博士の風変わりな研究と飯のタネ(14)

 六発装填型回転式拳銃。二対一体にして、ジェーンが魔術師としての全知識と経験、技術をつぎ込んで作り上げた逸品。 銘“オルトロス”。

 炸薬、魔力炸薬は勿論、液化、気化、固形、ありとあらゆる炸薬と打ち出し方式に対応し、有効射程は最大2400mと言う、常識を逸脱した“魔術師の工芸品”である。

 勿論弾頭も、様々なものに対応している。魔力結晶、通常弾頭、水銀、貫通、炸裂、魔法添付式・・・。必要ならば弾丸を打ち出すその瞬間に魔方陣を書き込むことすら可能。 拳銃を使う魔法使いにとって、コレほど便利で高性能な・・・扱い切れないほどの性能の銃は無いだろう。

 

「何発打たせる気だよあのトンチキ・・・。」

 壁に背を預けながら、弾丸を込めるジェーン。 テンガロンハットを目深に被りなおしながら、只管にダルそうな顔で毒付いている。

 あのトンチキと言うのは、無論英児の事であった。 手数の多さと回避力にものを言わせるジェーンに対し、英児の戦術は鉄壁と一撃必殺。 決着が付く時は一瞬だが、長引けば永遠に続いていくパターンの典型ともいえる組み合わせだったりした。 普通の人間同士であれば一発のダメージが致命傷に成ったりするのだが、御互いプロである。そうそう簡単に傷は負わないし、負ったとしてもいくらでも回復方法を用意してあるのだ。

「このまま行くと共倒れか。 ・・・それは、だめ・・・あたしは・・・。」

 急に無表情になったかと思うと、片言のようなたどたどしさでブツブツと何事か呟き始めるジェーン。 が。ゴカァン! と、後頭部を寄りかかっていた壁に叩き付けると、全身から気だるさを放ち始める。

「あぶねぇ〜・・・。 まじあぶねぇ〜。クッソ。こんな時にこんなことしてる暇ねーんだってのに。 こっちがあぶねーよ全く。」

 ダルそうでありながらイライラしている感じが滲み出ているという、実に器用な顔をするジェーン。

「あっちまだ本気出してないみたいだしなぁ。 こっちも拳銃一丁しか使ってないけどさ・・・。」

 と、一人呟いていたジェーンの耳に、ベシャッ と言う間抜けた音が入ってきた。見れば、アッシュが何も無い所でこけているではないか。

「あのクビがツカマらねーのは、ぜってー賞金稼ぎ同士が潰しあうからだ・・・。」

 

「相変わらずやりやがるぜジェーンの奴・・・!」

 壁に背を預けながら、英児は楽しそうに呟いた。自慢の装甲と剣のコンディションを見、満足げに頷く。

 英児の装備のエネルギー源は、英児自身の感情の高ぶりだった。 いまのように装備に魔力が満ち満ちているということは、それだけいま興奮状態にあると言うことである。

「御互い壁越しでもあっちは魔術師だからな。 こっちの動きは見られてるだろうし。落ち着いちゃいらんねーってのは・・・ちと辛いか。」

 コキコキと首を鳴らしながら、英児は今の状況を分析し始めた。

「御互い本気もなにもだしちゃいねぇ。当たり前か。クビ巻き込んだらお終いだからな。別に潰しあいしてるわけでもねーンだし。 問題はどうやって・・・いや・・・なぜ・・・。」

 呟く英児の声が、徐々に小さくなっていく。 それに呼応するように、装甲のアカがどんどんとその色を失っていく。 と。「チッ!」と、英児は舌を鳴らすと、「うおぉぉぉぉ!!」 と、一声空に向かって吼えた。 すると、次の瞬間には装甲がその色を燃える様な鮮烈な赤に染まりあがる。

「くそ・・・! いまはそんあこと悩んでる場合じゃねーってンだよ!! 熱く! 熱く!! 熱くだチクショウ!!」

“もといた世界では冷静沈着と言われていた自分”を鼓舞して、無理矢理に感情を高ぶらせる英児。

「もう良い。次で決めてやらぁー。様子見なんて俺じゃねぇ。一発派手に決めて、きっちりクビもとっつかまえる!」

 と。一人気合をしれていた英児の耳に、ベシャッ と言う間抜けた音が入ってきた。見れば、アッシュが何も無い所でこけているではないか。

「野郎が捕まってねぇーのは、賞金稼ぎが潰しあうからか・・・。」