博士の風変わりな研究と飯のタネ(12)

 六発装填のリボルバーでありながら、ジェーンが操るその銃は、まるで機関銃のように弾を吐き出し続けていた。 長袖の袖口に仕込んだ仕掛けによる弾丸装填と、まるで機械のような正確さで動く指が、その速射を可能にしている。

 常人では不可能な指の動きだが、並外れた訓練量と魔法による強化でもって、ジェーンはその人外の技を立て続けに行っていた。

 一方、それを避け続ける英児の能力も、目を見張るモノが有った。 彼のパワードスーツ“アーマー・オブ・ディープレッド”は、複数の魔方陣と添付魔法を詰め込んだ、“着る強化魔法”とも呼ばれる類の代物である。 施された装甲には、対衝撃、対刃、対熱、対寒、対精神魔法、対干渉魔法。その他ありとあらゆる、考えうる限りの防御魔法と。行動補助、反射神経鋭敏化、筋力補正、集中力維持など、同じくありとあらゆる補助魔法が組み込まれていた。 とは言うものの、所詮はただの強化服。使うモノに実力が無ければ宝の持ち腐れである。 その点については、英児の実力はまさしく超一流であった。

 マスター&スレイブ方式と言う、着用者の動きをリアルタイムでトレースしながら、オーガ並のパワフルさを持って再現すると言う“アーマー・オブ・ディープレッド”の特徴をフルに生かし、ビルの壁面や魔力灯を足場にした三次元の動きでジェーンの弾丸全てを避けきっている。着地の瞬間や誘い込み、兆弾すら利用して弾丸を叩き込もうとするジェーン。その技術は化け物並だったが、英児もまた化け物だった。絶対に避けられないたんミングで打ち込まれた弾丸すら、英児は手にした剣で全て叩き落して見せたのだ。 無論。こんな芸当はいくらパワードスーツを着ていたからと言って、出来るものでは無い。

 二人が戦っていたのは、アクアルートの中心街から離れた、建設中のビルが立ち並ぶ区画であった。戦っている理由は簡単。 賞金首を巡って争っているのだ。

 御互い、面倒臭い相手に会った。と、内心毒付いていた。 何しろ御互いこうと決めたら一歩も引かずに突っ走る性格である。 互いにDr・フェネクスを通じでの知人同士、相手の腕が尋常でない事も分かっていた。 正直戦いたくなかったが、そうも行かない。ここで相手を倒しておいた方が、あのちょろちょろ動き回る賞金首を捕まえるのには都合がいいのだ。

 英児が剣で衝撃波を飛ばせば、ジェーンは魔力結晶弾頭の特殊弾で持ってそれを迎撃し、また、それが逆に成る事もあった。高熱量の高速弾として、音速を超える速度で打ち出されるジェーンの魔力結晶弾頭だったが、英児はそれすら剣で叩き落して見せた。 だからと言って、接近戦主体の英児にとって、名うての拳銃使いであるジェーンは消して戦い易い相手ではない。 近づこうとすれば牽制され、隠れようとすれば出し抜かれかねない。 かと言って、ジェーンが有利な訳でもなかった。普通の金属弾頭では傷一つ付けられない英児の“アーマー・オブ・ディープレッド”相手では、自慢の魔力結晶弾頭を使わざるを得ない。しかし、相手はそれを叩き落しすらするのだ。

 近づけば英児の勝ち。 隙ができればジェーンの勝ち。 そんな図式である。

 この戦いは長引く・・・。 そう覚悟した二人は、肝心のターゲットに目を向けた。ターゲットはこの場から何とか逃げようとするものの、二人の戦闘が激しすぎるためか、足が竦んで上手く逃げられない様子だった。タダでさえ激しい爆風や魔法の余波に呷られて、ワタワタとしていた。

「う、うわぁ〜!」そんな情けない声と共に、何も無い所で可愛らしくぺちっと転ぶターゲットこと、アッシュ。 どうやら自分の足に躓いたようだった。

「うう・・・いたいですぅ〜。」

『まじかよコイツ・・・。』

 目を潤ませながらぶつけたらしい鼻の頭を抑えるアッシュに、戦いながらも思わず異口同音に呟くジェーンと英児だった。