博士の風変わりな研究と飯のタネ(5)

「ターゲットの名前は“アッシュ”。 種族はデーモン族で、年齢は16歳。 ま、あの種族は寿命がエルフ並だから、まだまだガキってところだね。賞金がかかった理由は不明。ただ、この依頼主がビックリ。」

 携帯通信機を片手に、ジェーンは人通りの多い大通りを歩いていた。 高層ビルの立ち並ぶ場所であるだけに、彼女のように携帯通信機を使いながら歩く人物は少なくなかった。

「デーモン族にしては随分すっきりした頭をしていたね。あの種族は頭に羊っぽい角が生えていたと思ったのだがね。」

 通信機から聞えてくるのは、やたらと大人びた少年の声。無論。Dr・フェネクスだ。

 ちなみに、彼等が持っている通信機は割とポピュラーなもので・・・平たく言えば携帯電話のような普及した通信機器である。

「ま、デーモン族って言っても、Drみたいな悪魔ってわけじゃない見たいよ? ただ、伝説に出てくるデーモンにクリソツの外見で、魔力のある種族ってだけでさ。 コウモリ系の翼に、羊系の角。それに、鋭い八重歯。 それに彼まだ若いから、角は生えて来て無いみたいね。」

「ほぉ〜。 で。そのびっくりな賞金をかけた依頼主とは、誰なのかね?」

「それがね。個人じゃないんだよ。 元々この賞金はデットオアライブじゃないのよ。生かしたまま捕まえて欲しいってものなの。多分ポイントはそこだと思うんだけど。 この金額は賞金狩ギルドに出された同じ依頼をまとめた結果の金額なんだとさ。 つまり。複数人が同じ人物を捕まえてくれと依頼してるってこと。」

「ほぉ〜。大勢の人間に生け捕りにされそうになっているわけだね。 なかなかエキサイティングな人生ではないかね。 それほどまでにうらまれるような事をしたのか・・・はたまた大勢の元恋人たちに追われているのか。 彼はなかなか魅力的な顔をしていたからね。世の女性陣がころりとやられてもおかしくないと思うね。 ふむ!彼にならば“子悪魔くんの触覚型多機能ヘッドセット”を託せると思うのだが、どう思うかね?」

「知らん。つか、またそんなピンポイントなアイテムを・・・。」

「ふっふっふ。 で、私はナニをすれば良いのかね?」

「上から見て、ターゲットを探して。知らせてくれれば、こっちで捕まえるからさ。」

「ふむ。なるほど。それで・・・。」

 Dr・フェネクスは一つ頷くと、トコトコと歩き・・・。自分の足元を覗き込んだ。

「私はこんな所に上がらされているわけだね?」

 足元。地上百数十mの高層ビルの屋上から下界を眺めつつ、「しかし。この中から写真でしか見たことのない人物を見つけるというのは、骨が折れると思うのだがね。」

 そんなDr・フェネクスの言葉に、ジェーンはこともなげに一言。

「Dr、鳥だからだいじょうぶでしょ?」

「ふむ。まあ、確かに鳥ではあるのだがねぇ。」

 微妙に納得がいかないものの、引き受けたからには仕事はこなすのがDr・フェネクスの流儀だった。 仕方なく彼が掛けている眼鏡を望遠モードに切り替えようとつるの部分に手を伸ばしたその瞬間・・・。

 ドゴーン!! と言う爆音と共に、真っ黒な煙がDr・フェネクスの視界に飛び込んできた。

「お〜。 凄いね今のは。攻撃魔法だよ。」

「はぁ?! 街中で?!」

「もう一つ凄い事があるね。」

 カチカチと眼鏡を操作しながら、特に驚いた様子も無いDr・フェネクス。望遠機能を作動させてのか、その眼鏡がまるでモニターのように何分割もの画像を映し出す。

「ターゲットが爆発に巻き込まれているね。 彼を追っているのは我々だけではないようだね。」