博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

「・・・なかなか興味深い行動だと思うのだがね。」

「ん。」

「私の見立てが正しければ、それは銃だと思うのだがね? どこかから奪ってきたのかね?」

「つくった。」

「ほう! どうやってだね?」

「じしゃくでさてつあつめた。」

「ふむ。砂鉄。 まさか、材料全てそうして集めたのかね?」

「ん。」

「成型は・・・?」

「とりのつかった。」

「ふむ。確かに私の研究室にある器具で製作可能だと思うのだがね。 使い方は何時習ったのか不思議だと思うのだがね?」

「しつじ。」

「執事君が教えてくれたのかね?」

「ん。」

「ふっ・・・っはっはっはっはっは! 通りで知らない間に起動しているわけだと思うのだがね! なるほどなるほど!」

「けんじゅうのつくりかた。 ぬすんだ。」

博士の風変わりな研究と飯のタネ(42)

 “アクア・ルート”に幾本も通る道路上に、奇妙な光景が広がっていた。

 重武装した三十人以上の人物が、鋼鉄製のワイヤーでがんじがらめにされて転がされているのだ。 数人こそ丁寧に捕縛されているものの、大多数はまるでアニメにでも出てくるかのような大雑把なぐるぐる巻きにされていた。その大雑把ッぷりは、見るものにそれをした人物の「こんなにいるのに一人一人縛るのとかありえないからっ! 面倒くさいからっ!」と言う思いをダイレクトに伝えているようだった。

 良く見ると、縛り上げられている人物達は総じて高校生くらいの男女で、種族もまちまちだった。

 そんな彼らを縛り上げて転がしたと思しき人物が、仁王立ちで彼らを見下ろしていた。 白に赤のラインが入った、やけに御目出度いウィンドブレーカーのズボンをはき、上半身裸。恐らくウィンドブレーカーの上であろうモノを腰に巻いたそのエルフ族の男は、どういうつもりかアスファルトの上だと言うのに素足であった。 エルフでは珍しい黒髪黒瞳で、顔もどちらかと言うと東洋風の顔立ちだった。

「まったく手間取らせやがってっ! なに?! なんなのお前ら! なに、考えてるのその年で街中で暴れちゃってまったくっ!若けりゃ何でも許されると思ってるの!? 若さゆえの過ちじゃすまねーんだぞ何でもわよぉっ! そらお前人生そう上手くいくこともあるよ? あっちゃうよ人生色々だから! 何事も順風満帆世は全てコトも無しでころっと上手く言っちゃうこともあるよ?! でもそう言うのは滅多ないでしょ〜、滅多に無いでしょーよっ! オイタすりゃ俺みたいな大人にふんじばられて叱られるんだよっ! 大体なんだお前らその装備は! あれか! 今流行のあれなのか?! 政府とか裏組織とかに訓練を施された少年少女戦闘集団的なあれかぁ〜っ!」

 まるで鬼のような形相で息継ぎもせず捲し立てるエルフ族の男に、転がされている連中は竦み上がり、今にも泣き出しそうに震えていた。 どうもよほど手ひどい目に合わされたらしく、何人かは白目を剥いて気絶したり、「あ、おほしさまがみえゆー」などと現実逃避気味のものまでいる始末だった。

「そ、そんなアニメやゲームに出てくるような感じのアレじゃありません! 俺達、レニス王国の軍学校の生徒なんです!」

 転がされているものの一人が、やっとの思いと言った様子で声を上げた。

「俺ら、今年卒業で! クラスの奴らと、誰が一番実戦に出ても耐え得る実力なのかって話してたら、喧嘩になって! そしたら丁度、アクア・ルートにすげー賞金首がいるぞって話に成って!」

「それで? 誰が一番最初にそいつを捕まえるか競争になったとか?」

「そうです。」

「それも十分漫画かアニメだろうが!!」

 思い切り怒鳴りつけながら、エルフ族の男は上着のポケットに手を突っ込むと、折りたたみ式の携帯端末を取り出した。パカリと二つ折りにしていたものを元に戻すと、携帯電話のカメラ機能よろしくな位置についているカメラを、転がしている連中数人の顔に向けた。 ボタンをいくつか操作すると、中空に半透明なウィンドウが表示される。 エルフ族の男はそれをしばし眺めると、深いため息を吐き出した。

「本当に軍学校の生徒でやんのなお前ら。装備も学校の奴持ち出してんじゃねーかよ。」

「あ、あははは・・・。」

 あきれ果てたようにため息を吐くエルフ族の男に、軍学校の生徒は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「しかたねぇ。 本当はめんどくせぇから放置し一番隊の連中にでも回収してもらおうかと思ったんだが。そう言うことならそう言うわけにもいかねぇな。 お前ら、俺が補導したコトにして、一度うちの隊舎に来てもらうからな。 その後先生に連絡するから。たっぷりお仕置きしてもらえぇ。」

 こきこきと首を鳴らしながらため息を吐くエルフ族の男の言葉に、意識のある生徒達はがっくりとうなだれた。

「ときに・・・つかぬ事をお伺いするのですが・・・。」

「なんだ?」

 転がされている生徒の一人は、神妙な顔を作ると、恐ろしい相手に質問をするかのようにおっかなびっくり声を出した。 まあ、実際怖いのだから仕方あるまい。

「俺達、コレでも一応正規軍と同じ訓練受けてきたし、実際軍学校ってのだって方便みたいなモンで・・・ただの長期キャンプ見たいな学習内容でやってきたし、そうやって教えられて来たんですが・・・。 貴方、たった一人でこの人数殺しもしないで制圧しましたよね・・・?」

「ああ。それがどうした?」

 生徒の質問に、不思議そうに首をかしげるエルフ族の男。 良く見てみると、男はどこかを怪我しているどころか、服が汚れてすらいなかった。 言ってみれば、戦闘の形跡がまるでないのだ。対照的に、生徒達は白目を剥いて気絶するほどぼっこぼこにされているものまでいる始末だ。

「ど、どこの、どう言う御方でしょうか・・・?」

 その言葉を聞き、男はようやく合点が行ったと言うように手を叩いた。 そして、すっと背筋を伸ばすと、やたらと大きな挙動で手を合わせた。まるで僧侶のように合わせた手を胸元に置くと、先ほどまでとは少し違った、神妙な顔で名乗りを上げる。

「レニス王国 王立近衛騎士団 三番隊所属。 破戒僧 “良岩寺” 鉄斎。 だ。宜しくお見知りおきを。」

 それを聴いた瞬間、正気だった生徒のうち何人かが、白目を剥き気絶した。

「こ、こここここここ、近衛騎士団 三番隊ぃぃぃ?!」

「こ、殺さないで! 殺さないで下さいぃぃぃ!!」

「やさしくころしてー やさしくころしてー キルミーソフトプリーズ キルミーソフオプリーズゥゥゥ!!」

 どうにか正気を保っている生徒達も、まるで悪鬼を見るかのように震え上がり泣き叫び、中にはあっさり絶望しているものまで居た。

「なに。 何だよお前らそのリアクション。俺別に怖くねぇだろうが!」

「いんやいやぁ〜。 ビビらすには十分すぎんじゃね?」

 納得いかない様子の鉄斎に、唐突に声が掛けられる。 が、背後からかけられた声に、鉄斎は驚くどころか振り向きもせず応える。

「何処が! 何処がよ! 骨とかぽっきりいっちゃわない様に気をつけてたたんだんだぞ! 優しさを感じたりとか感謝とかするシーンじゃない?! ここは!」

「まぁ〜まぁまぁまぁ。 良いじゃないの仕方ないじゃないのぉ。何せあたしらあれだ・・・。」

 鉄斎に声をかけた人物は、いかにもダルそうに鉄斎の肩に肘をかけると、皮肉気な笑顔を顔に貼り付けた。 歳は、人間で言えば25〜26くらいだろうか。ジーンズ生地の短パンにタンクトップ姿のその女性は、左肩に大きなタトゥーを彫っていた。眠たげな表情ではあるが、ベリーショートの似合った美女であった。

「悪名高き近衛騎士団。なんだからさぁ?」

 そう言って、自分の肩のタトゥーを指差した。 それは、“レニス王国近衛騎士団”の紋章。そしてその周りを囲うように彫られているのは、彼女の名前だった。

「いいか? アムリッタ。 “アムリッタ・フォークブルース”。 お前とお前の相棒見たいのが居るから俺まで誤解受けるんだぞ! この間出張でマーズ行った時なんて偉い目に合ったんだぞっ! うわ〜、レニス王国はこの国を侵略するつもりなんだぁ〜、だから近衛騎士団なんかが来たんだぁ〜! ってよっ!! お前等コンビあの辺で何やった!」

「あぁ〜ん? あの辺はあれよ。私等じゃなくてマイキー達の・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないのよ。」

 アムリッタと呼ばれた女性はぺちぺちと鉄斎を叩くと、へらへらとした顔を崩さず続ける。

「ドレイコ隊長からのご命令よん。 通信機は使わない系のやつ。」

 その言葉に、鉄斎の表情が一気に引き締まった。 通信機は使わない。つまり、“通信機は使えない内容の命令”という事だ。

「一、二番隊に恩を売りたいんだって。 出来るだけ沢山伸して転がして・・・一番隊に回収させろってさ。手はずも整ってっからってさ。」

「・・・隊長じゃなくて副長の指示か・・・。」

「そゆこと。 他の隊の事まで気にして動く人じゃないからねぇ。 副長に言われて“じゃあ、そうしようか?”ってパターンだわねぇ〜。」

 鉄斎は「そうか・・・。」とつぶやくと、首に手を当てがい、二〜三度こきこきと鳴らした。

「じゃぁ〜あ。 俺も暴れにいくかねぇ。 お前は相棒と合流だろ?」

「そーよぉ〜ん。 で、学生さんたちはどうするの? 放置?」

「それしかあるめーよ?」

 言いながら、鉄斎は腰に巻いた上着を解くと、素肌の上にばさりと羽織った。

「という訳で〜。 お前等は一番隊の連中にみっちりしかられとけや。 人生の酸いも甘いもの酸いの部分を思うさま体感してくれぇ。」

 そんな鉄斎の言葉に、正気を保っていた残りの生徒達も、次々に昏倒していくのだった。

今週の国王様。 浴場の受け付けでマッタリ。

レニス王国のレニス王が住まう城には、共同浴場があるのは有名な話である。 ある種観光名所でもある王城にあるこの共同浴場は、騎士から普通職員、果ては宰相から観光客まで利用可能な施設である。

そんな共同浴場の受付嬢“ミーア・クロコップ”は、退屈そうに欠伸をかみ殺すと、ちらりと腕時計に目を落とした。

観光もオフシーズンで、城の一般業務に当たっている連中も仕事中なこの時間帯は、一日でもっとも暇で退屈なひと時である。 なにより、今日はいつにもまして暇だった。いつもたむろしている年寄り連中は「今日はバッケンホルムの地下ダンジョンに突撃ジャー!」と訳のわからないことを叫びながら、全員で出て行ってしまった。無事に帰って来ますように。と、ミーアは思わず合掌溶かしつつ見送ってしまったことは言うまでも無い。

さて。そんなこんなで、ミーア嬢は思わず昼寝してしまいそうなほど暇であった。なにせお客はもちろん、人っ子一人居ない惨状なのである。 掃除や湯加減などはもちろん、販売業に至るまで自動化された公衆浴場には、話し相手になるような人間は一人としていない。 売店や掃除をしているゴーレムに話しかけても良いのだが、連中は仕事が好きらしく、仕事をしたい気持ちと自分に付き合ってくれようと言う良心で板ばさみに成った切なげな顔を向けてくるので、最近では休憩中のゴーレムにしか声が掛けられなかった。 ちなみに浴場で働いているゴーレムは最新型で、ある程度のインタラクティブも可能であり、見た目もなかなかにプリティーでミーア好みだったした。

「あ〜・・・あ。そうだ。ポテチあったな。ポテチ。」

ぽむ。と、手を叩くと、ミーアは足元においてあったバックからポテチの袋を取り出した。本来は仕事中にお菓子を摘む等問題外の、上司が見たら怒られる行為トップテン上位ランカーな行為なのだが、どうせ今はだれも来ないのだ。

バリバリと袋を開けると、ミーアは「いっただきまーす。」 と手を打ち鳴らした。 と、そのときだった。

「美味そうだな。」

突然かけられたやたらと威厳と風格の漂う落ち着いた声に、ビクッ! と反応するミーア。 しかし、顔を上げても目の前に人影らしきものは見当たらなかった。

「・・・え?」

もしやと思い腰を挙げると・・・両手両足を手錠でつながれた挙句、鉄製の鎖でがんじがらめにされ転がっているレニス国王の姿があった。

「なんだ国王様ですかー。あー。びっくりした〜。 何処のお偉いさんかと思いましたよ〜。」

ほっと胸をなでおろすミーア。 無論、この国で一番のお偉いさんがレニス王であることは、彼女もわかっている。

「すまんな。脅かしたか。 アルベルトに賓客が来るから動くなと言われて束縛されてな。逃げ出したのは良いんだがどうにも魔法やら色々添付された束縛具らしくてなかなか解けんのだ。」

「国王様らしく無理やり引きちぎっちゃえばいいじゃありませんか。」

「無理やり解こうとすると爆発するように出来ておるらしいのだ。爆炎と爆音で見つかろうものなら何をされるかわからんからな。眉間を剣で連続強打くらいのことはされるかも知れん。」

「あははは。 あんまり宰相様虐めないで上げてくださいよー。 いっつも疲れきった顔でお風呂入りに来るんですから。」

「うむ。考えておく。」

「ん。あ、ポテチ食べます?」

「頂こう。」

即答した国王に、ミーアはゆるゆると近づきしゃがみ込むと、お菓子をつかみ、レニス王の口の押し込んだ。

されるがままのレニス王はもっしゃもっしゃとお菓子を噛み砕くと、ゴックリと飲み込んだ。若干蛇が獲物を丸呑みにするっぽい挙動を見せると、まったくの無表情で「うむ。美味い。」と満足そうに頷く。

「あははは! 良かったです。コレ新製品らしいんですよ。」

「そうなのか。今度買いに行ってみるとしよう。」

うむうむと頷くと、レニス王はのそのそと動き出すと、尺取虫のような挙動で出口に向かって進み始めた。

「あれ? お帰りですか?」

「うむ。汗を流そうと思ったんだが、良く考えたらこの姿では風呂に入れんからな。」

大真面目にそう言うレニス王の言葉に、ミーアは思わず噴出すと「あはははは!」 とはつらつとした声を上げて笑った。

「じゃあ、それちゃんとはずせたら、また寄って下さいね。 またお菓子用意しておきますから。」

「うむ。楽しみにして置く。 またな。」

そう言うと、レニス王はその動きからは想像も出来ないような軽やかな動きで共同浴場の自動ドアから出て行くのだった。

「相変わらず面白い人よねぇ〜。」

思わずくすくすと笑いながら見送るミーア。 と、腕時計に目をやり、あわてたような声を出した。 もうすぐ、城警備の一部所のローテイションの時間である。一日の疲れを癒しに来る兵士達のために、準備を始めなくては成らない。

「さ、みんな〜! 疲れたお客が来るわよ〜! 準備してぇ〜!」

『ぷいにゅ〜!』

大声で指示を出すミーアに、良くわからない声で答えるゴーレムたち。 そんな様子に、思わず口元をほころばせ、目を細めるミーアだった。

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

「ん。 ん。 んん。」

「ふむ・・・。 いつになく真剣な顔だと思うのだがね。」

「なんだこれ。」

「それは拳銃だね。」

「つよいのか?」

「うーむ。普通は剣よりも強いと言われていると思うのだがね。ちょっとした防具で簡単に防がれてしまうから、なんともいえないと思うのだがね。 まあ、使うものの力量次第だと思うのだがね。」

「りきりょう。」

「力の量。 要するに使う力が有れば強いと言うことだね。」

「ちからがある。 と、つよい。」

「うむ。」

「・・・・・・・・・ん。」

「はっはっは! それには弾が入っていないからね。ポケットにしまっても意味が無いと思うのだがね?」

「たま。」

「銃は弾を飛ばして敵を倒す武器なのだがね。 ふむ。食事が終わったら、一つ銃について講義しようと思うのだがね。 こう見えて私は昔、大学の教授もしていたのでね。」

「あ〜・・・・・・ん。 たべもの。おわったら、じゅう。」

人外魔境な連中を整理整頓。

“城落しの”ガルシャラ・カーマイン

字の通り城を一人で落としたこともある化け物。

種族、年齢一切不明。

二本一対のショートソード、巨大なブレード、規格外の金属鞭を操ることから、“四つ牙”とも呼ばれていたが、今では殆ど“城落し”。

得物や服装はすべて黒一色。別に意味があるわけじゃなく、単に冒険屋と言う家業柄汚れが目立たないようにする為らしい。

常にグラサンを掛けているが、理由はこれまた不明。本人に聞くと、「眩しいから」「バジリスクの血が混じっているから」「目が無いから」と適当な答えが返ってくる。

愛剣である巨大なブレードは“動魔剣・餓躯”と言う銘の業物。ガルシャラの意思一つで、実は30m級の機動鎧である所のその正体を晒す。

行動、思想ともに基本的には穏やかな常識人ではあるが、そう言う人間の常か、怒るとむちゃくちゃ怖い。

実際に彼を怒らせた国が、一つ地図の上から消えている当たり、その怖さのハンパ無さは推し量れる。

“聖剣使い”レニス・スタッカート

魔剣を扱うものを魔剣使いと言うように、聖剣を使うものを聖剣使いと呼ぶ。レニスは複数の聖剣を持ち、それらすべてを使いこなす聖剣使い。

聖剣は普通の魔剣と違い、使用者の力を触媒として力を発動させるものが多い。詰まるところ、強い奴が使えば強く、弱い奴が使えば弱い。 レニスが“不可視の手 インビジブルパワーズ”と呼ばれる、一定範囲内のものに対してサイコキネシスのような不可視の力を加えられる聖剣を要した場合。周囲五キロ圏内のありとあらゆるモノを粉砕することが可能だ。発生源から近いほど力を発揮する為、もし半径一キロ圏内であるならば、移動島クラスのシールドも意味を成さない。

どんなときでも崩さない無表情は、実際に生まれてからこの方ピクリとも動いたことが無い。別にそう言う種族と言うわけではないのだが。

当人が宣言してはばからない通り、思考は基本的に冒険屋だ。「あまり動かないからついに腹に来たのか。脂肪が。メタ・・・メタ・・・メタ何とかになるぞ。」とかほかの国の国王に平気で言っちゃうその胆力は、冒険を生業にしていた頃に付けた物。

“黒の”トレット・レラルム

死して未だに恐れられる男、“ホーリー・クライス”の唯一の弟子。

台風を拳で吹き飛ばし、移動島を宇宙に放り投げる破天荒で常識無視なしな師匠に付いていたせいか、実に温和で常識に満ちた人物。髪が長いのと整った顔立ちから女性に間違えられるが、一応男性。

彼の戦闘スタイルである“魔闘術”は、“拳にありったけの魔力を込めて殴りつける”と言う、シンプル且つダイナミックな技、“魔拳”を基礎にして奥義としており、その破壊力はまさに“一撃必殺”。 ちなみに、トレットが掲げる看板は、“多撃必勝 一撃必殺”である。要するに一撃必殺を乱発して必ず勝つ。と言うこと。

基本的に曲がったことが大嫌いで、困っている人がいたら助けるのが当たり前だと思っている類の天然善人。 普通ならば「青二才が!」などと悪役に一蹴されるような青臭い正義感をかざすものの、本気になれば機動鎧をまとめて十数機吹き飛ばす拳撃を乱発するトレットを一蹴出来る悪役は滅多にいない。

そのルックスと人柄から無闇にモテるが、本人はおんなっけゼロ。 一人前に成る為には、まだまだ色恋に現を抜かしている暇は無い。と、言うのが本人談。

自分の実力を極端に過小評価しているご様子。 まあ、師匠や周りの人間がトレットに輪を掛けて人外だったゆえに、仕方ないか。

ホーリー・クライス

数年前に死んだ人族の男。

どぎつい三白眼と、チンピラ口調から、町のアンチャンにしか見えない風貌であるにもかかわらず、その実力はいまや教科書に乗るほどであった。

拳を振るえば大地が割れ、空気が震えたと言われるほどの豪腕の持ち主。実際に割られた大地が、今では数箇所観光地に成っている。

どこの国にも所属せず、道路工事と喧嘩を生きがいに生涯を過ごした。どういう訳か肉体労働、それも主に“働くお父さんお母さん”を非常に好み、労働者の地位向上に無駄に尽力を腕力で尽くしたりしていた。

その一方、国家間戦争が起こりそうになったと見るや、両方の国に一人で乗り込み、軍隊に壊滅的打撃を与え無理やり交渉の席を設けさせるなど、その行動原理は謎に包まれている。

彼が死んだとき、殆どの者がその死を信じなかったと言う。 彼ほどの魔力の持ち主ならば、不死法もたやすく習得出来ていただろうと考えたからだ。 しかし、クライスは三十台後半と言う若さで亡くなった。 先に逝った彼の妻との間に出来た一人息子は、どう言う訳か“勇者”を名乗り、父と同じように自由気ままに世界を放浪している。

彼の友人の中には、未だに彼が尋ねてくるのを待っているモノもいる。あいつが一回死んだぐらいで落ち着くはずが無い。そのうちあっちに飽きたら、こっちに顔を出しに来るだろう。と、彼らの談。 実際、次元の壁を素手で引き裂いたと言う実績のあるクライスだけに、本当にやってしまいかねないところが怖い。

彼があの世から遠征に来る時が来るのも、遠くないのかもしれない。

マービットとハウザーの過去なのよ。

 今二人の関係は非常に安定している。どちらにも良い影響を及ぼしていると言えるだろう。 事すれば発狂しかねないと思っていたアリシアの精神状態も、守るべき対象が出来たことで目に見えて安定した。

「オレは今がベストだと思うんだよなぁー。 っつーか恋人ってなによ恋人って。ドンだけませてると思ってるのさ。ぼけてんじゃねーのかお上。なに?あれか? じいさんなのか? じーさんなのかお決まり的にお上。」

「あんまり悪口言うとまずいんじゃない?」

「いいんじゃん寝室で愚痴こぼすくらい。 で、はやかったな? マービット。」

 突然掛けられた声に、アービンは寝転がったまま応えた。

 その様子を見て、わざわざ天井に張り付いてまで姿を隠していたマービットは、つまらなそうに舌打ちをしてベッドの上に落ちてきた。背中からドカンとまったく受け身も取らずにベッドに転がると、スックリと立ち上がった。

 アサシンに成るために訓練されている子供たちは、当然のように逃げ出さないように厳重に管理された空間に置かれている。普通は逃げ出すことも、入り込むことも出来ない。

 だが。マービットは普通ではなかった。 アービンがマービットを担当して暫くのことだった。 なんとマービットは夜中にひょっこり、アービンの部屋に現れたのだ。 監視員にも、監視装置にも気が付かれる事無く。

 そして今では、こうして気が向いたときに部屋に出没するようになっていた。

 無論、ほかの者にばれれば厳罰モノではあるが・・・ばれなければそれは何も問題が無いと言うことでもある。

「なにか不穏な話が聞こえたよ。 ボクとねえさんがどうとか。」

 いつもの妙にニヤ付いた笑顔を浮かべながら、マービットは寝転がるアービンに顔を向けた。 ツインサイズのベッドである為か、二人で上に乗っていも手狭に感じないそれの上で寝返りを打つと、アービンは面倒くさそうに顔をしかめた。

「お上の打診だよ。気にするほどのことじゃないっての。 現場監督の俺のほうがまだこのカミッキレより権限があるの。」

「ほんと?」

「ああ。 ぎりっぎりだけどな。」

 なぜか自慢げに言うその様子に、マービットは「なにそれー、なさけないー」と言って、笑った。

「で? お前はどうしたい。」

 アービンの問いかけに、マービットは小首を傾げるようなしぐさを見せた。

「ボクはどっちでも良い。ねえさんのこと好きだし。 色々な意味で。」

「意味深発言だなオイ。幾つだお前。」

「でも、ねえさんは違うと思う。好きの種類がひとつだけなんだよ。」

 珍しく真剣そうなマービットの声に、アービンはその時初めてマービットの顔を見た。

「ボク、弟だから。」

 にっこりと屈託なさそうに笑うこの少年は、一体普段どんなことをしているのか。 それを良く知っている、やらせているアービンにとって、たまにマービットが見せる“本当に”屈託無く笑う今のような顔を見るのは、苦痛だった。

 ただ思えば。こう言う時に“苦痛を感じる”から、アービンは本人の要求通り、第一線を退けられたのかもしれない。

「このシスコンヤロー。 弟歴短けーくせによー。」

 思っていることを億尾にも出さず。アービンはマービットの両頬をぶにゅぅ〜っと捻り上げた。

「ぶえぇぇぇぇぇぇ。」

 なんとも良く判らない声を上げてもがくマービットをひとしきり笑いものにすると、アービンは「それで?」と話を切り出した。

「今日はなんだ? 眠れなくて俺の顔が見たくなったか?」

「何気持ち悪いこと言ってんだよー。このオヤジー。 眠れなかったらねえさんのとこ行くよー。」

「オヤジで悪かったな。」

 ブーたれるマービットに対し、勝ち誇ったように笑うアービン。

「約束したじゃんかよー。 チョコレート〜。」

「ああ。はいはい。覚えてるよ。これな。」

 笑いながら立ち上がると、アービンは本棚の中断ほどの位置においてあった、小さな手提げ袋を取り上げた。

 凝った細工のされたそれは、高級な菓子店の名が書き込まれていた。

「それそれ! ねえさんが言ってた菓子屋の!」

 パーッと表情を明るくするマービット

「プレゼントか? しかしチョコ一個20ってどう言う事よまったく。」

「まぁまぁ。 お礼はそのうちするってばー。」

 嬉しそうに手提げを受け取ると、マービットはそれを大事そうに服の中にしまう。そして壁に手を掛けると、いともたやすく天井に張り付いた。

「それ、どうするんだ。」

「ねえさんにあげるの。決まってるでしょ?」

「お前の口にも入るだろうがなー。 アリシアは絶対に自分一人じゃ食わんぞ。」

 その言葉に、マービットははたと表情を曇らせた。

「ちゃんと全部二つずつ買ってきた? 一つしかないのがあったら、ねえさん絶対ボクに」

「はいはい。 ちゃんと全部一種類に付き二つずつ買ってきたよ。いけいけ。お子様は寝る時間だぞ?」

 アービンの言葉に、マービットはほっとしたような表情を見せた。

「じゃ、ボク帰る。じゃーね。おやすみ。」

 すっ。 っと、溶けるように闇の中に消えていくマービットを眺めながら、アービンは苦笑を浮かべた。

「用が済んだらさっさとねーちゃんのとこか。 現金な奴め。」

 独り言をぼそりと吐くと、アービンは再びベッドの上に寝転がった。

 きっと、あんなものを持っていったらアリシアは卒倒するほど驚くだろう。そしてどうやって手に入れたのか。教官に見つかったら怒られないかと、ネガティブ思考の海に沈む。 必死で宥めるマービットの姿が目に浮かぶが・・・まあ、自業自得だろう。

 それにしても・・・と、アービンは思った。どうもマービットの言っている好きは、アービンの予想の範疇を少し超えているようだった。

「お上もまんざらぼけちゃいねーってことか? まあ、ねーちゃんのほうがあれじゃあなぁ。」

 心配ばかりかける弟を気遣う姉。アリシアのことを思い出すとき最初に浮かぶ、そんなタイトルのつきそうな表情を思い浮かべながら、アービンは楽しそうに思い出し笑いをかみ殺す。

「しっかしお返しねぇ・・・・・・まあ、期待せずに待ちますかぁ?」

 マービットがアービンに「これがチョコレートのお返し」と言ってあるモノを押し付けるのは、まだまだ十数年先の話だ。

ハウザー&マービット マービットの過去なのよ

 アサシンの育成というのは、実は至極専門的な技術と知識を要する作業であった。

 何せ人を殺すことを専門にする人間を育て上げるのだ。 下手に恨みを買えば、訓練途中でうっかり反逆されて殺されてしまいかねない。 かと言って甘やかしてもいけない。 普通の人間よりもよほど強靭で狡猾で人の裏を書くのに長け、尚且つ証拠を残さず人を殺したり、情報を引き出すための拷問術にまで長ける人間を作り上げ無ければ成らない訳だから。

 厳しく、辛く、死ぬような目に遭わせつつも・・・その対象には恨まれない。 そんなスキルが、アサシン育成者には求められるのだ。

 そんな。成るのが非常に困難な“アサシン育成者”の一人が、ベットと机が一脚あるだけの自室で、難しそうな顔をして唸っていた。

 彼は元々組織付きのアサシンであったが、「まとまった睡眠が取れない」と言う理由から引退。後進の育成に性を出すことにしたのだった。 ちなみに彼、“アービン・ファフニール”は、今年26歳の鉱石人である。 生体金属と呼ばれる生きる無機物を共生相手として体内に取り込み生きる鉱物人の平均寿命は普通の人間と同じくらい。 アービンと言う男のやる気の無さがお分かりいただけるだろうか。

 このアービンは、二年ほど前から“マービット・ケンブリッジ”の飼育を担当していた。 彼が今唸っている理由は、そのマービットにかんすることだった。

 二ヶ月ほど前。アービンの判断で、一人の少女をマービットに会わせることにした。“アリシア・ケンブリッジ”。マービットの姉と言うことにする少女である。

 生まれる前からアサシンとして育成されることが決まっていたマービットには、兄弟姉妹は居ない。しかし今だ農耕を営む民が多いこの星に置いて、一人っ子と言うのは実に稀である。 優秀なアサシンはどんな場所にでも溶け込み浸透できなくてはならない。 一人っ子と言う珍しい境遇のものは、すこぶるとまでは言わないまでも不自然。幼い頃の原体験とも言える兄弟との思い出と言うのは、作り上げたり嘘で通せるほど生易しいものではない。 ならば、アサシンとして育成している子供同士を兄弟として育てレば良い。 それはアービンやマービットが所属する組織では当たり前のようにとられているアサシン育成方法の一つであった。

 しかし。後付の兄弟姉妹を引き合わせるタイミングと言うのは、非常に難しいものであった。 幼い内で無ければならない。あまり年齢が上になってからでは、そもそも原体験をさせるためだと言うのに意味が無い。

 マービットとアリシアの場合は、異例も異例だった。 何せ普通兄弟として組み合わせられるのは、“アサシンとして生まれてきたもの”ならそれ同士。が、基本なのだから。 それもそうだ。 何せ普通の世界で暮らしてきた子供たちにとってマービットのような存在は、異質な“化け物”にしか写らないのだから。

 だが。マービットに限っては、アービンの判断は定石を覆すものだった。 当たり前の日常を知るアリシア。マービットと言う個体は、アリシアからその“普通の世界”を、恐らく押し知ることが出来る知能レベルを有しているのではないか。 また、アリシアという個体は、マービットと言う化け物を容認して受け入れることが出来るのではないか。 そう考えたのだ。

 実際。引き合わせてから一週間ほどで、アリシアはアービンの思惑通り、マービットを実の弟のように可愛がり始めた。マービットもそれに甘えるようにすらなっていた。

 子供と言うのは、大人が考える以上に他人の意識に敏感である。 大人のように経験則や余計な知識、保身のための思考がない分、寧ろ子供の方が人をみるめがあるといって良いだろう。 ましてマービットはアサシンになるために育てられている個体。人間の本性やそう言う類の物を見極めるすべには長けている。 アリシアも随分ひどい目に遭っている少女だ。人間不信の塊になっていると見て良いだろう。 そんな二人が、二人とも相手に懐いている。

 兄弟姉妹として、仲が良い。仲が良い兄弟姉妹が居て、よく遊んだ。 それは組織にとって良い原体験と言える。人間社会に溶け込み、違和感無く仕事をこなすための大切な要素の一つであるから。

 だが・・・アービン以外の育成者の一人が、こんなことを言い始めた。

「アレはまるで恋人同士のように仲睦まじい」

 確かに、二人はもう分別が付いている。変な言い方をすれば、“ませている”のだ。 恋人が出来てもおかしくは無い。恋をしてもなんら問題は無い。 組織としても、恋愛は別に構わないと判断をしていた。 どうせどちらもアサシンとして動くことに成るのだモチベーションを上げるにしても、いざとい時の人質としても、そう言う対象が居るのは悪くない。

 まるで恋人の様。が、本当の恋人に。 なんら問題は無い。 だが、“姉と弟が恋人同士”と言うのは問題があるわけだ。 まさか侵入した先でうっかり、「姉と結ばれたことがあります」などと口走った日には、目も当てられない。別の意味で任務に支障が出る訳だ。 うっかり口を付いて出るのが原体験である。それを調整すつた目の行為が意味が無い。

 そう。今アービンが悩んでいるのは簡単なこと。 「マービットとアリシアの関係をどうするか。」 このまま姉弟にするのか。それとも変えるのか・・・。

 

「ていうか上もこんな堅苦しい文章でそんな内容の伝令かかんでもよかろーによ。」

 ぼけーっとした、いかにも眠そうな顔でそう毒付くと、アービンはごろりとベットに転がった。

 実際、アービンにとってマービットがアリシアに懐くだろうと言うのは、予想の範疇だった。 マービットと言う個体は、現在の同時期に生まれた中でも、飛びぬけて優秀だった。ただどう言う訳か、そう言った個体特有の無関心さが微塵も感じられなかった。 優秀で秀でる個体というのは、押しなべて何か達観したような、諦めた様な。どこか世間ズレした所が出るものであった。

 無論マービットもずれていると言えばずれているのだが・・・何と言うのだろうか。 そのずれ方と言うのが、どうにも当たり前の子供。それも無邪気な子供のようなずれ方をしているのだ。

 所謂、天然系という奴だろうか。 物心が付いていないような何にも考えていないような・・・。 かと言って、訓練の成績を見る分には、確かにほかの個体よりも優れた結果を出しているのだ。

「・・・つかみ所の無い奴だよまったくよぉ。」

 誰に言うとも無くつぶやくと、アービンはごろりとベットの上で寝返りを打った。

 アービンの見立てでは、アリシアは純粋にマービットを弟として可愛がっていた。いつもどこかそわそわと落ち着きの無いマービットの言動や態度が、元々弟がいたと言うアリシアの姉としての心を刺激するからだろう。

 では、マービットはどうだろう。 アレが感じているのは、どこか兄弟と言うものとは少し違う。アービンは、そう思っていた。 マービットは、今まで一つも“自分の物”と言い切れる、個人で所有、独占できるものを持ったことが無かった。 訓練のときに使う道具も服も。食器もイスも机も、時には呼称さえ日替わりで変えさせられたこともあった。 それが最近になりようやく、名を“マービット・ケンブリッジ”とされ、“姉”と言う目に見えて、触れることの出来る、自分とだけ特別な繋がりがあるものを手に入れたのだ。

 マービット自身も、気が付いているかは分からない。だが、マービットにとってアリシアは、“姉”であって、“姉”では無い。初めて手に入れた、言わば“マービットだけのモノ”。 “宝物”なのだ。

そういえばエープリルフールって四月バカって意味だけど、“釣りバカ”とかその辺の流れで考えるとやっぱり

「と言うわけで四月馬鹿について語らおうと思うのだがね。」

 無意味に真剣な顔で切り出すDr・フェネクスに、その場に居た全員がそれぞれの得物で突っ込みを入れた。 ちなみに面子は、ハウザー、英児、アルベルトの三名だ。

「うむ・・・。ランスやらブレードやら大鎌やらで殴られたら痛いと思うのだがね。」

「痛くしてんだよこのボケ! 様があるっていうから何かと思えば! 大体もう一日過ぎてんだよ! 一日!」

 カンガンテーブルを蹴りながら喚くアルベルト。 ちなみに四人が集まっているのは、Dr・フェネクスの自宅兼研究室兼事務所であるところの、海岸沿いの廃倉庫である。

「うむ。本来ならば四月一日に過去編あたりで私とジェーンがエイプリルフールをネタに戯れるという心温まるエピソードを掲載予定だったのだがね。如何せん忙しい上に四月一日の存在自体を当日忘れてしまうというタイムリー痴呆症状を起こしてしまってね。まあ、不幸な事故だったと思うのだがね。」

「すげぇ。開き直ってやがる・・・。 流石プロフェッサーFだ・・・!」

「どの辺が流石なんだよ・・・。」

「おお。エイプリルフールっつったら、妹に引っ掛けられたぞ。当日に。今年。」

 何事か思い出したのか、首をひねりながらそう言うハウザー。

「おお。あの妹さんか。おめーら父子に似ないで可愛らしかったの覚えてるが。」

「え? それがエイプリルフールのネタ?」

「うむ。ハウザーの妹さんとなると、そこらの騎士では肉体的にも精神的にも敵わないであろうと言う先入観が有ってしかるべきだと思うのだがね。」

「テメーら二人俺のことなんだと思ってんだゴラ・・・。」

 若干切れかけるハウザーさんでした。

「これだこれ。 俺の妹。ほれ。」

 ばさりとハウザーが机の上に置いたのは、財布から取り出した家族写真だった。 詳細は端折るが、個々最近撮ったものらしいそこに写っていたのは五人。一人は、ハウザーをそのまま数年放置したような、クリソツな父親。もう一人は、ハウザー本人。そして残る三人は・・・柔和な笑顔を湛える、美しいよりも可愛らしいと言う言葉が似合う貴婦人。まるで天使のように微笑む少女。そして、白馬に乗ればまんま“王子様”な美青年。

「・・・・・・え? なにこれ。 質の悪い合成写真?」

「王族とお付の騎士二人と言った風情だと思うのだがね。」

「すまんハウザー。知ってる俺でもそう思った。」

「テメーらマジ殴るぞ?」

 言ったら本当に殴っちゃうのがハウザーさんなのでした。

「うーむ。ぬーん。遺伝子と言うのは時に混ざらず子供を産み落とすものなのだと思うのだがね。」

「いえ、プロフェッサーF。血がつながっていないと言う可能性も。」

「正真正銘実の兄弟にお袋だ馬鹿野郎が。」

 超真顔で真剣に悩むDr・フェネクスと英児に、若干殺意を覚えるハウザーだった。

「実際ハウゼル卿とハウザーの血がつながってるのは間違いないんだがな。ビジュアル的に。」

「誰? ハウゼル卿。」

「ハウザーの親父さんだ。」

「あー。 で、この妹さんに何騙されたんだよ。」

「おお。あれだ。誘拐されたとか言って手紙着てな。すっ飛んで行ったんだが、要するにお袋がたまには実家に帰れとか言いたかったために仕組んだ事だったらしくてな。」

「ふむ。だからこの間血相を変えて走っていったのかね。何事かと思ったのだがね。」

「へぇ〜。 騙されたのに気が付いたハウザーの旦那の顔、拝みたかったねぇ。」

 ケラケラと笑うDr・フェネクスと英児。

「うっせぇ。 しかし実際焦ったのは否めなかったな。なかなか用意周到でな。 バックアップが妙にこずるい奴だったせいもあるんだが・・・。」

「へぇ〜。誰だ? それ。」

「マービットだ。」

「うわー。オチ見えたわ。」

 何か。 巨大ロボットに踏み潰される寸前の戦闘員を見つめる悲哀に満ちた目を窓の外に向け、ため息を吐き出すアルベルトだった。

 

 

 その頃。ハウザーの実家から城にいたるまでの帰り道。ずーっと“アシュラ・8”の高速移動によって引きずり倒された挙句、ハウザーの気孔術によってスタボロに伸されたマービットは・・・。

 城内にある近衛騎士団零番隊詰め所にて、ピクピクと痙攣していた。

 ふと、それまで虫の息だったマービットが、むっくりと起き上がった。そして。

「だんだんとー あまいあじがー してきたっすー。」

 どことも無い虚空を見つめ、半笑いでそうつぶやくと。またばったりと倒れこみ、今度はピクリとも動かなくなった。

 マービットがハウザーの手によって、(打撃で)強制蘇生され、またハードワークに埋没していくのは、この二時間後のことである。

リンク品

「この世界の兵器についてか。」

 そうつぶやくと、レニス王は相変わらずの無表情で、器用に唸り声だけでしばしの躊躇を演出すると、手にしていたりんごをしゃりしゃりと齧った。

 その様子に、デンノスケは怪訝そうに眉をしかめた。

「どうかしたの・・・んですか?」

「前に知人にうち(レニス王国)の軍備のことを話したことがあってな。どうもそれが軍事機密だったらしくて、アルベルトにこれでもかと言うほど殴りつけられたんだ。 どうもどこからが公でどこからが機密なのか私には良く分からなくてな。」

 真顔でそう話すレニス王を見ながら、なんとなくあったことも無いアルベルト氏の事が可哀想になるデンノスケだった。

「知るとまずいことなのか?」

 言い淀むレニス王に、バルは若干眉をひそめて聞く。

「さあ。良く分からん。」

「いやいやいや! ダメだろうきっと! 機密とかなんだろう?!」

 国のトップの癖にさらりと適当なことを言うレニス王に、ついついいつもの調子で突っ込みを入れてしまうデンノスケ。普通ならば国王にこのような口を利けば、近くに居る衛兵なり側近なりが止めに入るものなのだが・・・近くに居る近衛兵は「もっと言ってやってください」とばかりにジェスチャーを飛ばすだけだった。 よほど普段振り回されているらしい。

「大丈夫だろう。機密にかかわりそうに一般的な知識をレクチャーすれば良いんだ。」

「いや。今さっき自分で公と機密の線引きが分からないって・・・!」

 これまた反射的に突っ込みを入れるデンノスケに、レニス王はまったくの無表情にもかかわらず、何故か自身あり気と分かる調子で「大丈夫だ。」と胸を張った。

「とりあえず極秘裏に開発中の移動島でも案内し」

「するんじゃねぇ!!」

 さらりと危険な言葉を口にしようとした国王の頭が突然掻き消えた。 それが突然横合いから見舞われたロケットキックのせいだったことにその場の全員が気がついたのは、レニス王がまったく同じ姿勢のまま人形がバランスを崩したように倒れた後だった。

「何千回同じこと言われてんだこのボケ王がぁ?! 鳥か?! 鳥なのかテメーは! 鳥頭なのか?! 三歩歩いたら全部忘れちゃうのかぁ?! ごら!!」

 突然王に蹴りを入れた少年はそのままの勢いで倒れているレニス王にそうまくし立てると、何故か手にしていた金ヤスリでゴリゴリとレニス王の額を削り始めた。

「うむ。私の体積が減っていく。」

「減ってねーよ! テメーが鉄で殺せるんなら誰も苦労しねぇっつんだよ!!」

「な、何やってるんだお前ー!!」

 誰一人リアクションが取れない中、最初に動いたのはデンノスケだった。少年を羽交い絞めにすると、なんとかレニス王から引き剥がした。

「はーなーせー! 今日という今日はがまんならねぇ!! こいつに国の運営が如何なる物か血反吐吐くまで言い聞かせてやるんじゃぁぁああ!!!」

「何分けわかんねーこと言ってんだお前! そこに居るのはこの国の王様なんだぞ?! 反逆罪とかで死にたいのか!!」

「ああん?!」

 デンノスケに押さえつけられていた少年は、反逆という言葉に反応してようやく暴れるのをやめると、自分を押さえつけているデンノスケの方を振り向いた。

「ああ。 君か。最近この世界に来た異世界の旅人は。 ならば知らないのも無理は無い。 俺はこの国の宰相。“アルベルト・ストライフ”だ。 でもって、俺がそこに転がってる王を殴るのは日課みたいなもんだ。寧ろ俺が殴らなきゃまともに仕事をせんのだ。この王は。」

「なっ、お前みたいな子供が宰相?!」

 馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに顔をしかめるデンノスケ。宰相とは、国王に次ぐ最高位の役職だ。通常はよほどの切れ者、ないし、実力の有る権力者が成るものである。 少なくとも、デンノスケの常識では、こんな子供がなれる役職ではない。

「あ。デンノスケ。それ、本当に宰相にゃ。」

「んなっ! え?!」

 アンブレラの言葉に思わず手を緩めるデンノスケ。 その隙に少年はするりとデンノスケの手から抜け出すと、衣服の乱れをてきぱきと整え、デンノスケとバルに向き直った。

「こんななりはしてるが、レニス王国の宰相をしている、“アルベルト・ストラルフ”だ。 うちの王に任せとくとどんな機密話すか分からんから、俺が付き合うことにする。要らん事聞いて、秘密漏洩回避のために殺されました。何つったら、話にもならんだろ?」

 呆れたように肩をすくめるアルベルト。 そんなアルベルトに対しデンノスケは、暫く機能停止状態に陥ったという。

 

 

「で。うちの国の兵器と社会情勢だったか?」

 とりあえず、全員改めてコタツに当たりながら話すことになったのだった。

「ああ。とりあえず起動鎧とやらは実物を見た。街で暴れていたしな。」

「そうか。じゃあ、どう言うもんかはあらかた分かってるだろうな。」

 バルの言葉に、苦笑しながら答えるアルベルト。

「見ての通り、アレは歩兵よりも機動力も戦闘能力も数段上だ。運用目的は多数。それこそ汎用兵器って奴だな。水中戦、砂漠戦、空中戦用なんて局地戦闘目的の物も有る、こっちの世界の花形兵器だ。」

「なるほど。確かに強力そうだったな。俺がアンブレラから貰ったのも、強力そうだった。」

 納得したように頷くバルの言葉に、アルベルトは「この野郎また機動鎧押し付けてやがるのか・・・。」とつぶやきながら頭を抱えるのだった。

「まあ、いい。 兎に角、戦場で一番目立つのはあれだろうな。 ちなみに。機動鎧ってのはレニス王国が使ってる総称語だ。ほかの国にいけば呼び名も違うし、大きさもまちまちだ。作った技術者、企業によっても物はまったく違ってくる。 操縦桿を握って動かすのから、意識をシンクロさせるもの。果ては機体と融合するものまで有る。」

「昔戦った国に、聖女しか乗れん全高400m強の機動鎧があったな。」

「ああ〜。あったな。 でも俺が一番ウザかったのは、玄人っぽいおっさんたちが乗ってた泥臭い5mくらいの小型機集団だったがな。ワイヤーとか出しながらローラーダッシュしてたあれ。乗り手も上手けりゃ戦争も上手かった。」

「三体合体で人型になるのも居た。」

「あれもなんだったんだろうな。 お前一人で始末しちまったから資料ものこってねーっつーの。」

 昔話をしながら頷きあうアルベルトとレニス王。

 そんな二人の話を聞きながら、「面白そうだな。」と、分かっているのか居ないのか今一曖昧な感想をこぼすバル。

「それから・・・。あれだな。移動島。こいつも見たか?」

「ああ。青白く発光する島が空を飛んでいた。」

「おお。見たか。 良く誤解されるが、アレは特別に強力な魔法使いが作ったもんじゃねぇ。 研究者連中やらが自分たちの理論を下にくみ上げた、工業機械みたいなもんだ。そうだな。なんて言えばいいか・・・。 お前さんたちの世界で言うと、“戦車”を大げさにしたようなやつか。馬が引く、例のアレだな。」

 戦車と言われて、バルたちが普通イメージするのは、大砲を積んだ装甲車ではなく、装甲した馬が引く、馬車のようなタイプの方だ。

「ん? あれも何か生物が動かしているのか?」

「物によるがな。機械仕掛けみたいに無機物だけで作ってある島もあれば・・・植物を利用したのも有る。うちにも植物を使ったのがいくつかあるんだがな。 移動島の原動力は魔力でな。その魔力の供給源を植物に頼った奴なんかは、島全体に植物が覆いかぶさってるし、大気中の魔力に頼る奴はむき出しの魔方陣が羅列してあるって寸法だな。」

「なるほど・・・。 強力なのか? 戦力としては。」

「そらーもう。 なにせアレだけでかいんだ。色々出来るってもんだ。たとえば大規模破壊魔法を予め表面に仕込んどいて、周り中から魔力かき集めてマシンガンばりに乱発したり、大規模シールド展開して機動鎧を数十機無傷で敵首都に送り込んだり、数島で連携して隕石召還したりな。 やり方しだいじゃ〜星も壊せる威力だ。 まあ、もちろん普通はやらないし、やれないがな。」

 星を消せる。その言葉に、さしものバルの表情も曇った。確かに隕石が召還出来るのであれば、それも不可能では無いだろう事は容易に予想が付く。

「あとは、小物こまごまだが・・・。 まずは歩兵。人体をマジックアイテムに置き換える奴。パワードスーツを着る奴。兵種、分担によってさまざまだが、ほかの世界以上に軍と一般では歩兵の武装に雲泥の差があるってのは言えるな。うちの世界は割かし防御魔法が進んでるから、きちんとした装備をした兵隊になら普通の鉄砲玉なんざ利かねぇ。だから超振動やら添付魔法やらで強化した剣も普通に普及してるし、魔法で貫通力を格段に上げた強壮弾入りの銃も使われる。 まあ、銃弾は物が小さいせいかかけられる魔法にも限界があってな。うちの近衛騎士団の団長あたりは、やたらどでかいランスなんて使ってやがる。」

「・・・・・・な、なるほど・・・移動島を中心に軍隊を編成する訳か・・・」

 国王が宰相にけり倒されるという、ショッキング映像からようやく立ち直ったのか、ほけーっとコタツに当たっていたデンノスケは、ようやくといった感じで口を開いた。額に浮かぶ嫌な脂汗をごしごしとぬぐうと、何度か深呼吸をして心臓を落ち着かせる。

「そう言うことだな。移動島を小さくしたようなもんで、船なんてのもあってな。こいつもやっぱり空中を進む船なんだが・・・外で飛んでる鯨見ただろ。まあ、あれのことだな。 移動島。船。機動鎧。この三つが、戦争の花形兵器になる。わけだーな。」

「どれもこれも恐ろしいな・・・。」

 眉間に皺を寄せてうなるようにつぶやくデンノスケ。

「まあ、さらに詳しく言えば、機動鎧にも大きく分けて二パターンあってな。 性能が良い機体ってのはどうしても装甲が欲しいし、外からのハッキングなんかを嫌うもんだから、外からの魔法的接触を完全にシャットアウトしちまうんだよ。 なもんだから、普通の機動鎧なら常に大気中から得られる動力源。つまり魔力を補給できねぇ訳だ。 こういう類の機体は一騎当千なエースなんだが、如何せん乗り手から魔力を取らなきゃいけねーってんで、乗れる奴がやたらすくなくなっちまうんだ。 持ってても乗れる人間が居ないんじゃ宝の持ち腐れだし、どうしてもそういう機体はコストがかさむ。 そんな訳で、そう言う特別な機体には、普通はお前見たいな“勇者殿”やら、うちのあほ王みたいな人外魔境しか乗ってないわけだわな。」

「いや。だから俺は勇者ではな・・・ありませんから・・・!」

 普通につっこみをいれようとして、寸前で相手が宰相だと思い出し凍りつくデンノスケ。断っておくが、突っ込みきれないデンノスケがチキンだとかそう言うことは消してない。普通の国ならば、一般人。それも得体に知れない異世界人が宰相閣下と同室に居るというだけで、雪崩のように兵隊が押し寄せてくるのだ。 しかし、今の状態はどうだろう。宰相どころか、国王すら居るにもかかわらず。警備の兵士たちは無表情でコタツに首まで入り、兎型に切ったりんごを咥えている国王をため息混じりに眺めているだけだった。

「さて。ラストだが・・・うちの国王に関係する話だな。 この世界には確かにむちゃくちゃな破壊力の兵器が沢山有る。だが、だ。そう言うモンを一切合切。それこそ素手で移動島を叩き割る輩が、居る。 それが・・・。」

 アルベルトは軽く手を振り上げると、寝転がっているレニス王の眉間にチョップを叩き込んだ。

「こいつら。“魔人” “勇者” “超越者”。 呼び方は色々あるんだが、まあ、兎に角なんにせよ。こいつや、それに近い化け物どもだ。 最後。つまり社会情勢の話だったな。 こいつらの存在が大きくかかわってくるんだが・・・。 さて。国家間の大まかな話。うちの国の中の話。 どっちから聞きたい?  必要ならお国柄なんかも用意するが。」

 その体躯からは想像も出来ないような、包容力のある。威厳すら漂う笑顔をデンノスケとバルに向けるアルベルト。

 デンノスケはその、おそらく年齢にそぐわぬだろう表情に若干圧倒されつつも・・・コタツから首だけ出している自国の王に、まるで親の敵のように執拗にチョップの嵐を見舞っているという事実に、目の前の宰相に底知れぬ恐ろしさを感じたのだった。

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

 その日。たまたまDr・フェネクスを訪ねてきた彼の古い友人。“悪魔騎士”ラキュードは、実に奇妙な光景を目にしていた。

 「悪魔である前に一人の騎士である。」と公言してはばからない、変わり者の大悪魔であるラキュードは、蝙蝠の様な皮膜の片翼を背に背負った、絶世の美丈夫である。 見たものを魅了し堕落させると言う魔性を持つ外見は、幾数重にも魔法防御を施した兜と鎧で隠しているため、その表情を知るのは非常に困難だった。

 “身の丈程もある大剣を背負った、全身鎧の片翼の悪魔”である所のラキュード。そんな彼が今目にしている光景とは・・・。

 自分の仲間である所の、同じ大悪魔“フェネクス”が、自宅である倉庫の屋上で、真夏にもかかわらず段ボール箱に詰まって高笑いをしていると言う、思わず精神科医を紹介してしまいそうになるような場面だった。

 

「フェネクス・・・貴様何をしている。」

「む。ああ。久しぶりだと思うのだがね。相変わらず暑苦しそうな格好だと思うのだがね。 まあ、歌や目線ではなく外見そのものが効果を及ぼすのが君だからね。仕方がないことだとは思うのだがね。」

「余計なお世話だ。そんなことより人の話を聞け貴様は。質問されている内容には最低限答えるようにしろと何度言えばわかるのだ。 まあ良い。一体何事なんだ本当に。この暑い中屋根の上でダンボールだぞに詰まっているというのは。卵でも産み落としたか?」

「はっはっは。そこに居る私の同居人の提案でね。今日はここで温まることにしたのだよ。」

「あったかい。」

「んなっ・・・! んだ・・・! フェネクス貴様ぁ!! ついに幼女誘拐なぞに手を染めたのか! 昔から良識の欠如したやつとは思っていたがよもやここまでとは! 二度と悪行が行えんように叩き切ってくれようかっ!」

「うむ。悪魔の口から出るとは思えない台詞だと思うのだがね。」

「あー。」

「彼女は街なかで買い物中、私の食料を狙って私の家に侵入し力尽くで食べ物を奪っていく・・・いわば居座り強盗のようなものなのだがね。」

「戯けが! 聞く耳持たんわっ! 我等二人! 私は武芸で!貴様は知能で彼の方を御支えする事を約束したはずであろうが! それをよりにもよって犯罪になぞ手を染めおってからにっ!」

「清く正しい悪魔というのもどうかと思うのだがね。 だから落ち着いて欲しいのだがね。 実際彼女は・・・」

「いすわりごーとー。」

「ふむ。気に入ったかね?」

「ん。 ごはんうばう。」

「どんな会話だ! フェネクス! 一体何をこの少女に吹き込んだのだ!」

「落ち着いてくれると有難いと思うのだがね。私は今ダンボール箱から出られないのだよ。はまってしまってしまったようでね。いやいや。これでなかなか切羽詰っているのだがね。はっはっはっはっは!」

「ん。」

「阿呆か貴様は・・・! んん? 少女よ。どこに行く! ここは屋根の上だぞ!むやみに動いてはいけない!」

「とり、うごけない。」

「なに?」

「ごはんぜんぶうばう。」

「なっ・・・! って、うをぉぉぉぉぉ?! なんだあの少女は?! 屋根から飛び降りて倉庫の中に駆け込んでいったぞ?! ここの屋根は地上10m強あるんじゃないのか?!」

「そうだったと思うのだがね。彼女はマジックも使えるようだからね。この程度なら問題無いのだよ。」

「な、なにものなのだ・・・! あの少女は!」

「同居人で・・・居座り強盗。だのだがね?」