Jul 24, 2007

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

「・・・なかなか興味深い行動だと思うのだがね。」

「ん。」

「私の見立てが正しければ、それは銃だと思うのだがね? どこかから奪ってきたのかね?」

「つくった。」

「ほう! どうやってだね?」

「じしゃくでさてつあつめた。」

「ふむ。砂鉄。 まさか、材料全てそうして集めたのかね?」

「ん。」

「成型は・・・?」

「とりのつかった。」

「ふむ。確かに私の研究室にある器具で製作可能だと思うのだがね。 使い方は何時習ったのか不思議だと思うのだがね?」

「しつじ。」

「執事君が教えてくれたのかね?」

「ん。」

「ふっ・・・っはっはっはっはっは! 通りで知らない間に起動しているわけだと思うのだがね! なるほどなるほど!」

「けんじゅうのつくりかた。 ぬすんだ。」

May 16, 2007

博士の風変わりな研究と飯のタネ(42)

 “アクア・ルート”に幾本も通る道路上に、奇妙な光景が広がっていた。

 重武装した三十人以上の人物が、鋼鉄製のワイヤーでがんじがらめにされて転がされているのだ。 数人こそ丁寧に捕縛されているものの、大多数はまるでアニメにでも出てくるかのような大雑把なぐるぐる巻きにされていた。その大雑把ッぷりは、見るものにそれをした人物の「こんなにいるのに一人一人縛るのとかありえないからっ! 面倒くさいからっ!」と言う思いをダイレクトに伝えているようだった。

 良く見ると、縛り上げられている人物達は総じて高校生くらいの男女で、種族もまちまちだった。

 そんな彼らを縛り上げて転がしたと思しき人物が、仁王立ちで彼らを見下ろしていた。 白に赤のラインが入った、やけに御目出度いウィンドブレーカーのズボンをはき、上半身裸。恐らくウィンドブレーカーの上であろうモノを腰に巻いたそのエルフ族の男は、どういうつもりかアスファルトの上だと言うのに素足であった。 エルフでは珍しい黒髪黒瞳で、顔もどちらかと言うと東洋風の顔立ちだった。

「まったく手間取らせやがってっ! なに?! なんなのお前ら! なに、考えてるのその年で街中で暴れちゃってまったくっ!若けりゃ何でも許されると思ってるの!? 若さゆえの過ちじゃすまねーんだぞ何でもわよぉっ! そらお前人生そう上手くいくこともあるよ? あっちゃうよ人生色々だから! 何事も順風満帆世は全てコトも無しでころっと上手く言っちゃうこともあるよ?! でもそう言うのは滅多ないでしょ〜、滅多に無いでしょーよっ! オイタすりゃ俺みたいな大人にふんじばられて叱られるんだよっ! 大体なんだお前らその装備は! あれか! 今流行のあれなのか?! 政府とか裏組織とかに訓練を施された少年少女戦闘集団的なあれかぁ〜っ!」

 まるで鬼のような形相で息継ぎもせず捲し立てるエルフ族の男に、転がされている連中は竦み上がり、今にも泣き出しそうに震えていた。 どうもよほど手ひどい目に合わされたらしく、何人かは白目を剥いて気絶したり、「あ、おほしさまがみえゆー」などと現実逃避気味のものまでいる始末だった。

「そ、そんなアニメやゲームに出てくるような感じのアレじゃありません! 俺達、レニス王国の軍学校の生徒なんです!」

 転がされているものの一人が、やっとの思いと言った様子で声を上げた。

「俺ら、今年卒業で! クラスの奴らと、誰が一番実戦に出ても耐え得る実力なのかって話してたら、喧嘩になって! そしたら丁度、アクア・ルートにすげー賞金首がいるぞって話に成って!」

「それで? 誰が一番最初にそいつを捕まえるか競争になったとか?」

「そうです。」

「それも十分漫画かアニメだろうが!!」

 思い切り怒鳴りつけながら、エルフ族の男は上着のポケットに手を突っ込むと、折りたたみ式の携帯端末を取り出した。パカリと二つ折りにしていたものを元に戻すと、携帯電話のカメラ機能よろしくな位置についているカメラを、転がしている連中数人の顔に向けた。 ボタンをいくつか操作すると、中空に半透明なウィンドウが表示される。 エルフ族の男はそれをしばし眺めると、深いため息を吐き出した。

「本当に軍学校の生徒でやんのなお前ら。装備も学校の奴持ち出してんじゃねーかよ。」

「あ、あははは・・・。」

 あきれ果てたようにため息を吐くエルフ族の男に、軍学校の生徒は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「しかたねぇ。 本当はめんどくせぇから放置し一番隊の連中にでも回収してもらおうかと思ったんだが。そう言うことならそう言うわけにもいかねぇな。 お前ら、俺が補導したコトにして、一度うちの隊舎に来てもらうからな。 その後先生に連絡するから。たっぷりお仕置きしてもらえぇ。」

 こきこきと首を鳴らしながらため息を吐くエルフ族の男の言葉に、意識のある生徒達はがっくりとうなだれた。

「ときに・・・つかぬ事をお伺いするのですが・・・。」

「なんだ?」

 転がされている生徒の一人は、神妙な顔を作ると、恐ろしい相手に質問をするかのようにおっかなびっくり声を出した。 まあ、実際怖いのだから仕方あるまい。

「俺達、コレでも一応正規軍と同じ訓練受けてきたし、実際軍学校ってのだって方便みたいなモンで・・・ただの長期キャンプ見たいな学習内容でやってきたし、そうやって教えられて来たんですが・・・。 貴方、たった一人でこの人数殺しもしないで制圧しましたよね・・・?」

「ああ。それがどうした?」

 生徒の質問に、不思議そうに首をかしげるエルフ族の男。 良く見てみると、男はどこかを怪我しているどころか、服が汚れてすらいなかった。 言ってみれば、戦闘の形跡がまるでないのだ。対照的に、生徒達は白目を剥いて気絶するほどぼっこぼこにされているものまでいる始末だ。

「ど、どこの、どう言う御方でしょうか・・・?」

 その言葉を聞き、男はようやく合点が行ったと言うように手を叩いた。 そして、すっと背筋を伸ばすと、やたらと大きな挙動で手を合わせた。まるで僧侶のように合わせた手を胸元に置くと、先ほどまでとは少し違った、神妙な顔で名乗りを上げる。

「レニス王国 王立近衛騎士団 三番隊所属。 破戒僧 “良岩寺” 鉄斎。 だ。宜しくお見知りおきを。」

 それを聴いた瞬間、正気だった生徒のうち何人かが、白目を剥き気絶した。

「こ、こここここここ、近衛騎士団 三番隊ぃぃぃ?!」

「こ、殺さないで! 殺さないで下さいぃぃぃ!!」

「やさしくころしてー やさしくころしてー キルミーソフトプリーズ キルミーソフオプリーズゥゥゥ!!」

 どうにか正気を保っている生徒達も、まるで悪鬼を見るかのように震え上がり泣き叫び、中にはあっさり絶望しているものまで居た。

「なに。 何だよお前らそのリアクション。俺別に怖くねぇだろうが!」

「いんやいやぁ〜。 ビビらすには十分すぎんじゃね?」

 納得いかない様子の鉄斎に、唐突に声が掛けられる。 が、背後からかけられた声に、鉄斎は驚くどころか振り向きもせず応える。

「何処が! 何処がよ! 骨とかぽっきりいっちゃわない様に気をつけてたたんだんだぞ! 優しさを感じたりとか感謝とかするシーンじゃない?! ここは!」

「まぁ〜まぁまぁまぁ。 良いじゃないの仕方ないじゃないのぉ。何せあたしらあれだ・・・。」

 鉄斎に声をかけた人物は、いかにもダルそうに鉄斎の肩に肘をかけると、皮肉気な笑顔を顔に貼り付けた。 歳は、人間で言えば25〜26くらいだろうか。ジーンズ生地の短パンにタンクトップ姿のその女性は、左肩に大きなタトゥーを彫っていた。眠たげな表情ではあるが、ベリーショートの似合った美女であった。

「悪名高き近衛騎士団。なんだからさぁ?」

 そう言って、自分の肩のタトゥーを指差した。 それは、“レニス王国近衛騎士団”の紋章。そしてその周りを囲うように彫られているのは、彼女の名前だった。

「いいか? アムリッタ。 “アムリッタ・フォークブルース”。 お前とお前の相棒見たいのが居るから俺まで誤解受けるんだぞ! この間出張でマーズ行った時なんて偉い目に合ったんだぞっ! うわ〜、レニス王国はこの国を侵略するつもりなんだぁ〜、だから近衛騎士団なんかが来たんだぁ〜! ってよっ!! お前等コンビあの辺で何やった!」

「あぁ〜ん? あの辺はあれよ。私等じゃなくてマイキー達の・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないのよ。」

 アムリッタと呼ばれた女性はぺちぺちと鉄斎を叩くと、へらへらとした顔を崩さず続ける。

「ドレイコ隊長からのご命令よん。 通信機は使わない系のやつ。」

 その言葉に、鉄斎の表情が一気に引き締まった。 通信機は使わない。つまり、“通信機は使えない内容の命令”という事だ。

「一、二番隊に恩を売りたいんだって。 出来るだけ沢山伸して転がして・・・一番隊に回収させろってさ。手はずも整ってっからってさ。」

「・・・隊長じゃなくて副長の指示か・・・。」

「そゆこと。 他の隊の事まで気にして動く人じゃないからねぇ。 副長に言われて“じゃあ、そうしようか?”ってパターンだわねぇ〜。」

 鉄斎は「そうか・・・。」とつぶやくと、首に手を当てがい、二〜三度こきこきと鳴らした。

「じゃぁ〜あ。 俺も暴れにいくかねぇ。 お前は相棒と合流だろ?」

「そーよぉ〜ん。 で、学生さんたちはどうするの? 放置?」

「それしかあるめーよ?」

 言いながら、鉄斎は腰に巻いた上着を解くと、素肌の上にばさりと羽織った。

「という訳で〜。 お前等は一番隊の連中にみっちりしかられとけや。 人生の酸いも甘いもの酸いの部分を思うさま体感してくれぇ。」

 そんな鉄斎の言葉に、正気を保っていた残りの生徒達も、次々に昏倒していくのだった。

May 10, 2007

今週の国王様。 浴場の受け付けでマッタリ。

 レニス王国のレニス王が住まう城には、共同浴場があるのは有名な話である。 ある種観光名所でもある王城にあるこの共同浴場は、騎士から普通職員、果ては宰相から観光客まで利用可能な施設である。

 そんな共同浴場の受付嬢“ミーア・クロコップ”は、退屈そうに欠伸をかみ殺すと、ちらりと腕時計に目を落とした。

 観光もオフシーズンで、城の一般業務に当たっている連中も仕事中なこの時間帯は、一日でもっとも暇で退屈なひと時である。 なにより、今日はいつにもまして暇だった。いつもたむろしている年寄り連中は「今日はバッケンホルムの地下ダンジョンに突撃ジャー!」と訳のわからないことを叫びながら、全員で出て行ってしまった。無事に帰って来ますように。と、ミーアは思わず合掌溶かしつつ見送ってしまったことは言うまでも無い。

 さて。そんなこんなで、ミーア嬢は思わず昼寝してしまいそうなほど暇であった。なにせお客はもちろん、人っ子一人居ない惨状なのである。 掃除や湯加減などはもちろん、販売業に至るまで自動化された公衆浴場には、話し相手になるような人間は一人としていない。 売店や掃除をしているゴーレムに話しかけても良いのだが、連中は仕事が好きらしく、仕事をしたい気持ちと自分に付き合ってくれようと言う良心で板ばさみに成った切なげな顔を向けてくるので、最近では休憩中のゴーレムにしか声が掛けられなかった。 ちなみに浴場で働いているゴーレムは最新型で、ある程度のインタラクティブも可能であり、見た目もなかなかにプリティーでミーア好みだったした。

「あ〜・・・あ。そうだ。ポテチあったな。ポテチ。」

 ぽむ。と、手を叩くと、ミーアは足元においてあったバックからポテチの袋を取り出した。本来は仕事中にお菓子を摘む等問題外の、上司が見たら怒られる行為トップテン上位ランカーな行為なのだが、どうせ今はだれも来ないのだ。

 バリバリと袋を開けると、ミーアは「いっただきまーす。」 と手を打ち鳴らした。 と、そのときだった。

「美味そうだな。」

 突然かけられたやたらと威厳と風格の漂う落ち着いた声に、ビクッ! と反応するミーア。 しかし、顔を上げても目の前に人影らしきものは見当たらなかった。

「・・・え?」

 もしやと思い腰を挙げると・・・両手両足を手錠でつながれた挙句、鉄製の鎖でがんじがらめにされ転がっているレニス国王の姿があった。

「なんだ国王様ですかー。あー。びっくりした〜。 何処のお偉いさんかと思いましたよ〜。」

 ほっと胸をなでおろすミーア。 無論、この国で一番のお偉いさんがレニス王であることは、彼女もわかっている。

「すまんな。脅かしたか。 アルベルトに賓客が来るから動くなと言われて束縛されてな。逃げ出したのは良いんだがどうにも魔法やら色々添付された束縛具らしくてなかなか解けんのだ。」

「国王様らしく無理やり引きちぎっちゃえばいいじゃありませんか。」

「無理やり解こうとすると爆発するように出来ておるらしいのだ。爆炎と爆音で見つかろうものなら何をされるかわからんからな。眉間を剣で連続強打くらいのことはされるかも知れん。」

「あははは。 あんまり宰相様虐めないで上げてくださいよー。 いっつも疲れきった顔でお風呂入りに来るんですから。」

「うむ。考えておく。」

「ん。あ、ポテチ食べます?」

「頂こう。」

 即答した国王に、ミーアはゆるゆると近づきしゃがみ込むと、お菓子をつかみ、レニス王の口の押し込んだ。

 されるがままのレニス王はもっしゃもっしゃとお菓子を噛み砕くと、ゴックリと飲み込んだ。若干蛇が獲物を丸呑みにするっぽい挙動を見せると、まったくの無表情で「うむ。美味い。」と満足そうに頷く。

「あははは! 良かったです。コレ新製品らしいんですよ。」

「そうなのか。今度買いに行ってみるとしよう。」

 うむうむと頷くと、レニス王はのそのそと動き出すと、尺取虫のような挙動で出口に向かって進み始めた。

「あれ? お帰りですか?」

「うむ。汗を流そうと思ったんだが、良く考えたらこの姿では風呂に入れんからな。」

 大真面目にそう言うレニス王の言葉に、ミーアは思わず噴出すと「あはははは!」 とはつらつとした声を上げて笑った。

「じゃあ、それちゃんとはずせたら、また寄って下さいね。 またお菓子用意しておきますから。」

「うむ。楽しみにして置く。 またな。」

 そう言うと、レニス王はその動きからは想像も出来ないような軽やかな動きで共同浴場の自動ドアから出て行くのだった。

「相変わらず面白い人よねぇ〜。」

 思わずくすくすと笑いながら見送るミーア。 と、腕時計に目をやり、あわてたような声を出した。 もうすぐ、城警備の一部所のローテイションの時間である。一日の疲れを癒しに来る兵士達のために、準備を始めなくては成らない。

「さ、みんな〜! 疲れたお客が来るわよ〜! 準備してぇ〜!」

『ぷいにゅ〜!』

 大声で指示を出すミーアに、良くわからない声で答えるゴーレムたち。 そんな様子に、思わず口元をほころばせ、目を細めるミーアだった。

May 05, 2007

博士の風変わりな研究と飯のタネ 番外編 ちょっと前のジェーン少女とDr

「ん。 ん。 んん。」

「ふむ・・・。 いつになく真剣な顔だと思うのだがね。」

「なんだこれ。」

「それは拳銃だね。」

「つよいのか?」

「うーむ。普通は剣よりも強いと言われていると思うのだがね。ちょっとした防具で簡単に防がれてしまうから、なんともいえないと思うのだがね。 まあ、使うものの力量次第だと思うのだがね。」

「りきりょう。」

「力の量。 要するに使う力が有れば強いと言うことだね。」

「ちからがある。 と、つよい。」

「うむ。」

「・・・・・・・・・ん。」

「はっはっは! それには弾が入っていないからね。ポケットにしまっても意味が無いと思うのだがね?」

「たま。」

「銃は弾を飛ばして敵を倒す武器なのだがね。 ふむ。食事が終わったら、一つ銃について講義しようと思うのだがね。 こう見えて私は昔、大学の教授もしていたのでね。」

「あ〜・・・・・・ん。 たべもの。おわったら、じゅう。」

Apr 12, 2007

人外魔境な連中を整理整頓。

“城落しの”ガルシャラ・カーマイン

 字の通り城を一人で落としたこともある化け物。

 種族、年齢一切不明。

 二本一対のショートソード、巨大なブレード、規格外の金属鞭を操ることから、“四つ牙”とも呼ばれていたが、今では殆ど“城落し”。

 得物や服装はすべて黒一色。別に意味があるわけじゃなく、単に冒険屋と言う家業柄汚れが目立たないようにする為らしい。

 常にグラサンを掛けているが、理由はこれまた不明。本人に聞くと、「眩しいから」「バジリスクの血が混じっているから」「目が無いから」と適当な答えが返ってくる。

 愛剣である巨大なブレードは“動魔剣・餓躯”と言う銘の業物。ガルシャラの意思一つで、実は30m級の機動鎧である所のその正体を晒す。

 行動、思想ともに基本的には穏やかな常識人ではあるが、そう言う人間の常か、怒るとむちゃくちゃ怖い。

 実際に彼を怒らせた国が、一つ地図の上から消えている当たり、その怖さのハンパ無さは推し量れる。

 

“聖剣使い”レニス・スタッカート

 魔剣を扱うものを魔剣使いと言うように、聖剣を使うものを聖剣使いと呼ぶ。レニスは複数の聖剣を持ち、それらすべてを使いこなす聖剣使い。

 聖剣は普通の魔剣と違い、使用者の力を触媒として力を発動させるものが多い。詰まるところ、強い奴が使えば強く、弱い奴が使えば弱い。 レニスが“不可視の手 インビジブルパワーズ”と呼ばれる、一定範囲内のものに対してサイコキネシスのような不可視の力を加えられる聖剣を要した場合。周囲五キロ圏内のありとあらゆるモノを粉砕することが可能だ。発生源から近いほど力を発揮する為、もし半径一キロ圏内であるならば、移動島クラスのシールドも意味を成さない。

 どんなときでも崩さない無表情は、実際に生まれてからこの方ピクリとも動いたことが無い。別にそう言う種族と言うわけではないのだが。

 当人が宣言してはばからない通り、思考は基本的に冒険屋だ。「あまり動かないからついに腹に来たのか。脂肪が。メタ・・・メタ・・・メタ何とかになるぞ。」とかほかの国の国王に平気で言っちゃうその胆力は、冒険を生業にしていた頃に付けた物。

 

“黒の”トレット・レラルム

 死して未だに恐れられる男、“ホーリー・クライス”の唯一の弟子。

 台風を拳で吹き飛ばし、移動島を宇宙に放り投げる破天荒で常識無視なしな師匠に付いていたせいか、実に温和で常識に満ちた人物。髪が長いのと整った顔立ちから女性に間違えられるが、一応男性。

 彼の戦闘スタイルである“魔闘術”は、“拳にありったけの魔力を込めて殴りつける”と言う、シンプル且つダイナミックな技、“魔拳”を基礎にして奥義としており、その破壊力はまさに“一撃必殺”。 ちなみに、トレットが掲げる看板は、“多撃必勝 一撃必殺”である。要するに一撃必殺を乱発して必ず勝つ。と言うこと。

 基本的に曲がったことが大嫌いで、困っている人がいたら助けるのが当たり前だと思っている類の天然善人。 普通ならば「青二才が!」などと悪役に一蹴されるような青臭い正義感をかざすものの、本気になれば機動鎧をまとめて十数機吹き飛ばす拳撃を乱発するトレットを一蹴出来る悪役は滅多にいない。

 そのルックスと人柄から無闇にモテるが、本人はおんなっけゼロ。 一人前に成る為には、まだまだ色恋に現を抜かしている暇は無い。と、言うのが本人談。

 自分の実力を極端に過小評価しているご様子。 まあ、師匠や周りの人間がトレットに輪を掛けて人外だったゆえに、仕方ないか。

 

ホーリー・クライス

 数年前に死んだ人族の男。

 どぎつい三白眼と、チンピラ口調から、町のアンチャンにしか見えない風貌であるにもかかわらず、その実力はいまや教科書に乗るほどであった。

 拳を振るえば大地が割れ、空気が震えたと言われるほどの豪腕の持ち主。実際に割られた大地が、今では数箇所観光地に成っている。

 どこの国にも所属せず、道路工事と喧嘩を生きがいに生涯を過ごした。どういう訳か肉体労働、それも主に“働くお父さんお母さん”を非常に好み、労働者の地位向上に無駄に尽力を腕力で尽くしたりしていた。

 その一方、国家間戦争が起こりそうになったと見るや、両方の国に一人で乗り込み、軍隊に壊滅的打撃を与え無理やり交渉の席を設けさせるなど、その行動原理は謎に包まれている。

 彼が死んだとき、殆どの者がその死を信じなかったと言う。 彼ほどの魔力の持ち主ならば、不死法もたやすく習得出来ていただろうと考えたからだ。 しかし、クライスは三十台後半と言う若さで亡くなった。 先に逝った彼の妻との間に出来た一人息子は、どう言う訳か“勇者”を名乗り、父と同じように自由気ままに世界を放浪している。

 彼の友人の中には、未だに彼が尋ねてくるのを待っているモノもいる。あいつが一回死んだぐらいで落ち着くはずが無い。そのうちあっちに飽きたら、こっちに顔を出しに来るだろう。と、彼らの談。 実際、次元の壁を素手で引き裂いたと言う実績のあるクライスだけに、本当にやってしまいかねないところが怖い。

 彼があの世から遠征に来る時が来るのも、遠くないのかもしれない。

Apr 11, 2007

マービットとハウザーの過去なのよ。

ポスト @ 2:59:57 | ハウザー マービット

 今二人の関係は非常に安定している。どちらにも良い影響を及ぼしていると言えるだろう。 事すれば発狂しかねないと思っていたアリシアの精神状態も、守るべき対象が出来たことで目に見えて安定した。

「オレは今がベストだと思うんだよなぁー。 っつーか恋人ってなによ恋人って。ドンだけませてると思ってるのさ。ぼけてんじゃねーのかお上。なに?あれか? じいさんなのか? じーさんなのかお決まり的にお上。」

「あんまり悪口言うとまずいんじゃない?」

「いいんじゃん寝室で愚痴こぼすくらい。 で、はやかったな? マービット。」

 突然掛けられた声に、アービンは寝転がったまま応えた。

 その様子を見て、わざわざ天井に張り付いてまで姿を隠していたマービットは、つまらなそうに舌打ちをしてベッドの上に落ちてきた。背中からドカンとまったく受け身も取らずにベッドに転がると、スックリと立ち上がった。

 アサシンに成るために訓練されている子供たちは、当然のように逃げ出さないように厳重に管理された空間に置かれている。普通は逃げ出すことも、入り込むことも出来ない。

 だが。マービットは普通ではなかった。 アービンがマービットを担当して暫くのことだった。 なんとマービットは夜中にひょっこり、アービンの部屋に現れたのだ。 監視員にも、監視装置にも気が付かれる事無く。

 そして今では、こうして気が向いたときに部屋に出没するようになっていた。

 無論、ほかの者にばれれば厳罰モノではあるが・・・ばれなければそれは何も問題が無いと言うことでもある。

「なにか不穏な話が聞こえたよ。 ボクとねえさんがどうとか。」

 いつもの妙にニヤ付いた笑顔を浮かべながら、マービットは寝転がるアービンに顔を向けた。 ツインサイズのベッドである為か、二人で上に乗っていも手狭に感じないそれの上で寝返りを打つと、アービンは面倒くさそうに顔をしかめた。

「お上の打診だよ。気にするほどのことじゃないっての。 現場監督の俺のほうがまだこのカミッキレより権限があるの。」

「ほんと?」

「ああ。 ぎりっぎりだけどな。」

 なぜか自慢げに言うその様子に、マービットは「なにそれー、なさけないー」と言って、笑った。

「で? お前はどうしたい。」

 アービンの問いかけに、マービットは小首を傾げるようなしぐさを見せた。

「ボクはどっちでも良い。ねえさんのこと好きだし。 色々な意味で。」

「意味深発言だなオイ。幾つだお前。」

「でも、ねえさんは違うと思う。好きの種類がひとつだけなんだよ。」

 珍しく真剣そうなマービットの声に、アービンはその時初めてマービットの顔を見た。

「ボク、弟だから。」

 にっこりと屈託なさそうに笑うこの少年は、一体普段どんなことをしているのか。 それを良く知っている、やらせているアービンにとって、たまにマービットが見せる“本当に”屈託無く笑う今のような顔を見るのは、苦痛だった。

 ただ思えば。こう言う時に“苦痛を感じる”から、アービンは本人の要求通り、第一線を退けられたのかもしれない。

「このシスコンヤロー。 弟歴短けーくせによー。」

 思っていることを億尾にも出さず。アービンはマービットの両頬をぶにゅぅ〜っと捻り上げた。

「ぶえぇぇぇぇぇぇ。」

 なんとも良く判らない声を上げてもがくマービットをひとしきり笑いものにすると、アービンは「それで?」と話を切り出した。

「今日はなんだ? 眠れなくて俺の顔が見たくなったか?」

「何気持ち悪いこと言ってんだよー。このオヤジー。 眠れなかったらねえさんのとこ行くよー。」

「オヤジで悪かったな。」

 ブーたれるマービットに対し、勝ち誇ったように笑うアービン。

「約束したじゃんかよー。 チョコレート〜。」

「ああ。はいはい。覚えてるよ。これな。」

 笑いながら立ち上がると、アービンは本棚の中断ほどの位置においてあった、小さな手提げ袋を取り上げた。

 凝った細工のされたそれは、高級な菓子店の名が書き込まれていた。

「それそれ! ねえさんが言ってた菓子屋の!」

 パーッと表情を明るくするマービット

「プレゼントか? しかしチョコ一個20ってどう言う事よまったく。」

「まぁまぁ。 お礼はそのうちするってばー。」

 嬉しそうに手提げを受け取ると、マービットはそれを大事そうに服の中にしまう。そして壁に手を掛けると、いともたやすく天井に張り付いた。

「それ、どうするんだ。」

「ねえさんにあげるの。決まってるでしょ?」

「お前の口にも入るだろうがなー。 アリシアは絶対に自分一人じゃ食わんぞ。」

 その言葉に、マービットははたと表情を曇らせた。

「ちゃんと全部二つずつ買ってきた? 一つしかないのがあったら、ねえさん絶対ボクに」

「はいはい。 ちゃんと全部一種類に付き二つずつ買ってきたよ。いけいけ。お子様は寝る時間だぞ?」

 アービンの言葉に、マービットはほっとしたような表情を見せた。

「じゃ、ボク帰る。じゃーね。おやすみ。」

 すっ。 っと、溶けるように闇の中に消えていくマービットを眺めながら、アービンは苦笑を浮かべた。

「用が済んだらさっさとねーちゃんのとこか。 現金な奴め。」

 独り言をぼそりと吐くと、アービンは再びベッドの上に寝転がった。

 きっと、あんなものを持っていったらアリシアは卒倒するほど驚くだろう。そしてどうやって手に入れたのか。教官に見つかったら怒られないかと、ネガティブ思考の海に沈む。 必死で宥めるマービットの姿が目に浮かぶが・・・まあ、自業自得だろう。

 それにしても・・・と、アービンは思った。どうもマービットの言っている好きは、アービンの予想の範疇を少し超えているようだった。

「お上もまんざらぼけちゃいねーってことか? まあ、ねーちゃんのほうがあれじゃあなぁ。」

 心配ばかりかける弟を気遣う姉。アリシアのことを思い出すとき最初に浮かぶ、そんなタイトルのつきそうな表情を思い浮かべながら、アービンは楽しそうに思い出し笑いをかみ殺す。

「しっかしお返しねぇ・・・・・・まあ、期待せずに待ちますかぁ?」

 マービットがアービンに「これがチョコレートのお返し」と言ってあるモノを押し付けるのは、まだまだ十数年先の話だ。

Apr 06, 2007

ハウザー&マービット マービットの過去なのよ

ポスト @ 2:23:17 | ハウザー マービット

 アサシンの育成というのは、実は至極専門的な技術と知識を要する作業であった。

 何せ人を殺すことを専門にする人間を育て上げるのだ。 下手に恨みを買えば、訓練途中でうっかり反逆されて殺されてしまいかねない。 かと言って甘やかしてもいけない。 普通の人間よりもよほど強靭で狡猾で人の裏を書くのに長け、尚且つ証拠を残さず人を殺したり、情報を引き出すための拷問術にまで長ける人間を作り上げ無ければ成らない訳だから。

 厳しく、辛く、死ぬような目に遭わせつつも・・・その対象には恨まれない。 そんなスキルが、アサシン育成者には求められるのだ。

 そんな。成るのが非常に困難な“アサシン育成者”の一人が、ベットと机が一脚あるだけの自室で、難しそうな顔をして唸っていた。

 彼は元々組織付きのアサシンであったが、「まとまった睡眠が取れない」と言う理由から引退。後進の育成に性を出すことにしたのだった。 ちなみに彼、“アービン・ファフニール”は、今年26歳の鉱石人である。 生体金属と呼ばれる生きる無機物を共生相手として体内に取り込み生きる鉱物人の平均寿命は普通の人間と同じくらい。 アービンと言う男のやる気の無さがお分かりいただけるだろうか。

 このアービンは、二年ほど前から“マービット・ケンブリッジ”の飼育を担当していた。 彼が今唸っている理由は、そのマービットにかんすることだった。

 二ヶ月ほど前。アービンの判断で、一人の少女をマービットに会わせることにした。“アリシア・ケンブリッジ”。マービットの姉と言うことにする少女である。

 生まれる前からアサシンとして育成されることが決まっていたマービットには、兄弟姉妹は居ない。しかし今だ農耕を営む民が多いこの星に置いて、一人っ子と言うのは実に稀である。 優秀なアサシンはどんな場所にでも溶け込み浸透できなくてはならない。 一人っ子と言う珍しい境遇のものは、すこぶるとまでは言わないまでも不自然。幼い頃の原体験とも言える兄弟との思い出と言うのは、作り上げたり嘘で通せるほど生易しいものではない。 ならば、アサシンとして育成している子供同士を兄弟として育てレば良い。 それはアービンやマービットが所属する組織では当たり前のようにとられているアサシン育成方法の一つであった。

 しかし。後付の兄弟姉妹を引き合わせるタイミングと言うのは、非常に難しいものであった。 幼い内で無ければならない。あまり年齢が上になってからでは、そもそも原体験をさせるためだと言うのに意味が無い。

 マービットとアリシアの場合は、異例も異例だった。 何せ普通兄弟として組み合わせられるのは、“アサシンとして生まれてきたもの”ならそれ同士。が、基本なのだから。 それもそうだ。 何せ普通の世界で暮らしてきた子供たちにとってマービットのような存在は、異質な“化け物”にしか写らないのだから。

 だが。マービットに限っては、アービンの判断は定石を覆すものだった。 当たり前の日常を知るアリシア。マービットと言う個体は、アリシアからその“普通の世界”を、恐らく押し知ることが出来る知能レベルを有しているのではないか。 また、アリシアという個体は、マービットと言う化け物を容認して受け入れることが出来るのではないか。 そう考えたのだ。

 実際。引き合わせてから一週間ほどで、アリシアはアービンの思惑通り、マービットを実の弟のように可愛がり始めた。マービットもそれに甘えるようにすらなっていた。

 子供と言うのは、大人が考える以上に他人の意識に敏感である。 大人のように経験則や余計な知識、保身のための思考がない分、寧ろ子供の方が人をみるめがあるといって良いだろう。 ましてマービットはアサシンになるために育てられている個体。人間の本性やそう言う類の物を見極めるすべには長けている。 アリシアも随分ひどい目に遭っている少女だ。人間不信の塊になっていると見て良いだろう。 そんな二人が、二人とも相手に懐いている。

 兄弟姉妹として、仲が良い。仲が良い兄弟姉妹が居て、よく遊んだ。 それは組織にとって良い原体験と言える。人間社会に溶け込み、違和感無く仕事をこなすための大切な要素の一つであるから。

 だが・・・アービン以外の育成者の一人が、こんなことを言い始めた。

「アレはまるで恋人同士のように仲睦まじい」

 確かに、二人はもう分別が付いている。変な言い方をすれば、“ませている”のだ。 恋人が出来てもおかしくは無い。恋をしてもなんら問題は無い。 組織としても、恋愛は別に構わないと判断をしていた。 どうせどちらもアサシンとして動くことに成るのだモチベーションを上げるにしても、いざとい時の人質としても、そう言う対象が居るのは悪くない。

 まるで恋人の様。が、本当の恋人に。 なんら問題は無い。 だが、“姉と弟が恋人同士”と言うのは問題があるわけだ。 まさか侵入した先でうっかり、「姉と結ばれたことがあります」などと口走った日には、目も当てられない。別の意味で任務に支障が出る訳だ。 うっかり口を付いて出るのが原体験である。それを調整すつた目の行為が意味が無い。

 そう。今アービンが悩んでいるのは簡単なこと。 「マービットとアリシアの関係をどうするか。」 このまま姉弟にするのか。それとも変えるのか・・・。

 

「ていうか上もこんな堅苦しい文章でそんな内容の伝令かかんでもよかろーによ。」

 ぼけーっとした、いかにも眠そうな顔でそう毒付くと、アービンはごろりとベットに転がった。

 実際、アービンにとってマービットがアリシアに懐くだろうと言うのは、予想の範疇だった。 マービットと言う個体は、現在の同時期に生まれた中でも、飛びぬけて優秀だった。ただどう言う訳か、そう言った個体特有の無関心さが微塵も感じられなかった。 優秀で秀でる個体というのは、押しなべて何か達観したような、諦めた様な。どこか世間ズレした所が出るものであった。

 無論マービットもずれていると言えばずれているのだが・・・何と言うのだろうか。 そのずれ方と言うのが、どうにも当たり前の子供。それも無邪気な子供のようなずれ方をしているのだ。

 所謂、天然系という奴だろうか。 物心が付いていないような何にも考えていないような・・・。 かと言って、訓練の成績を見る分には、確かにほかの個体よりも優れた結果を出しているのだ。

「・・・つかみ所の無い奴だよまったくよぉ。」

 誰に言うとも無くつぶやくと、アービンはごろりとベットの上で寝返りを打った。

 アービンの見立てでは、アリシアは純粋にマービットを弟として可愛がっていた。いつもどこかそわそわと落ち着きの無いマービットの言動や態度が、元々弟がいたと言うアリシアの姉としての心を刺激するからだろう。

 では、マービットはどうだろう。 アレが感じているのは、どこか兄弟と言うものとは少し違う。アービンは、そう思っていた。 マービットは、今まで一つも“自分の物”と言い切れる、個人で所有、独占できるものを持ったことが無かった。 訓練のときに使う道具も服も。食器もイスも机も、時には呼称さえ日替わりで変えさせられたこともあった。 それが最近になりようやく、名を“マービット・ケンブリッジ”とされ、“姉”と言う目に見えて、触れることの出来る、自分とだけ特別な繋がりがあるものを手に入れたのだ。

 マービット自身も、気が付いているかは分からない。だが、マービットにとってアリシアは、“姉”であって、“姉”では無い。初めて手に入れた、言わば“マービットだけのモノ”。 “宝物”なのだ。

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