魔法を駆使する事により、その大きさでもただの的に成る事は無い。 搭載された魔力精製機関により空中に存在する自然魔力と呼ばれる“あらゆる空間に存在する魔力”を取り込む事により、半永久的に稼動。その魔力を使用した大魔術展開や、輸送力をフルに生かした機動鎧の運搬など、現在の戦争においては花形的存在である。

「空賊“ガトリング・ミリル”様の“ジェノサイド・ホエール”を目指しているようです。どうやら機動鎧を投入して市街に分散してる賞金首を捉えるつもりのようですね。搭載機の発射カタパルトがオープンしています。」

「ふむ・・・。 やれやれ。思った以上にコレは・・・。」

 Dr・フェネクスは大きく溜息をつくと・・・。 ニヤリと口元を歪ませた。

「面白そうな展開だね。見学甲斐が有るよ。 早速ガルシャラとテトに連絡を取るとするかね。一般の通話機は盗聴されても不愉快だから、別の方法で連絡をとりたいね。 それが終ったら、賞金首を見つけてループたちに報告だね。私がガルシャラに連絡を取っている間に、賞金首を見つけてくれると助かるのだがね?」

「仰せのままに。」

 恭しく頭を下げる執事だったが、Dr・フェネクスの目には既に彼は映っていなかった。 楽しげにランランと目を輝かせながら、Dr・フェネクスは彼の楽しみに夢中だった。。

「ああ! 早くガルシャラたちの戦いが見たいね! 彼等は必ずハウザーとぶつかると思うのだがね! ジェーンと英児もきっと楽しい事をしてくれると思うしね! きっとあの二人、ループにシュナ、パペッター、ナップに喧嘩を売ると思うのだがね!! そうなったら私が横から賞金首の少年を奪い、色々と兵器の実験台に成ってもらおうと思うのだよ! 例えば“ズレ落ち機能付き大きめ眼鏡型レーザー発射装置”と、“クマ耳型距離測定レーザー式ターゲッティングレーダー”なぞ、はまり役な気がして成らないと思うのだがね!!」

 はっはっは と、高笑いをかましながら満足そうに頷くDr・フェネクス。 どうにもこうにも。最終目標はそこにあるようであった。