博士の風変わりな研究と飯のタネ(2)

 “英雄王国 レニス”。 その外れにある港町、“アクアルート”。

 海上交通と航空交通の拠点であるこの街は、単純な町の名前の通り“水の道”であった。

 船便の他に、水上から飛び立つ飛行艇や、魔法動力を使用した飛行機などの駅として栄えるこの町には、世界中から実に様々なモノが集まる。

 それこそ物から人から・・・モンスターから厄介ごとまで・・・。

 

 

「やべぇ〜・・・。マジ目霞んできたし・・・!」

 昼間にも関わらず、人気の全く無い寂れた倉庫街を、一人のガンマンがフラフラと歩いていた。 西部開拓時代を思わせるテンガロンハットに、真っ赤なスカーフ。履き古したジーンズに、何故か迷彩柄で大量の弾丸がむき出して固定されたチョッキを着用。止めとばかりに腰に下げているのは、大きな2丁のリボルバー拳銃が固定されたガンベルトだ。

 一言では言い表し難い風貌の彼女の名は、“魔弾”のジェーン。 れっきとした女性である。 常にどこか締まりの無い緩んだ表情をしている彼女だが、それを差し引いても余りあるほどの美貌を有していた。無骨な武具とだぶついた服装にも拘らずこれでもかと自己主張しているその姿態は、艶かしいと言う言葉を使っても差し支えないだろう。

 そんな彼女は優秀な魔術師であり、自らが扱う拳銃弾に様々な魔法を添付して戦う賞金稼ぎであった。 実力の程は、彼女の二つ名が雄弁に語る通りだ。

 ぐ〜。

「うぐっ・・・! 限界へのカウントダウンが・・・!」

 緩んでいながらも、かなりヤバメな顔色で呻くジェーン。 内臓系をやられたような顔色でよたよたと歩く姿は、その装備と相まって、息も絶え絶えな負傷兵に見えなくも無かった。

 もっとも。負傷してるわけじゃなくて腹が減っているだけなのだが。それはもう、“ぐ〜”と言う音から察していただけた通りに。 まあ、別の意味で内蔵をやられている訳ではあるが。

 だだっ広く人気の無い倉庫街を、フラフラと進むジェーン。

 彼女が向かっているのは、一つの倉庫だった。 そこには彼女の師匠であり、尊敬する一人の魔道士が住んでいた。 そう。彼女は空腹のあまり、飯を集りに来たのだ。

「お。着いた・・・。相変わらず派手だねぇ〜。素通りしたくなるね。いやマジで・・・。」

 空腹のせいで幻覚でも見えているのか、誰にとも無く話しかけながら、目の前の倉庫に入っていく。

 彼女の入ろうとしている倉庫には、こんな看板が掲げられていた。

 “Dr・フェネクス研究所 兼 個人冒険小屋”