博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン

 もう何年も前になる。

 ジェーンはどこにでも居る、ストリートチルドレンだった。

 都市国家であるレニスでは、そう言った子供たちを引き取り、養育する施設があった。 キチンとした制度も環境もありながら、ジェーンはそれを拒んだ。

 理由があったわけではない。 飼いならせれるのが嫌だったのかなんだったのか。幼心に、あそこに行くのだけは嫌だと思っていた。

 パンを盗み、着るものを盗み、飲み物を盗む生活を、ジェーンは当たり前のようにしてきた。 盗み方すら、先輩ストリートチルドレンから盗んだのだ。

 徹底的に盗み、したい事をして、好きなように生きていたジェーンが、Dr・フェネクスに出会ったのは。彼女が5歳かそこらのときである。

 

「ふむ。ものとりかね?」

「そう。 たべものおいてけ。」

「断るね。 私も久しぶりの食事なのでね。 まあ、どうしても欲しいというならば、おすそ分けしないでも無いが。」

「わけるな。 ぜんぶとるから。」

「施しは受けないと言うことかね?」

「? もらうのはきらい。 じぶんのぶんは、ちからずくでうばう。」

「はっはっはっは! なかなか豪胆な少女だね君は! よかろう。ならば私も遠慮はしない。奪われないために、君に失礼の無い様お相手しよう! しかし、いま私から奪える食料はたかが知れているよ。 君が勝ったあかつきに奪い取れるであろう食料も、実に微々たる物だ。どうだろう? 私はこれから研究室へ帰るのだが、その私の後を付け、大量の食料を視認した後私を倒すというのは。」

「・・・? んん?」

「要するに、私の家で私を倒した方が、御腹が一杯になるということだね。」

「・・・・・・。」

「警戒しているのかね? 無理もないね。君は僕が冒険者であることを知っているようだね?」

「ずっとあとをついていった。」

「冒険者協会の建物から出てここまで、ずっとだったね。 いやいや。中々気がつきにくい隠れ方をしたものだね。感心したよ。 そして、安易に私のテリトリーに入ろうとしないのも、良い判断だね。  ふむ。 君は、労働に興味が有るかね?」

「ろうどう?」

「私のうちに来て私を手伝ってくれ、と言う意味なのだがね。 こう見えて私は研究者だね。 色々と仕事が多いのだよ。 勿論、労働に見合った対価はお支払いするつもりなのだがね。 なんなら、通勤し易いように住居も貸そう。悪くない条件だと思うのだがね?」

「・・・? んん?」

「つまり、君の“力”で私を手伝い、“報酬”を“ぶん取り”たまえ。と、言う意味なのだがね。」

「ちからで、ぶんどる。」

「そうだね。」

「やる。」

「ふむ! 契約成立だね。 案内しよう。付いて来てくれるかね?」

 

 こうして、二人の妙な共同生活は始まった。